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【成人式】初恋のあの子は、やはり綺麗で残酷だった

 成人式があった。久しぶりのみんなとの再会に心躍った。式終了後、写真撮影会が行われた。華美な装いの女の子にソワソワしている男の子たち。話に花を咲かせている女の子たち。会場が浮つき熱気にあふれている。

慣れない手つきで、僕も、男友達や部活のみんなとの写真を撮り済んだ。疲れたし、クラス会もこの後あるので早めに帰宅しようとした時、後ろから「撮ろうよ!」と声がした。

あの子だった。初恋だったあの子。僕が3年間片想いしたあの子。僕が人生で初めて告白したあの子、振られたあの子。

あの子との出会いは中学校の入学式の日。名前順になっている席で僕の前だった。黒髪ボブに華奢な肩、長いまつ毛と奥二重の目。笑うとちらつく真っ白い歯。たまに見せるいたずらな表情。その全てが、一目見た刹那、僕の体に溶け込んだ。

その日からというもの、あの子のことを想い続けた。あの子は可愛かったし達者だったから、いわゆる一軍ってやつになって、たぶん僕が知らなかっただけで彼氏もいただろう。一方、僕はなんとも言えないポジションになったけど、それでも僕が話しかけると天真爛漫に笑ってくれた。

卒業間近、ダメ元で告白した。ていうか、告白しないと一生引きずりそうな気がしてヤケクソでいった。当然振られた、あっけなく振られた。「今はごめんね」って意味ありげに言ってくれたけど、当然、今も後もなかった。高校は別だし、インスタとかも持ってなかったから、僕はあの子のことを忘れかけていた、今の今まで。

「撮ろうよ!」の声で全てがフラッシュバックした。

そこには、藤色の振り袖に身を包む、少し大人になったあの子が立っていた。残酷なほど美しかった。眩し過ぎて目を覆いたくなるほどに輝いていた。忘れかけていた、体に溶け込んでいたあの子への想いが、体の内側から僕の体を突き刺し出て行った。

覚えていてくれたんだ。僕なんか忘れていると思っていたけど。あの子の記憶の中に僕がいるだけで、それだけで嬉しかった。

5年前、振られた頃の僕へ。僕も、あの子に「すごく綺麗だね」って言えるぐらい、少しは達者になりました。

2022年 1月11日 サブカルクソ童貞大学生。



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