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一人で来れるようになった海


 海へ行ってきた。

 なんの前触れもなく、唐突に海へ行きたいと思い立ったらそのまま、流れるように準備をして、車を走らせ50分ほど。

 学生時代は家族でよく来ていた海水浴場で、立派に育った松林の中に公園があり、そこを抜けると穏やかな海が広がっている。波は低く、砂浜は少し荒めの砂で厚みがあって歩くたびに自重で沈み足取りが重くなるが、とても綺麗な場所である。

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 透明度が高くて、適当に荷物を下ろしたらサンダルを履いたままずんずんと歩いて行き、被さる波の柔らかさを肌で感じた。泡がしゅわしゅわと鳴り、触れるとスフレのようだった。撫でるように私の足を濡らしては引き下がり、またやってくる。着替えはないけれどズボンの裾が濡れるくらいはどうってことはなくて、迷いなく飛び込むなら今日の気温も水温も最適だなあなんて思いながら、ずっと波を眺め、気が済んだらそこら辺に流れ着いていた流木を並べて椅子がわりにし、さしてひどくもない太陽の光を浴びながらぼうっとしていた。そのうちにことばが思い浮かび、スマホですかさずメモを取った。私の住む場所には川はあっても海はなく、こうしてわざわざ遠出しなければこの景色は拝めない。でも、一人という気楽さもあり、誰のことも、時間のことも特に気遣わずに存分に楽しめるので、海に付随するあらゆることに想いを馳せることができる。一人で勝手にびしょ濡れになったっていいのだ。笑う人も、叱る人もいない。ここで本を読んだっていい。(でも今日は、あえて本を持ってこなかった。)

 ああ、レジャーシートでも持ってくればよかった、このまま寝そべってやるのに、と思った。

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 この後思いきりの良い波がやってきて、パンツの裾まで濡れた。しゅわしゅわ、綺麗でしょう、ほんとうに波が柔らかかった。秋だからなのか。一番好きな水の柔らかさだった。


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 水滴のようなシーグラスを見つけてはポッケに突っ込んだ。可愛い。



 存分に海を楽しんだ後、なんだか吹っ切れたのでブックオフへ行った。

 フラフラのCDが欲しかったので、CDを買うつもりで行った。目当てのものは見つかった。510円均一。アルバムがこんな破格でいいのか…と思いつつも、こちらからしたらラッキーだった。

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 実はわたしは、CDで音楽を聴くことが好きだ。パカっと開けて、ディスクを取り出して、CDデッキへ入れる。1番が流れてくるまで待つ時間のドキドキ。流れてきた時の嬉しさ。その儀式めいた流れが好きだ。今は祖母へデッキをあげたので今私の元には聴くためのものがないから、車の中で聴くことにした。

 YUIが好きで、フラフラになってからのyuiをいまいちちゃんと受け止めきれていなくって、というかなんだかもの寂しくて、どことなくYUIの面影が残る楽曲をかじり聞きするしかできていなかったのだけど、帰り道、まるで初めましての気持ちで聞いていると、やっぱり最高だ、と思った。この声、このリズム、このギター、全部がYUIでありyuiで、変わっていったけど変わっていなくて、嬉しい気持ちでいっぱいになった。フラフラとして活動再開した時、『月』という楽曲でCMに出て再出発をこの目で認識したとき、yui はショートヘアーで金髪で、激しい衝撃を受けたことを思い出した。わたしも一回はやってみたい。あの金髪。月のようだったなあ。これからはちゃんとずっと応援しようと思う。ファンだった、から、また改めてファンになった、っていうことで。しばらくわたしの車には爆音でフラフラの曲が流れるだろう。


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 そして、CDを買うだけのつもりだったのだけど、読書界隈でプルーストとドストの波がこれもまたザッパーンと来ていて、わたしもちょっとだけ乗っかろうと思った。買ってしまった……今月は買わないって自分に誓っていたのにな…。少しでも罪悪感を減らすためにポイントを全部使った。そこまで大きく得した気分にはならなかったけど。わたしは、柿内さんの『プルーストを読む生活』を読むことなく『プルーストを読む生活』が始まりそうです。純粋にその生活を生きることになりそうです。果たしてどんな感想を抱くのか、わたし。たまたまブックオフにはちくま文庫だと10巻全部あったので、それを大人買い…することはなく、読んだら次を買うつもりでいる。だから今日は1だけ。たぶん2は来月。(ほんと、多分)後は『カラマーゾフの兄弟』も1だけ。折れてしまうことがないことを祈る。どちらも少しずつ読む予定だ。ドストの面白さもプルーストの面白さも、歳をとりながら実感していきたい。



 やはり今海外文学熱が高くて、来月買う本どうしようかと真剣に悩んでいるし、なんなら英語の勉強もやり直そうかなと思っている。


 そして短歌を作りたいが今日はたくさんエネルギーを得たり放出したりしたので、眠たくなるまで言葉をとにかくメモしておこう。

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