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成人先天性心疾患ってなに?

実はこちらを専門で臨床と研究と頑張っています。

ということで、成人先天性心疾患について今後少しずつお話していきます。

基本的には、医療関係者、医療系学生向けの内容ですが、興味がある方向けに、可能な範囲でわかりやすくまとめていけたらと思っています。

成人先天性心疾患って

成人先天性心疾患というのはその名の通り、先天性心疾患(心臓のさまざまな構造異常)をもった患者さんで成人(必ずしも20歳ではなく小児科を卒業し、成人の科へ移行した年齢のことを指すことが一般的です)を迎えた方のことを表します。

なんでわざわざ「成人」ってつけるの?というと、医療技術が発達する前は、残念ながらほとんどの方が生まれてすぐ、あるいは子供のころに亡くなっていました。

これはほんの50年以内の話で、1970年代は成人を迎えた先天性心疾患患者が日本ではおよそ5万人だったのが、現在はすでに50万人を超え、いまでは95%以上の患者さんが成人を迎えると言われています。

そして今も昔もだいたい100人に1人が先天性心疾患を患って生まれてくるといわれており、さらに10年後、20年後には相当な数の患者さんが病院を受診することになると予想されています。

いままでは小児期だけの問題だったのが、大人になり、他の方と同様に生活習慣病や癌などいろんな病気になるリスクも抱えながら、心臓の治療をする必要があるという包括的な内科治療が必要になったこともあり、小児期と区別して「成人」先天性心疾患という言い方がいまでは当たり前になってきました。

もちろん、大人になっても小児科を通い続けるわけにもいかず、循環器内科への移行という意味でも「成人」がきいてきます。

じゃあ、そもそも先天性心疾患ってどんな病気?という話に移りますが、先天性心疾患を知るためには、そもそも正常の心臓の構造を知る必要があります。

正常な心臓の構造


正常の心臓は下記イラストの通りです。

・心臓の部屋の数が4つある(右心房・左心房・右心室・左心室)

・4つの弁が正常である(三尖弁、肺動脈弁、僧帽弁、大動脈弁)

・部屋や血管の間に交通がない(心房中隔欠損・心室中隔欠損・房室中隔欠損・動脈管がない)

・血管・心室が正しく走行している(上大静脈・下大静脈 ⇒ 右心房 ⇒ 右心室 ⇒ 肺動脈 ⇒ 肺静脈 ⇒ 左心房 ⇒ 左心室 ⇒ 大動脈 ⇒ 静脈)

・心臓・血管の前後・左右が正常 (肺動脈が前、大動脈が後ろ、左心室が左、右心室が右)

などが正常心臓であり、逆に1つでも異常があると、定義として先天性心疾患に該当します。各論については少しずつ今度まとめていけたらと思っています。

先天性心疾患の病名一覧

このほかにもいろいろありますが、おおむね下記のようなものが挙げられます。個別記事を書いた際に下記にリンクを追加します。

  • 心房中隔欠損症(Atrial Septal Defect, ASD)

  • 心室中隔欠損症(Ventricular Septal Defect, VSD)

  • 動脈管開存症(Patent Ductus Arteriosus, PDA)

  • ファロー四徴症(Tetralogy of Fallot, TOF)

  • 総肺静脈還流異常(Total Anomalous Pulmonary Venous Connection, TAPVC)

  • 房室中隔欠損症(Atrioventricular Septal Defect, AVSD)

  • 大動脈縮窄症(Coarctation of the Aorta, CoA)

  • 完全大血管転位(Transposition of the Great Arteries, TGA)

  • 修正大血管転位  (Congenitally corrected TGA, CCTGA)

  • エブスタイン奇形(Ebstein's Anomaly)

  • 左心低形成症候群(Hypoplastic Left Heart Syndrome, HLHS)

  • 単心室(Single Ventricle)

  • 両大血管右室起始症(Double Outlet Right Ventricle, DORV)

  • 左室性単心室(Double Inlet Left Ventricle, DILV)

  • 大動脈二尖弁  (Bicuspid Aortic Valve, BAV)

  • 三心房心(Cor Triatriatum)

  • 左冠動脈肺動脈起始(Anomalous Left Coronary Artery from the Pulmonary Artery, ALCAPA)

  • 総動脈幹症(Truncus Arteriosus)

成人先天性心疾患にどう対応するか

もちろん異常があるからといって、必ずしも薬による治療、手術が必要というわけではありません。病気の種類によっては、今後手術が必要となる可能性のものもあれば、ほとんどが薬も必要なく様子をみるだけでよいものもあります。

数十年前までは手術を受けて正常の心臓と同じ構造に治してあげればもう問題がない、なんて考え方もあり、「根治術」と言われていた時代がありますが、いまでは長期的なフォローアップが必要と言うことがわかっており、「修復術」と言われるようになっています。

いずれにせよ、先天性心疾患が成人期を迎えるようになってから歴史が浅く、今度どういう病歴をたどっていくのか、まだまだわかっていないことも多いことから、慎重に病院でフォローしていく必要があります。

そんななかでも、だんだんと明らかとなってきた先天性心疾患患者さんの気を付けるポイントは心臓が正常な方と同様ということです。

健康的な食事をとり、適度な運動を行う、ストレスをためない、
定期的に医療受診をして変化を見逃さない。
自分の病気を適切に理解する

ただし、これではあまりに抽象的すぎるので、今後こちらでは医療関係者が先天性心疾患患者を診療する上で気をつけた方がいいこと、診療する上で役立つと思われる知識・情報などを共有していければと思っています。

しかしながら、先天性心疾患は他の病気以上に個人差が大きく、必ずしも教科書に載っている通りだとうまくいかないこともしばしばあります。基本的には1人の意見に左右されず、医療チームで相談しながら診療をすすめていくことをおすすめします。


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