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北斎の90年を描く凄み。映画「HOKUSAI」公開


1年の延期を経て映画「HOKUSAI」が公開された。命尽きるまで描き続けた絵師・葛飾北斎。言わずと知れた世界一有名な日本人だ。北斎は90年の人生で3万点以上の作品を残しているものの、人生そのものには謎の部分も多い。映画ではどの作品にクローズアップするのか?それともエピソードに注目するのだろうか?そんな小賢しい予想を裏切るかのように、映画「HOKUSAI」は北斎の人生に真正面から立ち向かっていた。


この映画を可能にしたのは、作り手の強い熱量なのだろうと思う。主演の2人はもちろん、キャストはただ豪華なだけでなかった。「上手い」ではなく「すごい」。競演という言葉が生易しく感じられるほどの、魂同士が対決するようなシーン。ただ描くことに対して弛まぬ努力を続けた北斎の精神は、時代を超えて現代の作り手の魂をも揺さぶっているように思えた。


映画という作り物の世界。そこに本物を宿らせるための本気は、場面を構成する道具やカメラワークなど隅々にまで見られた。映画には、実際の版画研究所から摺りや彫りの技術を継承する職人が登場している点も見逃せない。


あたりまえだが、北斎ははじめから北斎だった訳ではなかった。映画では、青年期から描くことでその様子を鮮明にしている。勝川派、琳派、狩野派と常識を飛び越えてまでも学ぶ意欲は、並外れた努力家であるだけでなく破天荒さを感じさせる。有名な作品はすべて中年期から老年期のもので、若い頃の作品はまるで努力の痕跡のようにも見える。


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