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未来ある若者を潰したくない!

第6話 未来ある若者を潰したくない!

 マグナムくんの後くらいに、3歳年下の塾講師と知り合った。
 何故か私の写真に一目惚れしたと奇抜なメッセージを送ってきたので、年下は募集していませんと即返信した。
 それでもめげない年下くん。『一度でもいいからぜひお話ししたいんです』と。
 流石に何度もメッセージやりとりしていると、若い子からカツアゲしている気分になるし、気持ちは良くない。
 ※男性側は女性へメール一通送るにつき、50円課金を請求されているらしい。相手は『彼女募集中』の年下くん。絶対他を探した方がいいと思う。

 彼女のない男性に近づかれると正直困る。私はバツイチになった時点でもう2度と結婚はしないと決めている。それに、欲しいのはあくまでセフレ。連絡が止まらなかったので結局会う事になった。

 待ち合わせは浅草。大分早めに待っていたのだが、時間に彼からメールが。
『仕事が終わらなくて遅れます。ごめんなさい、必ず行きますので待っててください』と。
 若者の未来潰したく無いし、私なんぞと会った所で得るモノは残念な武勇伝くらいだ。
 帰ることもできたが、会っておかないとあの時待たせてごめんなさい、とか、次はいつ空いてますか?なんて言われても困る。何せ女とは違って男は50円課金させられるのだから!

 金持ちのオッサンからコピペのようなメールが来るのはどうでもいいが、若者への対応は違う。だって勿体無いじゃない、50円課金!
 15分後、待ち合わせのゲームコーナーに若い青年が入ってきた。

「あの、ちぃさんですよね?」

 恐る恐る声をかけてきた青年は兎さんだった。ビクビク可愛い瞳でこっちを見つめている。

「そうですけど、○○くんかな?」
「は、はい!○○です。今日は来てくださってありがとうございます!」

 照れながらそう話す可愛い顔の青年。益々申し訳ない気持ちになる。彼は塾の講師をバイトでやってるってんだ。学生さんに求愛されない?大丈夫?
 互いに仕事の話をしつつ、彼は夢の為にお金を貯めていると。ただ、両親に反対されてなかなかそこから進めないとか。
 夢を持つことはいい。私は夢を諦めた人間なので、若いうちにチャレンジできることはした方がいい。歳を取ってからだとやりたくてもできないことの方が多いと伝えた。

 今の仕事を切り捨ててまで夢に行くのを誰も応援してくれないとのこと。飯を食べつつ彼は兄弟についてや、私の仕事について尋ねてきた。
 ほらきたよ。年収いくらです?看護師だから稼いでますよね的な?残念でした、私はデイサービスの人間なので正直、きみよりも稼いでいない🤭

 パパ活ならぬ“ババ活“するんだったら、もっと金払いのいい女探せ!と言いたい。
 年収を暴露したところ、彼はぽかんとしていた。なんでそんな給料の少ないところで働いているのか?と。もちろん、医者にぺこぺこしたり、つまらない悪口の言い合いしかない女の醜い輪にいたくないからに決まっている。

 給料は150万以上値下がりしたが、別に最低限の生活水準さえ維持できれば困らない。
 金のことを聞いてきたからこれでもう会わないだろう。美味しいご飯とイケメン。大満足で帰宅して彼との出会いはこれで終わりと思い込んでいた。
 他愛のない挨拶をして、素敵な彼女を探すんだよと言って最後は笑顔で別れた。実に気持ちいい。フラれた訳でも振ったわけでもない。彼は若い。いい女を見つけてくれ。50円課金はその為に費やして欲しい。

ところが、3ヶ月もしないうちにまた連絡がきた。

内容は、

先日はありがとうございました。僕の中でちぃさんに色々相談した事でスッキリしました。夢は諦めずに追いかけつつ、仕事も続けます。それで、ちぃさんにどうしても会いたいんです。


なんでワンスモア?

 はて?と首を傾げるとはこういう場面で使うものか。私は結婚願望もないし、年下くんと付き合う気はない。だから私ではなく違う女を探せと言った。
 確かにあの時の反応は、

僕はちぃさんが好きなんです。どうしてもちぃさんと仲良くしたい。彼氏がダメなら弟でも友達としてでも……!と食いつかれた。

 弟は欲しいがもう時効。それに私が欲しいのはセフレだ。
 彼の顔はメチャクチャ格好いいが、体格がもやしだった。うちの兄貴や呼吸器内科時代を思い出すような筋肉もなくヒョロヒョロした体に魅力を感じない。
 何故か彼の連絡が止まらないので、50円課金は勿体ないだろう!と2度目会った。しかもまた浅草で。軽いトラウマになりそう。

 彼は今回、私と会う為にお店の予約までして、何とプレゼントまで持ってきた。一体どういうことだ。記念日でもないし、私はきみからここまで丁重に扱われる覚えもない。
 まさか、プレゼント渡したら3回目会ってくれますよね?とか。そうはいかない、きみと会うのはもうこれっきりだ。

 彼と会った時の私はメンタルが病んでいた。悲しいことに彼に対する塩対応っぷりはよほどのドMじゃないと絶対に食いつかない。
 何故対価(時間と金)を支払うべく女でもない奴にここまで執着するのか。もしかして、私に罵倒されたい?あんたバカなの?と言われたい?
 すまん、私は確かに脳内妄想が激しいし、脳内に常に罵倒スタンバイOKのSM女王様は君臨しているが、ああいう発言が似合うのはネットの世界だけだ。それに私はソフトMだから正直、M同士の馴れ合いは嫌。

 結局プレゼントは食べ物だから!という理由で強制的に渡された。ありがとう😊と言うと彼は真っ赤になって喜んだ。どんだけウブなんだ!?
 もしかして、私がセフレ募集しているから、まさかオネーサマから愛の手解きを期待されている?それも無理だ。残念だけどテクはない!付き合った男の武勇伝はまともな奴が一人も居ないぞ。

 よく考えろ私。今食べているものはスッポン鍋(実はこれが人生初だった……)

 色々深い所まで考えた挙句、私は最低のクズ女を演じて別れることにした。
 突然お腹が痛いだの、やれなんだの。自分が嫌いなクズ女のフリを精一杯演じた。ちょっと途中で気づかれていたけど、もうこういうのは勢いだ。
 最後は全く酔いの回らないアルコールで酔ったフリをして帰った。ああ、蒲田が遠い……浅草からだと電車一本で帰れないのだ。そしてこの時間。明日も仕事なんだよなあ〜
 さて、これで爽やか年下くんから連絡がなくなるだろうと期待した。が、彼はめげなかった。

もっとちぃさんのことを知りたくなりました。また都合の良い時に会ってくれませんか?よろしくお願いします!



わかった。彼はドMくんだ。



 彼の未来に不安しかなくなり、

年下は本当にダメなんです、お金勿体ないから他の女を探してください。ごめんなさい。もう連絡はしません、と送った。

 彼からその後も「どうしても会いたい」「なんで自分はちぃさんよりも年下なんだろう…」という悲しいメールが届いたが、心を鬼にして未読スルーを徹底したところ、ある日彼は退会していた。

 若者の未来は果たして守れたのだろうか。彼が変な女に捕まってないことを祈るのみ。

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