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Ep6. 双子を出産した日


今から、10年以上前の話です。

妊娠高血圧症候群のため、出産の日を決めて分娩誘発を行う計画分娩、

双子は帝王切開で出産する場合が多いけれど、
大学病院の方針で、二人とも頭位で他の条件も揃っていたため、経腟分娩を行う事となりました。予定された出産日は37週ちょうどの日。


出産日当日。

朝の5時からお産の準備が始まりました。
当日は絶食、絶飲。
まず、下剤を投与。強烈に効きました・・

そして陣痛を誘発する内服薬を飲みましたが、これといって変化はなく、痛みもなく、意外と余裕だと思ってました。この時は。

病室から分娩待機室へ。お産が進む気配はなく、
am7時半に陣痛促進剤の点滴を打ち始め、人口破膜を行いました。

(この人口破膜したときの事を、第1子のトメちゃん(仮名)は3歳頃覚えてました。詳しくは胎内記憶の記事で後日書きます)

この人口破膜が、とても痛かった。

(調べてみたら、破膜する時は痛い人もいるけど、痛みはないケースが多そうだった)

打ちどころ?が悪かったのかな・・膜じゃない箇所も傷ついたのか?
・・わからない。

痛みでううぅ・・となって、歩くのもやっと。
今のうちにトイレに・・と思って痛みに震えながら行って。

ベッドに戻って、
そこから更に、かなりの痛みが襲ってくるのでした。

担当のF医師が「痛かったら我慢しないで声出してね・・」と言ってくれた。

痛いけど、まだ声出すまでじゃないかな…と思ってると、

すごく、すごく強い痛み・・

陣痛って波があると思ってたけど、波が無くて、常にピークみたいな痛み・・
うう・・と次第に声を出さずにはいられなくなり、

気が付くと、痛みのあまり絶えることなく絶叫していた。かなり、うるさかったと思う。

おかしいな・・何かの間違いじゃないかな、こんな痛み。

今まで出産したことないからわからない。
でもTV等で見る陣痛をまつお母さん達ってこんなに叫んでるっけ・・?

10tトラックで骨盤を何度も引かれてるような・・
骨盤が砕け散るみたいな・・でも実際引かれてもいないし砕けてないから、砕けたらもっと痛いんだろうけど・・

絶対おかしい。何かの間違い・・波が無い。ずっとピークの痛みが続く。

一言もしゃべれなくなり、ずっと絶え間なく叫んで、私はパニック状態だった。

訳も分からず、喋れず、いつまで続くか分からない痛みに耐えるしかない状況。麻酔を打って欲しかったけど、痛みで話す事ができない。

・・赤ちゃんの頭が斜めになっていて骨盤に引っ掛かり、なかなか出てこれないと分かったのは、痛みが始まって数時間後の事だった。


―胎児の回旋異常について―


出産時、赤ちゃんは骨盤の形に合わせて回旋しながら、お母さんの背中を向いて出てきますが、この時の回旋の向きは決まっているそうです。

どうやら私が双子を出産した時の赤ちゃんは、通常の反対回りで出てきてた様です。

産んだ後にその説明を聞きました。

「赤ちゃん、回り方間違えちゃったみたいで・・」

と説明を受けた時は、何そのカワイイ間違い・・可愛い・・かわいい・・(萌)
なんて思ってたけど。

痛みはそんな可愛いものではなかった・・

当時は痛みについて考える暇もなく育児が始まったのでそこまで気にしてなかった。頭が引っ掛かってたのも一因かもしれないけど、陣痛促進剤が効きすぎたのか、私の痛みの耐性がなかったのかな?くらいに思ってました。

「回旋異常」という言葉を知ったのもわりと最近です。

病院では反対回りという事は教えられたけど、そこまで詳しい説明は聞かなかったので、ふと、あの尋常じゃない痛みはなんだったんだろうって、色々調べてみたら分かりました。

反対向きで、しかも斜めだったから骨盤に凄く負荷がかかって痛かったのだと。

回旋異常の原因は色々考えられるけれど、多胎児の経腟分娩もそのひとつに挙げられるようです。


ギリギリ正期産で二人ともそれなりに体重があり、スペースも狭く、
私の体に対して斜めになって胎内にいたので、まっすぐ出てくるのは難しかったのかな。
・・なんて、今では産んだ当事者としては思うのだけど、その推測で合っているのかは専門家ではないのでわかりません。

(人口破膜や促進剤で、赤ちゃんがびっくりして慌てて方向間違えたのかな?とも思いました)

「条件が揃えば経腟分娩」という大学病院の方針は、ざっくり言うと帝王切開による母体へのリスクを軽減するためだったけど、

確かにすんなり産まれれば、帝王切開でのリスクは避けられ、産後の肥立ちも良かったのかもしれない。

色々な出産を経験できるなら、この方法がベスト!って言えるのかもしれないけど、

一生で経験する出産の回数は限られていて、きっとその時々によってそれは全然違ったものになる。

帝王切開も、経腟分娩もどちらが良いかはその時、その子を産んでみるまでわからないのではないかと思いました。

どちらにしろ出産するのは命懸けなのだと思います。

どんな出産方法だったとしても、痛みの種類が違うだけで母体に負担がかかるという事は変わらない。無痛分娩だったとしても術後の痛みがあります。大変じゃない出産なんてないと思います。

また、産婦人科医も、帝王切開に切り替えるか、このまま経腟分娩を継続するか等、他にも色々、母子の生死にかかわる判断を要所でしなくてはならないと思うので、プレッシャーや葛藤を抱えて仕事をしてらっしゃるのだと思います。頭が下がります。

私の場合は、病院の方針に納得して経膣分娩に同意し、出産に臨みましたが、
回旋異常だったので結果的には身体にかなりの負担でした。尋常じゃない痛みに何時間も耐えて、産後半年以上骨盤がおかしかった。
でもそうなるなんて、産む前は誰にも分からなかったのです。

多胎児の経腟分娩件数も少ないけど、更に回旋異常だったのはかなりレアケースじゃないかなと思ってこの記事を書いています。

経験したことは当事者じゃないと分からない事だから、伝える事で何かが良くなればいいなという思いがあります。
何かを選択するときの参考になればと。

これから双子を帝王切開で産むか、経腟分娩で産むか選択できる状況で悩んでいる方がいたら、赤ちゃんの向きとか、母子のコンディションとか個人差があると思うので、医師と良く相談して納得して決めるのが良いのだと思います。

それと・・最近は聞かないけど「お腹を痛めて産んだ子」っていう言葉が昔からありましたが、

お腹を痛めて産むのが美徳、みたいな価値観、今でもうっすら、そこはかとなくあるのかな・・って思います。

歯科治療でさえ麻酔するのに、出産の時、麻酔なしで産むのってそういう価値観がちょっと邪魔している気がして・・

無痛分娩もリスクはあるのかもしれないけど、そもそもリスクのない出産って無いのではと思うし。
とはいえ無痛分娩をするには費用がかかる。

どの道を辿ってもリスクがあって、何が正解とかはないのかもしれないけど、お母さん達が少しでも楽になればいい。

今後、妊娠、出産、育児にまつわる色々が改善されればいいなぁ。
少子化はなるべくしてなってる。”少子化”対策をするのではなくて、
子供を産んだり育てたりする人が楽になる対策がなされて欲しいな・・と思います。

・・脱線しましたが、本編に戻ります。

無痛分娩

医師から、どうやら赤ちゃんの頭が斜めになって骨盤に引っ掛かっているから、なかなか降りてこられないということを告げられた。
かといって今の時点でどうすることもできない。

私は経験したことのない痛みで叫び続けながら、ひたすら赤ちゃんが出てくるのを待つしかなかった。

pm2時頃。血圧が上がってきた。
このままだと母子共に命危なくないかな・・産後お世話できる体力残るだろうか・・
なんて朦朧としながら思ってた。でも痛すぎて一言も発することができなかった。

そしたら、副担当の医師が「(無痛の)麻酔打ちますか?」と聞いてくれて、

その言葉をずっと、ずーっと待ってました!と思いながら必死に頷きました。6時間待ったよ・・!

麻酔科医が来て、医師や看護師、助産師さんたち数名に身体を抑えられながら(神経が近いので少しでもずれるとヤバイ)硬膜外麻酔をしました。

硬膜外麻酔、痛いって聞いてたけど回旋異常の痛みと比べたら、感覚的に、つまようじで少し刺すような感じで全然平気だった。

そして麻酔が効き始め・・かなり楽になって、今までが嘘みたいに看護師さんとも笑顔で話せるようになりました。


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