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オートマ車を2回エンストさせた話



 今の世の中、AT車が殆どになった。というか、マニュアル車は中のエンジンとギアチェンジの構造を作らないといけないので、これだけオートマが普及した今、マニュアルを欲しがる人は改造車や走り屋、スポーツ車が好きな人が主だろう。

 私が初めて車を買いに行った際、並ぶオートマ車を見てじじと二人で困惑。

「あの、マニュアル車って無いですか?」

「いやいや、今の時代、マニュアルなんて殆ど作ってませんよ。欲しい人はよっぽどの変わった人でしょうね。それに中をギアチェンジ出来るように作り直さないとダメなんで追加料金かかるんですよ〜」

 そうなのか、私が免許取り立ての頃はまだマニュアル車もごろごろしていた筈だが、時代の流れと共にオートマが当たり前になり、免許もオートマ専用の方が若干早く取れるしお金も少しだけ安く済むのでそういうタイパ重視で流れが変わってきたのだろう。
 ただ、私は年寄りこそマニュアル車を推奨したい。

 世の中の車事故ははっきり言って「オートマ車」のエンジンとアクセルの踏み間違えによるものだ。
 歳を取れば尚更判断力が落ちる。踏めば動くオートマ車ほど危険な乗り物は無い。
 オートマは体感的に全然スピード出てる感じがないのに、スピードメーターはヤバい。こんな危険な乗り物なのかと。

「私、マニュアル“しか“運転出来ないので、お金かかってもいいから組み立てお願いできますか?」

「オートマならあるよ、マニュアルだと今後需要なくなるし、オートマの方が安いよ?」

 頑なにオートマを勧めてくる店員さん。
 違うんだ、私はマニュアル「しか」乗れないのだ。



 話は戻り。

 免許が取れる適年になった私は、母のアッシーくんをしないといけないという事で、私はじじに無理矢理自動車教習所へ連れて行かれた。
 しかも事もあろうに、「こいつ、やる気ないからここで一番怖い先生つけてやってくれ」とか受付のねーちゃんに言ってる。

「男性の方がいいですか?」
「女の人だと甘えるから、一番怖い先生で頼むわ」
「分かりました」

 おおん、私のイケメン教官とドキドキワクワク教習所生活♡が一瞬で幕を閉じた。

 私の担当は大型特殊車両がメインの殆ど会話のない先生。
 運動音痴の私でもミッションは半クラッチが出来ないと必然的に車が動かないので、暴走する事もなくスルスルと路上運転までデビューした。

 カリキュラムの中に当時は「オートマ」の教習が2、3日だけ組み込まれており、これが何故か必須となっていた。
 別にマニュアル免許を取ってしまえば勝手にオトモのようにオートマもできる扱いだ。

 私は半クラッチもないし、オートマなんて余裕のよっちゃんだろう、とタカをくくっていたが、とんでもない。

 初日、エンジンをかけていざ出発!という時に壮大なエンスト。
 車体が漫画のように前後に大きく揺れて、ジェットコースターのように『がっこん』と言った。助手席の鬼教官が吠える。
 ごめんなさい、鞭打ちになるよな、私も痛かったもん。


「おい!なんでエンストしたんだ?」

「わかりません!」

 本当にわからないんだよ。2回目恐る恐るスタート。

 15分程路上に出て、とりあえず問題なくクリア。
 翌日、また路上に出て15分くらいすすみ、赤信号で左側に寄って、いざ信号が代わり進むぞ!という時に再び漫画のようにエンストした。



 重ねて言うが、この車はオートマだ。



「お前は……なんでエンストしたんだ!!!」

「わかりません!!!」

 全力でわかりません!と言う私の気分はエレン・イェーガー。

 その後、車の異常かと思い、教官とチェンジ。特に車体の異常はなく、私が使った2台の車はメンテナンスへイキマシタ。

 それから教官よりある提案が。

「お前、どうせマニュアルしか乗らないんだから、一生オートマは乗るな。2日のオートマ研修無しにするから、マニュアル追加してやる」

 え、いいんですか? 地味にクランクで円石擦るんで、マニュアル実地追加ありがたい。

 そんなわけで、私はオートマ卒業研修をスルー。
 あ、仮免許試験はオートマ必須なのでちゃんと取りました。別のイケメン教官と同年代くらいの3人の仲間がいて、ウハウハしてたらエンストしなかったし。


 でも、

 オートマでエンストした、しかも2回も。


 伝説になりました。教習所でも一時期先生たちの中で、『あの、オートマ車をエンストさせたコね』と言われた。どうせなら、もっとカッコいい伝説になりたかったな。


 鬼教官とのエピソードを振り返ると本当に進撃の巨人で命懸けの訓練をしていたような気分しかない。

 そろそろ教習所生活も終わりか〜と言う時に高校で一緒に遊んだりしていたグループとたまに免許の話をしていると、やっぱり各々の教官の話になる。
 私の行っている教習所の名前と、大型特殊というワードから友達の顔が曇る。

「お嬢(仮名)、どうした?」

「それさ、ごめん。うちのお父さんだわ……」

 



 時を戻してくれ。





 私は彼女の衝撃の告白を聞く前に、散々「うちの教官めっちゃ怖い!」のエピソードを散々暴露した後だったよ。結構濃厚なやつ。





 翌日から、教官は人が変わったように優しくなった。なんか変な薬でも打ったのかと不安になるくらい!こんな笑顔、みた事ないよ!

 こんな事ならば、もっと早くお嬢に相談すべきだった。怒られるのが怖くて、胃が痛くて3回仮病使って休んだ日々もあった。
 でも、怖い先生だったからこそ、私の運転は安全で今もゴールド。

 オートマは踏めば速度が出るので歳を重ねる度に怖いな、という気持ちが増えてきた。実際、うちのデイサービスでも車両事故増えている。

 面倒くさくても、ミッションは偉大だと思う今日この頃。
 あとは近い未来で自動運転してくれる自動車がもっと普及して、住みやすい未来になればいいなあ、と期待を込めて。
 
 真面目な話、田舎では車が無いと生活できない。うちのじじもついに免許返納したので、毎日の買い物がタクシーになった。

 じゃあ宅配システムにすりゃいいじゃん?と外野は簡単に言うけど、そういうのを簡単に解約したり契約したり出来ない両親は大変なんだよ……。

 もう少し田舎でも買い物が楽になる方法があればいいんだけどな。
 今は週のどこかで買ったものを即日で配達してくれるスーパーの配送を利用しているらしいけど、それでも認知症のじじを家に一人で置いておけない母の心労は続く。

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