真夏の絢爛な生命力~JAZZ
こんな猛暑続きでも鮮やかに咲く百日紅の力強さに、今まで気が付かずにいたなんて。画像は、Crape myrtle(百日紅:クレープ・ミルトル)、勇敢な優美さに見惚れて、朝の目黒区自由が丘駅前で撮影。サザンオールスターズの名曲Bye Bye My Loveのイントロ「華やかな女が通る まぼろしの世界は、陽に灼けた少女のように 身も心も溶ける」と言わんばかり。華やかさを超えた艶やかな生命力を讃え、少し連想してみました。
社会人の若年期、フジテレビで放映された探検家・関野吉晴氏の「グレート・ジャーニー(THE GREAT JOURNEY)」に目を見張り、全8回のシリーズを毎回楽しみにしていました。南アメリカ・チリの南端部から人類発祥の地アフリカタンザニアまで約5万キロ、祖先が拡散した旅路をさかのぼる。しかも、自転車、犬ぞり、カヌーなど動力に頼らない関野氏のパワーは圧巻で、人類の壮大な軌跡を体現したドキュメンタリー紀行でした。
幼少の頃は、「スタートレック」の第一編(宇宙大作戦)への没頭を思い出します。両親が居間で楽しむ大相撲中継と重なた時には、姉の部屋にあった小型TVにべったり張り付いて、心躍らせた記憶が蘇ります。
このSF古典的名作は、米国放映(1966-69)当時としては先進的で、登場人物に人種を融和させ(Cosmopolitanism)未来を演出、USSエンタープライズ号が、銀河系を超光速で探検するTVドラマ。子供心にも無性にワクワクしたのは、果てしない未知への好奇心を喚起したからです。
動植物の大自然に彩られた母なる地球は、人類の拡散と探求を受容し、更に宇宙の大銀河が、何者かによる謎解きを待ち受ける。解していえば、観察者なくしての時空は虚ろで、視線を持った意識により、ホログラム映画のシーンが投影される。インターネット社会で承認欲求は異常なまでに増幅していますが、「見てほしい」とは、生命体のみならず、万物実存の根源欲なのかもしれない。観ずる映写と不可分なため、在るか無いか定かな状態はなく、二世紀の古代インド・クシャーナ朝の仏僧、龍樹菩薩(ナーガールジュナ)の説く「色即是空、空即是色」と思えてなりません
では、生命とは映画の舞台演出と役者たちだとしたら、その配役(キャラクター)は、どのように決まるのでしょうか。因縁果、カルマの業なのだろうか、かのアインシュタインは「神様はサイコロを振らない (God doesn't play dice)」と量子力学に疑義を呈しましたが、最大の謎の一つですね。たぶん、異次元の作用が、人知ではいくら考えても計り知れないから。でも、心眼は何かがそこにあると暗示する「事象の地平面」、私なら「思考の地平線」と名付けようかな。だからこそ、「生きる」という驚異に満ちた冒険を堪能できるともいえます。
浮世に戻り、真夏を潤す大人な音楽は、なんといってもジャズ。いまや東京はジャズ発祥のニューオーリンズに比肩するほど、汗が噴き出でる亜熱帯。ただ、大学のとき行きつけだった四谷のジャス喫茶「いーぐる」は、歳月を経ても変わらない佇まいです。なんと1967年からの超老舗、店主はジャズ評論家である後藤先生、半世紀以上変らぬコーヒーを淹れ、パスタを茹で、ウイスキーを注ぐ。私語厳禁の気骨ある静粛さ、信念を貫くジャズの大音響に身をゆだね、物思いに耽る渋い空間です。
ある夕暮れの仕事帰り「いーぐる」の席に付いた矢先、伝説のジャズ・ドラマーArt Blakey(アート・ブレイキー)氏※率いるThe Jazz Messengers(ジャズ・メッセンジャーズ)の大ヒット「Moanin(モーニン)」が流れてくるではありませんか。20世紀半ば、アメリカ社会に蔓延る人種差別への苦悶「うめき声・唸る・嘆き」を逆手に、ゴスペル調でクリスタルに磨き上げた結晶。めっちゃスタイリッシュ、かっこよすぎる、ソウル/ファンキー・ジャズに浸り、熱波が照らす人生のフィルムは、まるで蜃気楼のように移ろいでいく。
※ マイルス・デイビス、セロニアス・モンク、チャーリー・パーカーらと共演、NYの名門ジャズ・クラブ: バードランド(Birdland)で人気を博す。1955年、ホレス・シルヴァーとThe Jazz Messengersを結成、若い世代を育成した名匠。「Moanin」の作曲は、ピアニストのボビー・ティモンズ(p)、リー・モーガン(tp)、ベニー・ゴルソン(ts)、、ジミー・メリット(b)、アート・ブレイキー(ds) の個性際立つ演奏メンバー
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