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ファロー四徴症を理解するための発生知識

先天性心疾患を学ぶ上で避けては通れないのがファロー四徴症です。

そして医療関係者にとって永遠につきまとうのが何が四徴なのかということ。必ず試験に出ます。

もちろん丸暗記でも良いのですがこの機会にきちんと理解するための発生学的なまとめをしておきます。

結論から言うと四徴というのは正確ではなく、この名前を初めにつけた人がすべての医療関係者を惑わせている戦犯です。

円錐動脈の発生異常に伴う解剖学的異常3つ(心室中隔欠損、大動脈騎乗、肺動脈狭窄)および病態異常1つ(右室肥大)というのが正式な考え方になります。

順を追って説明していきます。


実はファロー四徴症の本質は根本的には一つです。

それは大動脈と肺動脈を隔てる壁 (=漏斗中隔)が前方(右室側)に偏移すること


心臓の発生において、大動脈と肺動脈はもともと円錐動脈幹という一つの管が(尾側からみて)反時計回りにねじれ、そして、その過程で二つをわける壁 (=漏斗中隔)ができることで分離します。

正確には中にある円錐動脈幹隆起というのが移動することでこの回転がおこるわけですが、どんどん複雑になるので一旦は上記の説明で理解するのがわかりやすいです。

この漏斗中隔は下へ伸びていき、これが下から上がってくる心室中隔と合流することで心室中隔が完成し、右室・左室がきちんとわかれる仕組みです。


ファロー四徴症ではこの肺動脈と大動脈を分ける漏斗中隔が正常よりも前方(右室側)へ偏移するという発生異常が原因で起こる症候群です。

下の図は尾側から見た血管の走行なのでイメージとしては少しわかりにくいかもしれませんが、いずれにしても大動脈と肺動脈をわける壁が肺動脈側にずれるのがファロー四徴症というわけです。

上図はマニアックなのでここではスルーしても結構です。円錐動脈幹における回転異常でさまざまな疾患が起きます。この程度により右室・左室・肺動脈・大動脈の位置関係が変化し、また名称も様々変わっていきます。

例をあげると、完全大血管転位、両大血管右室起始症(Taussig–Bing, false Taussig–Bingなど)、ファロー四徴症などです。

修正大血管転位は円錐動脈幹ではなく、心臓ループの段階での異常により右室と左室の位置関係が逆になる病態で、完全大血管転位と名前が似ているだけで発生の原因は大きく異なります。

そしてどの病態においても心室中隔と漏斗部中隔にズレが生じると心室中隔欠損が認められるという考え方がわかりやすいかと思います。


ファロー四徴症に戻ります。
そうなると何が起こるのか

1 漏斗中隔は下へ伸びていくが当初の予定より位置がずれているため、下から上がってくる心室中隔ときちんと合流できない
⇒ 心室中隔欠損
が生じる

2 漏斗中隔が肺動脈側へ偏移する
⇒ 肺動脈狭窄が生じる

3 漏斗中隔が肺動脈側へ偏移する
⇒ 大動脈の拡大
⇒ 大動脈騎乗が生じる
(心室中隔の延長に大動脈があり、右室・左室からの血液が大動脈へ通じる)

ここまでが心臓の解剖学的異常です。
そして心臓に血液がまわりはじめると、

4 肺動脈狭窄のため右心系の血液が肺動脈へ流れにくい
⇒ 右室に負荷がかかる
⇒ 右室肥大

結果的に上記4つが特徴的な所見として見られる、という具合です。


ややマニアックな内容となりましたが、単純暗記する代わりに、

ファロー四徴症ではこの肺動脈と大動脈を分ける漏斗中隔が正常よりも前方(右室側)へ偏移するという発生異常が原因で起こる

ということを頭にいれ、ストーリーをつないであげると楽に病態を把握できるかと思いますのでぜひ参考にしてみてください。

この偏移の度合いにより肺動脈が閉鎖したり、心室中隔欠損のサイズや、チアノーゼが起きるか起きないか、などさまざま変わってきます。

次回以降で(成人における)治療や管理の仕方についても触れていけたらと。

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