マガジンのカバー画像

傑作選

6
「あんそろぽろじすと」の執筆者たちが自薦したおすすめの記事です。
運営しているクリエイター

記事一覧

道端で人骨をみつけた話【人類学者の日常】

道端で人骨をみつけた話【人類学者の日常】

自然人類学を学ぶ授業では,たいてい,レプリカでなく本物のヒト全身骨格を詳細に観察して,スケッチをする骨学の実習があります.自分と同じホモ・サピエンスの体のなかに,どのような形の骨があって,どんな働きをしているのか,こういう機会でもなければ,なかなか知ることができません*1.

道端に人骨が落ちている?さて,今回のお話は,私がそうした骨学の実習を1週間ほどみっちりと受けていたときのこと.いろいろな形

もっとみる
はじめに

はじめに

人類学という学問があります。この学問がめざしているのは、人類という生きものを総合的に理解することです。そのため、人類学者は、アフリカの砂漠ではらばいになって骨を掘り出し、ジャングルの奥へわけいって腰ミノだけしか身につけていない人びとと交流して血を採取し、カビ臭い書庫から探検家の記した文献を探し出しデータベースを作ります。

人類学の黄金時代は探検とともにありました。探検による「自分と似ているけれど

もっとみる
サルも「顔色をうかがう」??

サルも「顔色をうかがう」??

話している相手の頬がポッと赤くなったりしたら、照れているのかな、恥ずかしいのかな、もしかして僕のこと好きなのかな!?とか思ったりしますよね。(だいたい勘違いですけどね…。)反対に顔色が悪かったりすると、病気かな?大丈夫かな?と心配になったりします。このように「顔の色」というのは私たち人間のコミュニケーションにおいて、重要な役割を果たしているのです。

「顔色」を見分けるために必要な2つのこと

もっとみる
お父さんの武勇伝

お父さんの武勇伝

「俺はなぁ、若い時はさんざん苦労したんだよ。家が貧乏で、寮生活でしごかれて、学生紛争があって…」はいはい、お父さんの武勇伝ね、もう聞き飽きました。苦労して育った人間は立派になる、その通りかもしれないけど、私とは時代が違うんだから。お父さんが苦労したからって、今の私には関係ないでしょ?

いえいえ、実は関係あるかもしれないのです。まだマウスによる実験でしか確かめられていませんが、父親が幼い頃にストレ

もっとみる
はじめてのおっぱい

はじめてのおっぱい

勝手な印象や思い込みによって,理にかなわない行動をとってしまうことが多々あります.匂いにだまされて銀杏はまずいものと思い込んでいたり,薬やマスクは花粉症に対してあまり意味がないと決めつけていたのに,用いてみたら思いのほか快適だったり,様子がおかしいことにうすうす気づきながらも電車に乗り続けていたらまったく違う駅についてしまったり...

このような思い込みが,赤ちゃんにはじめてあげる母乳についても

もっとみる
昼のサル,夜のサル

昼のサル,夜のサル

 読者諸氏にお尋ねしよう,諸氏は「昼行性」だろうか,「夜行性」だろうか。コンビニエンス・ストアが日常の一部と化し,スマートフォンを通じて昼夜問わずさまざまな娯楽がもたらされている昨今では,夜になるほど目が冴えて活発になるという,「夜行性」とも言うべき人が,いよいよもって増えているようである。とは言っても,我々の社会は朝起きて夜眠ることを前提に成り立っている。一方で,実は我々霊長類の祖先は夜行性であ

もっとみる