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クラフトコーラで憧れが発動する

先日、友人が「作ったみた」とクラフトコーラを届けてくれた。
うちと同じく犬を飼っている友人が、朝の散歩ついでにわざわざ家まできて玄関前に置いてくれたのだった。

器用な彼女には本当に感心するばかりだ。
彼女とは同じ保育園に子供を通わせたママ友同志。今はコロナ過で在宅勤務となり、仕事をこなしながらスキマ時間で手作りジャムやミシンで子供のパジャマまで仕立ててしまう。
手先の器用さもさることながら、時間をやりくりして素敵なものを作り出す自在なセンスにも頭がさがる。きっとタイムマネジメントも上手なんだと思う。彼女の凛々しい仕事ぶりさえ透けて見える。

私は彼女の「作ってみた!」に甘えてばかりで専ら頂く専門。幸せのおすそ分けに恐縮しながらも、毎度歓喜の声をあげてしっぽをふって喜んでいる。

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大好きな番組がある。
イタリアのノンニ達(イタリア語でおばあちゃんの複数形)が中庭の蔦がからまったテラスの下のでっかいテーブルに集っている。太い腕をぶるんと揺らしながらパンの生地を練ったり、トマトソース作ったり、編み物をしては、ぺちゃくちゃと夫や家族の愚痴を言い合い聞きあいしている。

地図で見つけるのも苦労するような小さな小さな村をピックアップし、2、3人の村人とその周りの人たちを取り上げる。歩んできた人生や、歩まなかった人生をとても丁寧に。
BS日テレでやっている「小さな村の物語」という番組。
ご存知の方も、そしてファンの方も多いのではないでしょうか。

小さな村の物語 イタリア
BS日テレ
毎週土曜 18:00~18:54
アンコール放送 毎週日曜 10:00~10:54放送
ナビゲーター:三上博史

なぜ、急にこの話が?となるけれど、私は彼女から幸せのおすそ分けを頂くたびに、この番組が脳裏に浮かぶのだ。
三上博史のナレーションが、ちょうどよい距離で彼らや彼女らの物語を語ってくれる。Ornella Vanoni が歌う 「L'appuntamento / 逢いびき」というテーマ曲が流れてくるだけで心のある部分が疼いてくる感覚を覚える。

年を重ねても、病気になっても、家族や気の合う数人の仲間たちが居る事がどれほど豊かさをもたらすだろうか、とこの番組を見るたびに思う。
庭の大きなテーブルはなくても、ラテンの陽気なノリはなくても、季節になったら梅をつけたり、田舎から送ってきたミカンを分け合ったり、お茶菓子と編み棒もって集まったり、をやってみたいのだ。

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今住む街は私の故郷ではない。
学生の頃からの友達もここにはいない。(誰とも連絡もとっていないので音信不通…)。
ここで暮らして、職場で知り合ってきた知人が友人になっていったけれど、仕事のかかわりが無くなって来ると、自然と疎遠になって来る。
寂しさから、この人とは繋がっていよう!と思っても、関係に無理がかかってくるとその縁もだんだん薄くなる。根本的に不器用な私の不徳の致すところではあるけれど、都会の稀有な人間関係の中では仕方のない事なんだと半ばあきらめながら、羨望の思いで番組を見ていたのだ。

彼女とはコロナ過もあって近くに住んでいながらあんまり会えていない。子供同士も校区の問題で別々の小学校に通うことになり、殊更会う機会も減っている。そんな中でも、時々こうして連絡をくれ、手作りのものを届けてくれる彼女の人間性に本当に感謝している。

頂いた手作りクラフトコーラ。
最近、話題(よね?)のクラフトコーラ。
実は、はじめて手にしたクラフトコーラ。

可愛い空き瓶に入ったその茶色い液体を手にして、私は彼女にお礼のLINEを送る。

ー早速頂きます!
 ちなみに…。これ、そのまま飲むの?割るの?

ー割って~!!笑 原液だから 3,4倍で薄めて、レモンとか入れると良いよ~!

ーだ、だよね~!汗 実は初めていただきます!


お洒落なカフェもすっかりご無沙汰で、世間の流行にも全くついていってません。私のすっとんきょうな質問にも優しく答えてくれる彼女に感謝です。

意気地なしの私だけれど、限られた社交性しか持たない私だけれど、恥ずかしいついでに伝えてみようか。
憧れの集いについて。
いつかコロナが落ち着いたら、こんな風に集まりたいねって。
ミシンでもやりながら。

L'appuntamentoがひとりでに頭の中で鳴りはじめる。

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