【短編小説】AM8:00の日曜日

AM7:00

窓から差し込むまぶしい朝日で目が覚めた。

今日は由香と葉山にドライブの約束をしている。

「迎えに行くのは9時だったっけ。もう少し寝れたな。」

けど二度寝して遅刻でもしようもんなら、このまえみたいに機嫌を損ねて…。

少しばかり早く準備をして、朝食をとるために近所のドトールまで出た。

初秋の晴れた朝は日差しが少しばかり暑くて、でもカラッとした空気が涼しくとても気持ちがいい。


ドトールに向かう途中、風上からとてもいい香りが漂ってきた。

そう、キンモクセイである。

「もうこんな季節か。」

私はさわやかなその香りを楽しみ、キンモクセイがなっている神社までみちくさした。

賽銭箱まで行き、特段意味もないのだが深々とお辞儀をし、休日の朝を少しばかりすがすがしい気分に変えた。

木々が生い茂る神社の日陰はなんとも涼しい。

日向に出ると日差しが刺さり少々の暑さを感じる。私は極力日陰を通るようにジグザグと道を歩いていった。

商店街の通りに入ると、あたりはまだシャッターが閉まっていて、八百屋の開店準備で果物や野菜を陳列するおじさんや、早くから出社して不動産屋の店舗を解錠しているお姉さんが目に留まった。

「おはようございます!」

そんな挨拶がどことなく交わされ、私もそれとなく小さな会釈を繰り返し商店街を抜けていった。

AM8:00

ドトールに着いてクロワッサンとアイスカフェラテを注文した。

会計を済ませて、ソファー席に腰かけ由香との時間を待った。

店内ではテンポのいい、心地よい曲が流れていて、調べてみるとxiangyuの『ミラノサンドA』だった。

ミルクとコーヒーがまだ分離していて、ストローでかき混ぜると、カランカランと氷がぶつかり合う甲高い音が音楽のリズムと調和し一層の涼しさを演出する。

そのとき「チーズトーストのCセットのお客様!」と店員の声が響き渡った。

ーーあ、ミラノサンドだったら面白かったのに。

しょうもないことを思いながら、クロワッサンを頬張りインスタで葉山のリサーチを続けた。

その時由香からLINEがきた。

「ごめん、寝坊した...!」

ーーおまえが寝坊してるんかい。

二度寝できたやんという心の声をのど元でグッとおさえつつ「気を付けてゆっくりおいで~」と返信する。

さて、待ち合わせまでもう少しばかり時間ができた。

もう少しこの心地よい朝を楽しもうか。

おわり。

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