見出し画像

7月の読書記録


 気がつけば8月を3日も過ぎていた。今日は2日だと思っていた。携帯の日付を何度も見ていたのにちゃんと自覚したのは午後3時を回ってからだった。どっちにしろ7月中に投稿できていなかったのだが、ここ数週間日付の感覚が曖昧で、7月の中旬なんだか下旬なんだか、8月にいつ入るのか入ったのかわからなくなっていた。一瞬、7月が終わるんだって自覚した瞬間があったのだけど、すぐに忘れた。多分、日付を気にしなくてはならない予定がなかったからだろう。今日でやっと、いや、ついさっき、8月を生きているという実感を得た人間になった。8月を生きているというか、夏を生きている。それはとっくの前からなのだけど、ここのところ暑さが尋常じゃない。つい先日は友人を自車に乗せて外出していたが、突然車のタイヤがバーストしてタイヤの上っ面がベロンと剥がれ落ちて、一枚のゴム、というか象の鼻のようになった。こんなことあるのかと思った。なんとかスペアタイヤを自力で付け替えたけれど、思いも寄らないハプニングで、びっくり通り越して終始笑ってしまっていた。友人からしたらちょっと焦っていたかもしれないが、もはや今後ずっと忘れられない思い出になる気がするのでどうか笑い話で残ってくれますようにと願う。

 そんな暑い8月の前、すでに暑かった7月に読了した本を記録しておく。7月は財布の紐が緩みっぱなしで、買った本は合計29冊。別の紙に毎月買った本と読了した本をメモしているのだけど、正直引いた。何やってんだ私。とはいえほとんどがブックオフ様さまのものである。少しだけ罪悪感が減る。今月はできるだけ買うのを我慢したい。なにせ積んであるものは全て魅力的な作品ばかりなので、夏中に読めればと思う。いや、とか言いながらブックオフに吸い寄せられてしまうのだろうけれど。


 そんな7月の読了記録

==============================


・スタッキング可能     松田青子

・いつも彼らはどこかに   小川洋子

・妊娠カレンダー      小川洋子

・幽霊たち         P・オースター

・シンジケート       穂村弘

・夜にあやまってくれ    鈴木晴香

・氷柱の声         くどうれいん

・青卵           東直子

・春原さんのリコーダー   東直子

・トーマの心臓       萩尾望都

・まばたきで消えていく   藤宮若菜

・ソーネチカ        リュドミラ・ウリツカヤ

・愛についてのデッサン   野呂邦暢

・蕎麦湯がこない      せきしろ・又吉直樹

・魔法飛行         川上未映子


        計15冊でした。

===========================



 7月は短歌も小説もいい塩梅で読んでいたように思う、後から後からいい本や読みたい本が見つかって、買っては読んでいた。後3、4冊、7月中に読みたかった本があったのだけど、少々(いや、かなり)時間が足りなくて断念。今月に持ち越した。


 私は何者でもなくて、誰でもよく、何にでもなれるけど、なんでもなく、何者にも変え難いものでもあり、代替の利くものでもある、そんな私たちを描く松田青子さんの『スタッキング可能』、スカッとしました。同調圧力に埋もれる日々。みんな何かしらの『武器』を装備して戦っている。戦いたくなくても戦っている人もいる。性別の違いで立たされる場所が違う、時代が違うだけでもとやかく言われる、みんなそんな『めんどくせ〜』中で頑張って生きている。社会人になって一人で苦しかったり、悲しかったりしている人、読んでみてほしい。松田青子さんの書くものってとっても心強い。慰めとかじゃなくて、私たちの前に立ちはだかって、ほんと、戦ってくれていると思う。現代を生きてゆくための『武器』になってくれている。


 くどうれいんさんの『氷柱の声』とてもよかった。静かに衝撃を喰らって、静かに胸が痛んだ。と同時に、謝りたくもなった。氷柱の冷たくて水っぽい表面を撫でるような、研ぎ澄まされた感覚。感動っていうか、なんだろうな、『覚えておかなくちゃいけない出来事』を知ったような。『震災もの』の小説という括りをつくっちゃうのではなくて、あくまで震災後を生きている人々の人生をただ淡々と描いてくれている。劇的な感動を描いているんじゃない。だけど、ちゃんと心に残るものがある。堅苦しいものではない。だけど、センシティブなことではある。私は震災の影響を全く受けていない第三者としてこれを読んだことを理解していたい。忘れたくないなと思う。そして、どんな立場の人でも、多くの人に読んでもらいたい。(こちらの作品の感想文的なものを記事にあげていますので、読んでない方は是非)


 7月初旬、小川洋子さん週間があった。もともと図書館で何冊か読んだことがあったのだけど、やっぱり手元に置いておきたくなってブックオフでお迎え。そして再読。個人的に1990年代の作品がとても好きだ。ほの暗い怖さ、静かに生きる人たちの声、人間のややおぞましい部分、陰湿さ、不安、生身の人間の存在感、とにかく生々しい質感がぺっとりと私の肌を、脳を犯す。読了した後に顔をあげると部屋の空気がなんとなく清らかに感じて深呼吸する。そうすれば現実に帰ってきたと脳が認識する。そしてほんの少し安心する、この感覚がすきだ。小説であること、物語であること、そこにとっぷり浸かること。それらを理解する瞬間がすきだ。山尾悠子さんの作品を読んでいても似たような感覚になる。独特な雰囲気。じわじわとブームは続くだろう。


 『トーマの心臓』は漫画だけど、これもまた素晴らしかった。個人的な意見をまず言うと、「オスカー、とてもとても素敵。」まずこれ。

 内容ちゃうんかい、あんなにストーリー深いのにそこかいな、と自分でも思うけど、読んだ人ならわかってくれる人もい(てくれ)ると信じる。透明な季節を過ごすギムナジウム少年たちに投げかけられた愛と試練と恩寵。時々開いては、私の心の中の『愛とは何か』に問いかける。愛とはなんだろう。愛していますとはなんだろう。死と愛、孤独と愛。友情と愛。盲目的な愛。神への信仰。うまくまとめられない感情にぐるぐる巻かれるのだけど、美しく儚いこの世界観に、何度だって煌めいたため息がもれる。


 短歌の世界は奥深い、もう、無限だ。素敵なんて言うもんで片付けられない。31字でどこまでも行ける。本当に果てしない。小説もそう。だから楽しいのだろう。今月読んだどの歌集も素晴らしいものでした。幸せな気持ちになる。それと同時に不安にもなる。だけど、もっといろんな作品を鑑賞していきたいし、歌いたいものを歌えるようになりたい。まだまだ先は長い。短歌を鑑賞した記事も、そのうち書きたい。短歌、確かに誰でも詠むことはできる。だけど、誰でもできるからこそ誰でもないものを歌わなくては埋もれる。そう心に刻む。私の色を、今はつくっている最中だ。楽しみたい。


 

 猛暑が続く今月、何を読もう。何を詠もう。なんとなくイメージしている、そのイメージ通りに生きられればいい。詩の美しさにも興味が出ている。表現の幅を広げていきたい。今月の目標。少しでも私の血肉になればいい。心に残ればいい。



 また月末。   



青野




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?