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久々に河原町の夜を歩く

今日は黒くて、黒くて、黒くて、黒い。
黒いキャミソールに、黒いカーディガン。
黒い紫外線避けスリーブは、日が沈んだら外したが。

黒いのは肌が沈んで見えるからあんまり似合わないよ——とこの間、約束までの暇つぶしに受けたカラー診断のお姉さんに言われたのだが、
今日みたいにボトムスがベージュのときは、黒が一番都合がいいのだ。

駅のホームで、人のいないところを選んで立つ。
それでも人は来る。
人が隣に来ると、熱気とにおいがする。
良くも悪くもないが、とにかくヒトのにおいだ。
猫が隣に来ても、こんなにおいはしない。


——と、行きの電車の中で小池昌代『タタド』を読んでいたら、こんな文章になった。読んだものの影響に抗えず、詩的な文章を読むと、頭の中で精製されるものも全部ポエムチックになる。


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帰り道、久しぶりに夜の河原町を歩いて、妙に気持ちが浮き浮きした。(コロナ禍で飲み会もなくなって、確実に夜に出歩く機会は減っている)

「けどさ〜、まじリアルな話、どこまで信用していいか……」
「わかんねーよなー」

マスクをほとんど下までずらして喋る、学生っぽい男子二人組の会話。

取り留めもなく耳に入ってくる他人の会話が、結構好きである。

誰かと一緒に歩くと、意識がそっちに行くので聞きとれない。ゆる婚活しているものの、人生には一人で歩く時間が欠かせない。

涼しい夜の鴨川に、ところどころスマホの蛍。床の時期ももうすぐ終わる。

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外が暗いせいで、駅名を聞くまで京阪電車がトンネルを抜けたのにも気づかなかった。

二人分隔てて向こうに座っている老婦人二人組の会話、

「でもな、新世代の夫婦と言ったってな……息子はんと孫とでな、……」
「へえ〜」
「写真撮っといてなぁ、載せたるさかいに、って言うて……面白いわぁ……」
「へえ〜」
「アッハッハッハッハッハッ」

アッハッハッハッハッハ。話は聞き取れなかったが、笑い声が耳の底に残った。

そんな笑い声、最近上げてないな。

と思いつつ最寄り駅で降りた。

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