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ストレスが溜まる無能夫婦 | 映画「胸騒ぎ」感想

 ⚠️ 注意 普通にネタバレしてます。

 北欧ホラー。去年も北欧ホラー「イノセンツ」が面白かったから、この映画の情報を見た時に絶対観に行こうと思った。イノセンツが本当の本当に嫌な映画だったし、この予告編もすでに嫌な感じだし、結構面白そうだったしね。

 北欧の映画って不穏な雰囲気を作るのがうまいのかな。ずうううっと不穏な音楽が流れるんだよね。なんか古いホラー映画の音楽みたいな感じだよね。そういうなんかジャンルの音楽があるんだろうか。

 イノセンツも本当に嫌な映画だったし、なんか北欧の人って人を嫌な気分にさせるのが好きなのかな。って疑いたくなるよね。まあ、ちょっと映画見ただけで知ったようなことを言うなって感じだけど。

あらすじ

イタリアでの休暇中、デンマーク人夫婦のビャアンとルイーセ、娘のアウネスは、オランダ人夫婦のパトリックとカリン、その息子のアーベルと出会い、同世代の子どもを持つ者同士で意気投合する。
“お元気ですか?少し間があいてしまいましたが、我が家に遊びにきませんか?”
後日、パトリック夫婦からの招待状を受け取ったビャアンは、家族を連れて人里離れた彼らの家を訪れる。
オランダの田舎町。豊かな自然に囲まれたパトリックの家に到着し、再会を喜んだのも束の間、会話のなかで些細な誤解や違和感が生まれていき、それは段々と広がっていく。パトリックとカリンからの”おもてなし”に居心地の悪さと恐怖を覚えながらも、その好意をむげにできないビャアンとルイーセ。
善良な一家は、週末が終わるまでの辛抱だと自分たちに言い聞かせるが ——。

公式より

 そんな凝ったストーリーではないよね。旅行先で出会った家族に招かれてノコノコと招待を受けたらら酷い目にあった。そんな感じの話。

感想

 うーん、正直期待していたラインよりも大幅に下回ったかな。なんだろうね。主人公一家が酷い目に遭うんだけど、あんまり同情できないんだよね。あまりに主人公パパが無能すぎて、生き残る努力を放棄しているんだよ。自分はおろか家族や子供の命さえ放棄している。冨岡さんが観てたら「生殺与奪の権を他人に握らせるな!!」ってブチ切れるところだよ。その結果、最悪のエンディングになったとしても、ボクとしては「あの無能ならそうなっても仕方ないよね」としか思えない。同情の余地がないんだな。ホント。

 せめて主人公パパが生き残るためにできること全部やって、必死で生存の可能性にしがみついていれば、感情移入して応援できたし、最悪の結末になったら悲しむこともできた。だけど、あの主人公パパが無能すぎて感情移入できない。なんでそこで逃げない、なんで反撃しない、今すぐ走れよ、情報共有しろ、みたいなツッコミをしてしまうため、ストレスが溜まって、やっと死んだかって逆にスッキリするまであるんだよね。悲しいね。

嫌な予感と不穏さだけが降り積もっていく

 映画を序盤から振り返っていくと、とにかくずっと不安を煽るような音楽がずっと鳴って、カメラも揺れ動いたり、なんか気持ち悪いんだよね。観客を不安にさせて嫌なことが起こるってことをずっと暗示している。

 いろいろな人のレビューや、事前に発信されてた記事なんかを見ると、序盤から中盤まで繰り返されるデンマーク人家族(主人公家族)とオランダ人家族(犯人家族)のコミュケーションエラーにおける違和感、気まずさ、居心地の悪さ、なんかの描写がよくでいていて褒める意見が多かった。

 ボクもまあ、そこはうまく行っていたと思う。ゴジラに壊される街を丁寧に作ってるみたいな感じでさ、この映画がやがて破滅へ向かうことはだいたい分かっているわけで、そこまでの道順は丁寧に作られていたんだよね。

 山奥に住むオランダ人家族への違和感。行動や思考が少し普通じゃない感じ。何かある感じ。胡散臭いベビーシッター。舌のない子供。明らかにやばい感じはするけど、決定的ではない。何かおかしい。そんな不信感が、不審ポイントがどんどんプラスされていく。その流れってのはよくできていて不気味だと思う。

何が問題か

 主人公家族つまりデンマーク人家族(子供は何も悪くない)、デンマーク人夫妻の危機感の無さがとにかく問題だった。ホラー映画に登場してはいけないレベルの善人ぶり。スプラッター映画だったらまず最初の方に殺されるだろうね。

 問題は善人であることではない。彼らはオランダ人夫妻との摩擦を避けるため、問題があっても口に出さない。楽観的に考えすぎる。曖昧な態度でお茶を濁す。笑って誤魔化そうとする。具体的な行動をとらない。対話からも逃げているし、対立することからも逃げている。

 その結果どうなったかはラストシーンに凝縮されている。夫妻は脅されているわけでもないのに、言われるまま裸になり、崖の下に自ら降りていき、犯人たちから岩を投げられて、逃げもせず致命傷を受けて死んだ。愚かなまでに主体性のない善人だったわけなんだよね。

 子供が拐われた時も最悪だった。夫は数発殴られただけで無抵抗になり、妻は子供に抱きついているだけで何もしなかった。夫妻はただ泣いているだけだった。ほぼ無抵抗で子供の舌が切られ、目の前で拐われた。敵は三人。夫妻は二人。どちらも大した武器はない。なぜ戦わない? 命をかけて子供を守るべきだ。抵抗すべきだ。子供の悲劇はすべて愚かな夫妻の責任だ。

 とにかくこの主人公夫妻の無能さに腹が立ったんだよね。本当に今思い出しても腹立たしい。

オランダ人夫婦の正体

 あと一つ、問題だと思ったのは、あのオランダ人夫妻の行動原理が全くわからなかったこと。結局、彼らはなんだったんだろう。何がしたかったのか。映画の中で明示されていなかったものの、可能性を考えてみたい。

 最後の方で見つけた大量の写真から、オランダ人夫妻は過去にも旅行先で子連れの夫婦に声をかけて仲良くなり、家に招待していたものと考えられる。つまり、この映画のようなことを何度も繰り返していたということだろう。

舌のない子供は?

 前の犠牲者の家族の子供と考えられる。なぜ舌を切るのか。先天性の病気で言葉を喋れないと言っていたので、舌を切ることで言葉を奪う意味があると思う。本当に喋れなくなるのかはわからないし、文字で助けを呼べるような気もするんだけど、小さい子供だから無理なのかもしれない。

 オランダ人夫妻はなぜ殺した夫婦の子供と一緒に暮らしているのか。子連れを装うため? 子育てがしたい? ちょっとよく分からない。あの子供も簡単に殺してしまっているあたり、全く子供には愛情がなさそうに思えるので、育てたいということはなさそうだ。やはり、子連れを偽装して次の獲物に近づくためだろうか。

犯罪組織説

 オランダ人夫妻はターゲット夫婦を殺し、子供を誘拐して、人身売買したり、買売春させたり、児童ポルノを製造なんかしてる犯罪組織なんじゃないかという説。

 初めこれを考えたんだけど、その割に一回目の逃亡を簡単に見逃しているし、全体的に犯罪組織として動いているにしては計画性が低すぎる。かなり気分で動いているように見える。完璧に夫妻を殺して子供を誘拐するなら、もっと人を使った方がいいだろうし、ベビーシッターに任せた時にやってしまえばよかった。だから、組織というのはなさそう。それに子供を商品にするのに舌を切るのは利に合わない。商品価値が下がる。最終的に子供を殺しているし、犯罪組織というのは違うのかもしれない。

シリアルキラー夫妻説

 犯罪に関与しているのがオランダ人夫妻と、安い金で雇われたベビーシッターだけだとすると、夫妻の目的は金ではなくても大丈夫そうだ。犯罪組織のように多数の人間が関わるのであれば、金が生みだせなければ話にならないが、主犯が夫妻のみであるのなら、夫妻の趣味だったとしても成立しそうだ。

 夫妻の目的は子供のいる夫婦を殺すことなのか、子供の舌を切ってしばらく飼育してから殺すことなのか。家族を全滅させるのが趣味なのか。何なのかはわからない。だけど何度も繰り返しているということは、少なくとも映画の中で起こっていることに楽しみがあるのだろう。ひょっとすると、殺すのがメインではなく、殺す予定の夫婦を家に招待して楽しませて、最後の最後で殺してしまうのが趣味なのかもしれない。似たようなものか。

 これが一番可能性が高いと思うのだけど、結局明示されていないのではっきりしたことはわからない。そして、仕事していないといったオランダ人夫婦はどのようにして生計を立てているのだろう。殺した夫婦から金を奪うとしても、口座から引き出せば足がつくだろうし、どうしているんだろうね。ちょっとわからないかな。

家に招待するのが趣味の人説

 オランダ人夫妻は旅行に行くのが好きで、旅行先で仲良くなった人達を自分の家に招待するのが趣味の人という説。

 オランダ人夫婦は旅行先の友達を招待するのが趣味だけど、夫がキレやすい。旅行先で知り合っただけの人だから、価値観の違いなんていくらでもある。だけど夫はキレやすいんだ。ちょっとすれ違ったり、ムカつくことがあると、許せなくなってしまうんだろうね。そのボーダーがやたらと低い。そして招待した夫婦を殺してしまうんだ。あっさりとね。癖になってるんだろうね。殺人が。

 で、夫婦を殺したのはいいんだけど、子供は殺すほどではない。まだ子供は殺すほどのことをしていないからなのかもしれない。だから、子供に喋られるのは困るので舌を切る。喋られなくても他にも意思の伝達手段はあるので、子供を監視下に置く意味で一緒に暮らしている。そして、そのうち子供も許されないことをして、最終的に殺されてしまう。

 凶悪サイコパス兼友人を家に招待するのが趣味の人。映画では黙って帰ろうとしたことが許せなかった。だから殺すことにした。ということだろうか。まあ、こっちもシリアルキラーではあるんだけど、殺人を目的にはしていないという点が違う。

 一度逃げられそうになっている点からして、そんなに計画性が高くないと思うんだよね。だから、こっちの可能性もあるような気がする。

おわりに

 結局、オランダ人夫妻の目的はよくわからない。ボクが見落としていただけなのかもしれないけれど、映画の中にそれをはっきりと示したシーンはなかったように思う。誰か分かる人がいるなら教えてほしい。

 まあ、とにかく主人公夫妻がムカつく映画だった。映画の出来は良かったとは思う。思うんだけど、ボクはどうしてもあの夫妻、夫のほうがメインだけど、あの無能っぷりが許せなかった。犯人がションベンしてる時も車のキーを見てるだけで何もしなかった無能。それ以前に夫婦で情報共有していればそんな事態には陥らなかったのに、何もしなかった無能。ああ無能が許しがたい。

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