エドガー・ホール『かくれた次元』
専門とする欧州文化とデザインの12冊、最後の本。
言葉の違いをあまり煩く言うのは好みではないけれど、あまりに寛容すぎるのもどうかな?というのがぼくのポジションだ。
エドガー・ホール『かくれた次元』(みすず書房 1976年)
「異なる文化に属する人々は、違う言語をしゃべるだけでなく、おそらくもっと重要なことには、違う感覚世界に住んでいる」という部分が、ぼくにとってのホールのポイントだと思う。そして、ユーザーの感覚や知覚とダイレクトにつながっている製品がどんどん増えていっているにも関わらず、この「眼に見えない文化の次元」にあまりに鈍感であることが、生活から経済までの大状況までの広い範囲に悪影響を与えている実態を、日本のメーカーは認識すべきだ。
ホールの指摘したハイコンテクストとローコンテクストはよく知られている。ぼくも、「ハイコンテクスト文化圏ではローコンテクスト寄り(例えばロジカル思考)に移り、ローコンテクスト文化圏ではハイコンテクスト寄り(例えば感情表現の重視)に意義を見出そうというトレンドがある。しかし、二つの文化圏のはっきりとした違いの傾向がなくなったわけではない」との点はよく強調する。
ぼくが気になるのは、ホールの語っている内容が技術的なレベルで捉えられていることが多い、ということだ。
言葉の違いを感覚差のレベルで捉えるべきというのは正解だと思うし、文法が違えば認知のプロセスが異なるというのは実感している。この点を外しての文化差異の議論は空虚な感じがする。
文化の構造的な把握と感覚は教養の第一歩だろう。
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