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朝と海、旅の萌芽

午前5時。愛媛の空はまだ白みだしてもいない。晩秋らしく冷え込んだ街を歩き、松山駅へと向かう。鉄道の朝は相変わらず早く、煌々と光る蛍光灯のおかげで遠くからでも駅舎は認識できた。

往年の雰囲気を残す有人改札を通る。印の押された切符を見ながら跨線橋を渡って、2番線に停まる宇和島行きに乗った。

列車に揺られること1時間、僕は瀬戸内海を眺む下灘駅で降りた。小さな無人駅には僕以外誰もいない。


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僕は一人で広がる海を眺めた。簡素な屋根の下にあるベンチに腰掛け、ただ眺めた。


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しばらくの時間が経ったあと「おはようございます!」という小学生の声で意識をこちらに戻した。驚いて、反射で「おはようございます」と返す。駅前の道は通学路のようで、彼は道行く人に挨拶をしているようだった。



気づけば羊雲が日に焼けて赤く染まっている。こんなに清々しい朝を迎えたのはいつぶりのことだろう。僕の視界には、良い旅の始まりを予感させる朝があった。

noteを書くときにいつも飲んでいる紅茶を購入させていただきます。