ネオン色の糸

息子の得意技「ズサー」のおかげで頻繁に洋服に穴があく。
「ズサー」とは、床の上などで勢いよくスリップして楽しむ遊びの事である。新調したばかりの靴下にその日のうちに穴をあけてきた時はさすがに勘弁してよぅと嘆いた。

加えて最近サッカーに夢中の息子は、夫が録画していた過去のワールドカップや、ゲーム(ウィニングイレブン)でスター達のゴールパフォーマンスを見てカッコいいと思ったらしく、やたらとマネをするようになった。
私にはそれが誰のポーズなのか分からないけれど、膝からスライディングするポーズがお気に入りの様子で、校庭の人工芝の上に勢いよく滑り込んで両膝に穴を開けて帰って来る。

ズボン・靴下・パンツに靴に、穴・あな・ANAのオンパレード。

ほいほいと服を買える訳もないので、私にはあいた穴達をせっせとふさいでいくしか方法がない。

裁縫箱はいつでもスタンバイの所に置いてあるのだけれど、私は毎夜ちくちくやれるほどマメな性格ではない。今度やろうと思って積まれた衣類がいつしか山のようになって、部屋のすみっこで存在感を増していく。

先週、買い物ついでに裁縫道具を売っている売り場をのぞいてみたら、かわいい糸をみつけた。ダーニングにちょうど使えそうな毛糸のような太めの糸である。色がまたポップで可愛い。NEONと書かれている通り、ネオン色で目を引く鮮やかな発色。これなら穴を縫う日々もいくらか明るくなりそうである。

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ダーニングは以前暮らしの手帖で紹介されていた衣類の修繕方法で、主にヨーロッパで伝統的に行われていたらしい。雑誌にあったダーニング後の仕上がりが、まるでこの為にデザインしたかのようにとても可愛らしく、これなら夜なべも楽しかろうと思ったのだった。

ダーニングマッシュルームというキノコ型の木型は通販ですぐ買ったのだけれど、家にある糸でやってみたらどうも細すぎて思った仕上がりにならない。糸を交互に編むように組んでいく一番シンプルなやり方でも、”面”ができあがるまでに細い糸がからまったり、交互にならなかったりで思ったような仕上がりにならない。そうだ、私は編み物が苦手なのだった。
手先も不器用なのである。

その日の夜中、早速NEONを使ってやってみる。
最初は毛先が割れて針穴に通すのに苦労したけれど、糸通しを使って解決し、あとは順調に縫い進めていく。色がはっきりとしていとも太いので、針を交互に運ぶのも間違える事がない。買ってきた色をどう組み合わせるかもわくわくと楽しいので、思ったより作業に集中しあっという間に2足の靴下の穴がふさがった。
型から外して取り出し、仕上がりにうっとりとする。
これです、これです。やりたかったのは。

さぁ、これで思う存分穴あけてらっしゃい!
とまでは思えないけれど、しばらくは寛大な気持ちでズサーを見守れそうである。

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