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6. silkworm

黄昏時の広い荒野にぽつんと一軒の家が建っていて、
私は小さな箱を両手に持ち、気が付いたらその家の中に立っていた。

小さな箱には何か色々なものが入っている。
生命の息吹を感じる。
何か動いている。
蚕だった。

え、え、、、、
虫は決して嫌いではないのだけど、苦手・・
どうしよう、どうしよう、外に放り投げるわけにもいかないし。
だってこれから大きくなるし繭になって羽化したら、蛾になってしまう!
このまま持ってられない・・・これ、どうすればいいの?
夢の中の私は、何故か箱をずっと持っていなきゃいけないと思い込んでいた。

すると、
天空から、声なき声が問う。


ーそれが蚕だと知らなかったら?何も知らなかったら?蛾になると知らなかったら?ー


いや、でも、
無理無理無理むり・・!
申し訳ないけど幼虫の姿をしてる時点でもうダメ。何も知らなかったとしてもこの目の前にいるものを直視できない。動いてるのを感じるだけでもう駄目。

そうだ・・
隣の小屋に置いて、窓の外から眺めれば、平気かも・・
見ていられるかも。

蚕の事をなーんにも知らなかったら・・

葉を食べて大きくなり、
やがて糸を吐いて繭をつくり・・
動かなくなり・・
そして中から真っ白な羽を持ったものが出てきたら。

何も知らない状態で、初めてその様を見たら神秘的で、不思議で、美しいだろうか。
次々と違う姿に変容していく様を見たら、驚き、感動するだろうか。
恐ろしいと感じるだろうか。

何も知らなかったら、きっと見たことのない大変容に衝撃が走り、色々な事を感じるのかな、と思う。


今はどんな情報でも瞬時に手に入ってしまう。
もし今頭にある知識がすべて無かったら。
何の情報も先入観も概念もない状態で、生まれたばかりの子供の様にすべてを見る事ができたら。

つけられた名前や言葉の向こう側にあるものを、ただあるがままの姿を、直にこの目で見る事ができたら。

この世は今感じてる以上に、とても刺激に満ち溢れ、面白く、楽しく、美しい世界なのかもしれない。
本質を見つめる事ができるのかもしれない。








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