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月刊読んだ本【2023.07】


英文法の楽園

 里中哲彦 (中公新書)

 先月、先々月と読んだシリーズの第3弾。
 例によって付箋をいっぱい貼っているけれど、それが頭に入っているわけではない。定期的に読み返して知識にしたいものである。なぜ動名詞のみを目的語にするかとかそういうのは学校じゃ教えてくれなかった(enjoyのあとは~ingと形式的に教えられた記憶がある)ので、疑問が解決してよかった。

カラー版 ビールの科学

 渡淳二・編著 (ブルーバックス)

 ビールが好きなのに、ビールのことそんなに何も知らないから戒めとして読んだ。よりビールを知ることができたし、よりビールを好きになった。これからももっと真摯にビールと向き合っていきたい。
 ビールの泡や香りの正体を科学的に説明してくれて、知らない世界だった。あと、のど越しセンセーとかいうのすごい。

十二月の十日

  G・ソーンダーズ/岸本佐知子 訳 (河出文庫)

 最近岸本さん本出し過ぎじゃない? ナイス。岸本さんの翻訳小説を毎月読んでいる。ジョージ・ソーンダーズの短編集。独創的な作風過ぎてよい。『スパイダーヘッドからの逃走』と『センプリカ・ガール日記』が特に好き。
 夢の一場面のような話、SF、会社の上司の部下に対する業務連絡、倫理観の壊れた話等々、次にどんな物語が出てくるのか楽しみな短編集。テーマパークで中世の騎士を演じている主人公が、やがて自分を騎士だと思い込んで語り口調まで変わってしまう話は滑稽でありながら、スタンフォード監獄実験を想起させる。薬物に感情を操作されることの是非や囚人にも人権はあるだろうと考えさせる話もよい。
 ソーンダーズの他の作品ももっと読みたいと思った。
 ていうか文庫で1320円は高くない? べつにいいけど。

ひとすじの光を辿れ

 白河三兎 (新潮文庫nex)

 こんな高校生活、あるわけない。でもフィクションだからそれでいいんだ。主人公の名前をなぜ伏せていたのかがよくわからない。ゲートボールを題材にしようというセンスのひねくれ方がすごい。別にこの人の文章好きじゃないしそんなセリフ人間発しなくない? とか思っちゃう(フィクションだからそれでいいけど)けど読んでしまう。もっと青春小説書いていっぱい頼む。
 高校生活ってそんなに輝かしいものだったかな。そんなのはみんなの幻影なのかな。僕が知らないだけかな。別に思い出したくもないな。来世ではかわいい女の子と仲良くなる高校生活を送りたいな。
 あと、高校にもなってスクールカーストみたいなのなくない? といつも思うのは僕が他人に興味がなさすぎるだけでしょうか。そこが一番リアリティを感じなかった。

鋼鉄都市

 アイザック・アシモフ/福島正実 訳 (ハヤカワ文庫)

 めちゃくちゃおもしろい。SFとしてもミステリとしても楽しめる。ミステリとして上等かというとそれは違う気もするけれど、ミステリの要素を取り入れて物語を展開していて、この未来世界にのめり込んでしまう。主人公の刑事と相棒のロボットの関係性の行方が気になって読み進めてしまう。そして機械と人類、人口増加と植民惑星への移民という未来を見据えたテーマに鋭く切り込む。シティの外に行くなんて恐ろしいというのは、そのまま地球から外へ他の惑星へ行くのが恐ろしいという感情を示唆しているように見えた。
 地球人口が80億に達した世界の話だけれど、それはもはや未来ではない。でも現実の技術がこのSF小説の世界に追いついているわけではないのは、アシモフにも予見できなかった。というか人口の増え方が予見できなかったのか。
 まだまだ、C/Fe(人間とロボットが平等で対等な価値観である文化)の世界は遠いと感じる一方、それに反発する懐古主義者たちの気持ちもわかる。機械文明(あるいはそれに類する新しい技術等)に反発するのはよく描かれるテーマな気もするが、それは誰しもが未知への恐怖や不安があって現状維持を望む心理を持ち合わせているからなのか。
 人間の人間的な側面と対比してロボットのロボットたる側面を描いていて、互いに人間/ロボットであることが強調されると同時に、人間らしく振る舞うロボットをロボットと認識できなかったりすることでロボットがいかに人間に近いか(近づいたか)を描いている。ターミネーターのように機械が人間を殺し始めることはなく、ロボット工学の三大原則が徹底されている世界だが、それが人間とロボットの最大の違いなのだろう。もっとロボットが人間に近づいたら、人を殺せるか否かでしか両者を区別できなくなって、日常的に殺人が横行している世界でなければ、人間とロボットに違いなどなくなるのだろうと思った。
 正直、未来の世界とか専門用語とか出てくるとSFは読みにくい。世界観を理解するのに時間を要する。そう思っていたのに、本作はどんどんのめり込んで読めてしまった。それはミステリの体裁を採っているからだろうか。舞台設定はSFだけれど、フーダニットやワイダニットの構成にするのに読者に丁寧に説明してくれるからか。作中では、語り部である主人公が自分が納得できるように説明しているから、読者もそれについていくことになる。読みやすく楽しかった。続編の『はだかの太陽』の楽しみである。

ひとこと

 暑くて全然読めなかった。いや、暑いことは関係ないな。旅の計画を立てたり冷蔵庫を買ったりして、本を読む気力があまりなかった。言い訳でしょうか。今月は西澤保彦を読めなかったので、来月は二冊読むこと。いいですね。

 また来月。

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