あぬまり

わたあめ

あぬまり

わたあめ

最近の記事

とてもあらわせられやしないのだけど

奇跡は道端に咲く花のように それらしい素振りもせず そよ風のようにわたしのまわりを舞い抜けていく もっともらしい厚さも重量もなく ただのびやかに顕れる 引力だけを惹きつけて わたしたちは それがそうと気付かぬ間に 手のひらにのせられたまま うやうやしく頭を垂れる そうすることでしか そう腰を折ることでしか その言葉にし難い奇跡を受け取る奇跡を表現できないので だからあらわれるすべてに頭を垂れる 今日も 在ることへの敬意を 今日も 顕れることへの畏愛を 今日も ただ 捧ぐ

    • 甘酒

      そうだ、甘酒を飲もう。 冷蔵庫からパックを出して注ぐ。残りわずかになったパックからは、上澄み液みたいな薄さの液体が注がれた。グラスに透き通る薄黄色。あれ。こんな味だっけ。 家族が言った。 「それ、振らないとだめだよ。」 言われた通りちゃぷちゃぷと揺する。 そうしてグラスに注いだそれは、粘度を伴い、見るからに、はるかに濃い。 「そっか。振らなきゃだめなんだねえ」 わたしは言った。 「溜まってるからね。」 家族は言った。 わたしは、 ちょっぴり切なくなっちゃった

      • “イエ”

        『“イエ”に縛られないで。』 その声は、悲痛な響きを伴いながら、その空間に伝わった。 イエ。 “イエ”という、“カゾク”という区分け。 任意によって、故意に設定されたその囲い、扉によって、区分けされ、限定される。 ゆえに、意識の幅はそこに区切られる。 そこか基点。そこが重要。 (貴方の呪力が、そこに縛られている) 高さはそのままに もっと広範囲に、本来は広げられる。流れていく。 ひろく、ひろく、どこまでも。 カゾク の枠を解き 高さはそのままに 今一度、確か

        • 振り返り

          友達の宇宙が大きく動いていたので わたしも振り返ろうかと 2019年からずっと、世界はがらりと色を変え続けてきた 2019年以前の「わたし」の常識を揺るがし、破壊し、新たな種を運んできた 「わたしがここにいる由縁など知る由もない。ただ、与えられたこの時が、この言葉が、音が、人が、どれほど稀少でどれほど尊いものなのか、それだけは理解しているし、理解しきれなくとも重んじようと思う」 ほんとに。ほんとに、わかんなくて。なんでこんなものがわたしに与えられたのか。わたしの元に届い

        とてもあらわせられやしないのだけど

        マガジン

        • 令和市シェアード・ワールド【無料版】事務局
          59本
        • イワイ
          9本
        • 令和市シェアード・ワールド【有料版】
          18本
          ¥10,000
        • 日記
          9本

        記事

          Story 1 連作:『イワイ』

          Scene 1: 目撃ーー心臓が止まった。 ぶつかってきた、あの恐怖に染まった顔を思い出す。 世にも恐ろしい怪物を見てしまったかのような顔。俺もあんな顔をしていたのだろうか。いや、造形はもちろんあんな顔なのだが。いや、だからこそこんなにも冷や汗をかいているのだが。わんわんと耳鳴りがする。 ーーの影響で全線運行を見合わせております。お客様にはご迷惑をお掛けしますがーー 改札前で響くアナウンスは頭をすり抜けていく。最早耳は意味ある音を拾わなかった。人でごった返す駅構内をふら

          Story 1 連作:『イワイ』

          Story 0 連作:『慟哭の残響』

          『慟哭の残響』 ーーこれは、0 と 1 の物語 ※選択画面でのバグが起きる場合がございます。ロードすると直りますので、選択画面時でのセーブを推奨します。 ▷あらすじ ここは”あるけど、ない”まち、令和市。 一人の少女が訪れるところから、物語ははじまるーー。 ▷ダウンロードはこちらから ↓↓↓ ( ᐛ )و( ᐛ )و( ᐛ )و( ᐛ )و( ᐛ )و( ᐛ )و こちらの、「慟哭の残響.kocho」をスマホでダウンロードしてください。容量が足りないとダウンロードでき

          Story 0 連作:『慟哭の残響』

          応援歌

          この人めちゃくちゃいつもがんばってるしすっごい素直な人だしわたしが神ならまずこの人応援するわ 数字を気にしてあんまアレなこと言っちゃうとことかひどいこと言っちゃうとことか全部含めて人として不完全で魅力的 人間としての魅力が凄い だからもっと幸を受け取ってほしい 数字だけじゃない あらゆる方向から あらゆる種類 あらゆる豊かさを感じてほしい この人はそれだけの価値があるからそれをもっともっと自覚してほしい 今受け取った幸せ以上のでっかい幸せをどーんと受け取ってほしい この人はそ

          揖屋神社

          JR揖屋〈いや〉駅を降り、歩くこと…6-8分 はい、こちらですね 揖屋神社〈いやじんじゃ〉でございます。 ものすごく、大変古い、由緒正しきお社ということです。気を引き締めて参るところなのですね。 少々階段を登りまして、門をくぐり、境内左手に拝殿がございます。2021年11月07日では改修工事中で、境内のさらに奥の建物にて、お賽銭箱が設置されておりました。 ご挨拶した後は、本殿へと続く道が拝殿脇の奥にございます。石灯籠がいくつも立っているので、それが目印になるかと。「

          揖屋神社

          出雲旅行記

          2021年11月07日07時33分 出雲へと旅立つ日の朝。 雲と太陽 青空と曇り空 空の美しさに眠気を忘れた。 ずっと、空に見とれていた。 雲と太陽の織りなす世界よ これは大地と空。 わかる? 聞こえる? 見える? 貴方は一体どんな気持ちだったのだろう。 考えてみたけど、分からなかった 貴方の視点に立ってみたけれど やっぱり分からなかった 貴方はどんな気持ちで玉を迎えたの? わかるはずもないかもしれない それでも思いを馳せずにはいられなかった どんな気持ちだったんだ

          出雲旅行記

          私記

          安心がほしい。 安心して生きていきたい。 束の間の不安や自信喪失、世界の崩壊は構わない。アップグレードに必要だろう。 安心して生きていきたい。 安心が幻想ならば 崩れ行くものならば 今すぐわたしは死んでも構わない というより死ぬだろう 人間としての恨みを残して 人間として世界を怨んで そして死にに行くだろう 『ないなら生きててもしょうがないや』 周りの人が悲しむよ? 生まれる前に決めてきたことがあるんだよ? 生きたくて生きてるんだよ? どうでもい

          うれしかったこと

          じっくり振り返り語りを残す時間はなさそうだから メモ書きをのこしたくて うれしかったこと わたしはずっと願ってた 「まっすぐ生きよう」 人間として生きるにあたり、守るべきことは色々ある 染み込んだ規則や常識や価値観や 自分的にこういうことしよって決めたこととか、こうしたほうがいいらしいって聞いたこととか、色々 でも、あんまり色々あるとわかんなくなるから どれも大切なんだけど、大切だけど増えるとごちゃついてくるから わけわかんなくなった時でも、それでも残るものは何か 何

          うれしかったこと

          ダウンロードできない幻のノベルゲーム『慟哭の残響』リリース開始!!

          『慟哭の残響』 ーーこれは、0 と 1 の物語 ※選択画面でのバグが起きる場合がございます。ロードすると直りますので、選択画面時でのセーブを推奨します。 ▷あらすじ ここは”あるけど、ない”まち、令和市。 一人の少女が訪れるところから、物語ははじまるーー。 ▷ダウンロードはこちらから ↓↓↓ ( ᐛ )و( ᐛ )و( ᐛ )و( ᐛ )و( ᐛ )و( ᐛ )و のファイルの、.kochoのほうをダウンロードしてください。容量が足りないとダウンロードできません。

          ダウンロードできない幻のノベルゲーム『慟哭の残響』リリース開始!!

          スタックチャンとキャンプ

          すたっくちゃんを作ったよ。 かわいい顔してぶいぶい動く。うちの子は暴れ足りないリスみたい。 「ナッツだ!!ナッツをもっとこの頬袋に!!」 ぶるるるるん!!!て暴れてかわいい。なんでかしょっちゅう「まあみんなポンコツなんですけどね」面をする。もっといろんな表情描いたやん。 友達が暗闇を見せてくれた。 「真っ暗闇を体験しよ」と言ってくれて、体験した。ほのかな明かりを目は捉えて、暗闇がきれいだった。というより、暗闇を一身に鑑賞する彼女が美しかった。その気配に安心した。 みんなで

          スタックチャンとキャンプ

          『慟哭の残響』 : 1

          ーーEveryday...I listen to my heart...ひとりじゃ..ない.. バラバラと音を立てて雨粒が土を打つ。木立を満たす雨音に、ひそやかな囁きが交わった。 ーーいつま…でも歌うわ…あなたの…ために… クルクルと透明なビニール傘を回し、彼女はすんと鼻を鳴らした。濡れた木々の香りがするかと思いきや、案外ビニールの匂いが強い。買ったばかりの傘はまだまだ匂いが抜けないようだ。 足元の砂利道はそこかしこが水に沈んでいる。防水性のブーツが頼もしくしぶきを飛

          有料
          100

          『慟哭の残響』 : 1

          Last Scene :

          すすきを左手に、蓮の花を片手に佇む。すすきを軽く振ると、水琴窟のような音が微かに鳴った。傍らに立つ『海石』から渡された般若の面を顔にかけ、海石は小高い丘の上を振り仰ぐ。 「ちょっと待って、海石」 クソ野郎ちゃんがぴょんぴょんとはねながら近づいてきて、かぱっと口を開けた。海石は右手を差し出す。がぶり。クソ野郎ちゃんが花に噛みつき、もぐもぐと咀嚼してごくんと飲み込む。またかぱっと口を開けて花を放した。無事な姿の花を見下し、海石は原っぱを登っていく。斜めに削られた、広々とした岩

          有料
          250

          Last Scene :

          Scene 8: 機縁

          高所の風は身を裂くように吹き抜ける。 ぱたぱたと服の袖がはためいた。 沈みゆく空の色が目にしみる。 「どう、して」 声が震える。驚愕を表す瞳は小刻みに揺れ動いた。 彼はぐしゃ、と顔を歪める。 「何で、そんなことするんだよ…  馬鹿がッ!!  今すぐーー今すぐ、その手をはなせ!!」 『海石』は そらに消えかけ  海石に腕を掴まれた。 海石は歯を食いしばり、右手で『海石』の左腕を掴んでいる。右半身は完全に外にせり出し、左手と左半身が辛うじて木の柵に引っかかっていた。

          有料
          250

          Scene 8: 機縁