大好きな絵本とホットケーキの話
子どものころ、エプロンを付けると「すてきなおとな」になれた気がした。
母と一緒にキッチンに立つと、決まってコンロの前には小さな椅子が準備されている。この椅子に乗ると、背伸びをしなくても、とろとろと燃えるガスの青い火を飛び越えて、フライパンの中までちゃあんとみることができた。
当時の私は、「しろくまちゃんのホットケーキ」という絵本が大好きだった。
ぱっと明るい橙色の表紙のその絵本は、しろくまちゃんが、おかあさんといっしょにホットケーキを作る物語。母と一緒に、あるいはひとりで、