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映画紹介vol.6「ショコラ」黒人初の道化師
今回ご紹介する映画は、
「ショコラ -君がいて、僕がいる-」
2016年 フランス
ロシュディ・ゼム監督
出演:オマール・シー、ジェームズ・ティエレ
映画で「ショコラ」と聞くと、ジュリエット・ビノシュ&ジョニー・デップの方を思い浮かべる方も多いと思いますが、この「ショコラ」はフランスで黒人初の芸人と言われているショコラとその相方の白人芸人フティットとの実話をもとにした作品です。
私は劇場に見に行ったのですが、当時「最強のふたり」で有名だったオマール・シーの主演作というイメージでした。鑑賞後は、フティット役のジェームズ・ティエレのパフォーマンスに魅了されて、気づけば彼についてネットで調べまくっていました笑。
ジェームズ・ティエレ(1974年スイス・ローザンヌ生まれ)は、あのチャップリンの実孫で、俳優というより芸術的パフォーマーという方がしっくりくる活動をされている方です。実際4歳からサーカスに出演しており、素人が見ても彼の動きがプロフェッショナルということがわかります。
フティット役を彼が演じていなかったら、私はここまでこの映画に魅力を感じていなかったと思います。(褒め過ぎ)
<あらすじ>
20世紀が目前に迫ったころのフランス(ベルエポック時代)、実力はあるが全盛期を過ぎた道化師のフティットは、職を求め、貧乏サーカス団「デルヴォー一座」でオーディションを受けていた。
だが団長に「君の芸は陰気で新しさがない」と言われ、その日の公演には出させてもらえず、客席で見学することに。
すると「人喰い人種カナンガ」として客を驚かす一人の黒人が出てきた。当時のフランスでは、肌が黒く筋肉隆々な人種が珍しかったのか、客は驚き怖がっていた。
フティットはこのカナンガを演じる男に興味を持ち、相棒にならないかと誘う。
フティットからの誘いを受け、コンビを組み「デルヴォー一座」の演目に出ることになった二人。すると黒と白の異色のコンビとして、たちまち人気となった。
道化師にカナンガという名前は似合わないということで「ショコラ(19世紀当時、黒人を示す言葉で差別的な響きが含まれていた)」という芸名に変更し、フティット&ショコラとしての名はどんどん広まっていった。
そして、その噂を聞きつけてパリの名門サーカス「NOUVEAU CIRQUE(ヌーボーシルク)」の座長オレールが二人をスカウトしにくる。
高額のギャラと名声を約束され、二人は意気揚々とパリへ向かう。
座長オレールからプレッシャーをかけられるも、2人の初演は大成功を収め、「フティット&ショコラ」は一気に有名になる。
※ちなみに二人の芸は、ショコラの黒い肌をとことんいじったり、ショコラがお尻を蹴られたりという差別的な笑いがほとんど+コミカルな動き。
有名になり、ギャラもうなぎ上りに上がり、ショコラは高級なスーツ・靴、車を買い、キャバレー、賭博通いと散財していく。
それとは逆に、フティットは身なりは小ぎれいになったものの、まだまだ上に行けると芸を磨くことに精を出している。
とある日、街中でファンからのサインに答えていると、ショコラが不法移民で身分証を持っていないことがバレて警察に連行されてしまう。二人に嫉妬したデルヴォー一座の夫人がこっそり警察に密告していたのだった。
人気・名声・今となってはフランス人よりも財を持つショコラ。それらを妬んだ白人警察から露骨な虐待・拷問を受け、心身共に弱っていく。
そんな時同じ房には、黒人のジャーナリストのヴィクトールが収監されていた。
ショコラだと気づいたヴィクトールは、「毎晩、白人にケツを蹴られている道化師はおまえか。」と白人のご機嫌をとって笑いをとっているショコラを蔑む。
ヴィ「真の芸術とは、、風穴をあけることだ。人々の範となる。」
その後、フティットと座長の計らいで釈放されたショコラだったが、ヴィクトールに啓発されて、今の自分の芸に疑問を抱き始める。
またショコラとしてフティットからお尻を蹴られ、客を笑わせる日々に戻ったが、ある日ショコラの演目を見に来たヴィクトールと食事に行った際、演劇をやれと助言される。
ヴィ「フランスでは、オセロ(シェイクスピア著)の主人公を黒人の俳優が演じたことは未だかつてない。それをやるんだ。それでこそ芸術家だ。」
そんな折、恋人のマリーの紹介で劇団のオーナーと知り合いになり、ショコラは念願だった「オセロ」の主役を演じる事となる。
ショコラとしての出演ではなく、本名の「ラファエル・パディーヤ」として出たいとオーナーを説得し、練習を重ね、初演の日を迎える。
だが舞台は惨憺たる結果に終わる。客からは酷評の嵐。
※演技未経験でフランス語も堪能ではなかったショコラは、長台詞を流暢に言えなかったとのこと。
ショコラは絶望に追い込まれ、ヌーボーシルク一座でもトップの座を奪われ、麻薬や酒、ギャンブルにどんどんおぼれていく。
<ショコラ 予告編>
<ネタバレ&結末&感想>
最後、ショコラは麻薬や酒の影響で身体を壊し、田舎のサーカスの掃除婦として働きながら、妻であるマリーとかつての相棒フティットに看取られこの世を去る。
映画の最後にフティット&ショコラの芸がおさめられた実際のフィルム映像が流れるのだが、今みても滑稽でちょっと面白かった。
私はベルエポック時代がとても好きでなので、サーカスの衣装や円形歌劇場、当時を再現したパリの街並みを見ているだけでも満足だったが、もちろん綺麗な部分もあれば黒い部分もあるのが現実。この時代の黒人の話となると人種差別なしでは語れないのも事実。
映画の中でも出てくる「植民地博覧会」という催しの中で、アフリカの原住民達が動物園の動物のような扱いで展示されているシーンがある。(現代では考えられないがほんの120年前のこと。)
それを見て、同じ年代の話の映画「ディリリとパリの時間旅行(2018)」を思いだした。「植民地博覧会」でアフリカエリアで現地人を演じる黒人少女ディリリが主人公のお話。ベルエポック時代の著名人がたくさん出てくるのだが、ショコラもちょこっと出てきます。
当時のショコラの人気はすごかったらしく、あのロートレックもバーで踊るショコラを描いている。
ちなみに監督が映画の元にしたという
「ショコラ~歴史から消し去られた黒人芸人の数奇な生涯」(ジェラール・ノワリエル著)
にはもっと厳しい差別や、映画とは違うフティットとの関係も描かれているらしい。
気になる方は是非読んでみてはいかがでしょうか。(すごい分厚い本なので私は読むか悩んでいます、、)
人種差別という重いテーマがベースにありますが、フランスのサーカスや芸術の文化はやはり魅力的です。
それに加え、陽気な反面、人種差別に苦悩するショコラを見事に演じたオマール・シー、圧倒的なパフォーマンスと悲しげな演技で始終魅了してくれるジェームズ・ティエレが本当に素晴らしい作品です。
まだ見てない方は是非!
おまけ↓↓
<フティットのパフォーマンスシーン>
<ショコラ メイキングシーン>
最後まで読んで頂きありがとうございます。
ではでは。
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