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44:生命保険は契約者・被保険者・受取人で扱いが異なる

相続時に於いて要注意項目のひとつが生命保険です。
『契約者』 保険料を支払っている人
『被保険者』保険の対象者
『受取人』 保険金の受取人
① 誰が契約者で、誰が、被保険者で、誰が受取人かで課税項目が違います。
② 税率は『相続税』<『所得税』<『贈与税』の順です。

家族構成「夫」「妻」「子供2人」4人家族で、夫が死亡、妻と子供は存命の同一条件でも契約者、被保険者、受取人が誰かによって『相続税』『所得税』『贈与税』それぞれの可能性があります。
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『相続税』に該当する例
契約者(夫)で被保険者(夫)で、受取人(妻か子供)なら『相続税』
・契約者、被保険者、受取人が全て夫でも同様です
保険金は法定相続人1名に付き500万円まで非課税
・法定相続人は妻と子供2人の3名で保険金1,500万円まで非課税
・死亡保険金-1,500万円=課税額(1,500万円を超えた保険金額)

『所得税』に該当する例
契約者(妻)で被保険者(夫)で、受取人(妻)なら『所得税』
このケースでは『一時所得』となるため、所得税+住民税対象
・(保険金+配当金-払込保険料総額-特別控除50万円)×1/2=課税額

『贈与税』に該当する例
契約者(妻)で被保険者(夫)で、受取人(子供)なら『贈与税』
・支払いが妻だから「②」の保険金を妻から子供に生前贈与する形になる
・生前贈与基礎控除額は110万円です
・死亡保険金額-110万円(基礎控除)=課税額

現在加入してる生命保険は、契約者・被保険者・受取人を確認して問題あれば保険会社に相談しましょう。

生命保険の非課税額は『法定相続人1人に付き500万円』で、法定相続人3名なら1,500万円、4名なら2,000万円まで非課税と書くと、個々に500万円が上限だと思いそうですが違います。
例えば、法定相続人4名の中の1人だけが1,500万円の生命保険を受け取っても2,000万円以下ですから非課税扱いです。

遺産、保険の全てが非課税枠なら問題ありませんが、高額な財産のある故人だった場合、保険金の相続税に格差が出るケースもありますので、計算した上で保険金の受取額を決めると良いでしょう。

『保険金で相続金額を増やす』

このシステムを利用すれば自分達夫婦を面倒看てくれた子供への相続金額を「①」の契約者(自分)で被保険者(自分)で、受取人(面倒を看てくれた人)にすれば『相続額』を増やすことも「法定相続人以外の人(遺贈)」に財産を残すことも可能です。

例えば長男の嫁が老後の面倒を長年看てくれてた場合など、長男の嫁に遺産金を残したいなら「自分が生命保険契約」して「自分で保険金を払って」「受取人を長男の嫁にしておく」のです。そうすれば自分が死亡した時に、長男の嫁が死亡保険金を「遺贈いぞう」という形で全額受け取ることができます。但し遺贈は相続税の2割増しで税金が掛かります。

死亡保険金は原則、遺産内容に含まれないので、長男の嫁は他の相続人に保険金の一部を渡す必要も無く、遺産分割協議に参加する必要もありません。あとは長男の嫁を保険金の受取人として認めてくれる保険会社を探すだけ。

通常保険金の受取人は『被保険者の戸籍上の配偶者』と『被保険者の2親等内の血族(祖父母・父母・子・孫・兄弟姉妹の血族)ですが、自分の生命保険を自分で契約して支払う場合、受取人を誰にするかは原則的に保険契約者の自由で法的な制約はありません。保険会社に交渉したり確認すれば長男の嫁を受取人は充分可能です。
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そこで『43:相続税基礎控除と法定相続人』の中で記載した例を考えてみる。
・夫婦(子供なし)で夫死亡
・財産は夫名義のマンションのみ(価値2,000万円)
・遺言書は全て妻に相続させると明記
・されど夫の父母遺留分が16.6%(約333万円)ある
・息子が死ねば嫁は他人『遺留分請求される可能性は充分ある』

現金が無ければマンション売却して遺留分を支払うしかありません。そこでもしもの時を考慮して、契約者「夫」被保険者「夫」受取人「妻」として遺留分以上の保険料が支払われる生命保険に加入しておけば問題ありません。

このケースの法定相続人とは『妻』『父』『母』3人で、生命保険枠は1人500万円なので、3人分の保険金1,500万円まで非課税ですから、妻を受取人として1,500万円の保険に入っておけば、マンションを手放す事なく保険金から333万円夫の両親に支払えば良く、更に妻の生活費としても1,167万円残せる計算になります。

保険受取人が指定されている場合は、受取人固有の財産として扱われ、原則として死亡保険金は相続財産には含まれません。よって遺産分割協議の議題にもなりませんから生命保険金を賢く利用すれば、相続の悩みを解決できるケースは増えるでしょう。

また財産より負債が多い故人なら、自分が法定相続人であると知った日から3か月以内限定で『相続放棄(財産も負債も全て放棄する)』の手続きが故人の居住地家庭裁判所で可能ですが、保険金は相続財産ではなく受取人固有の財産ですから保険金の受取人が指定してあれば、相続放棄しても保険金を受け取ることができます。

こうしてみると生命保険金の制度を知り、上手く利用すればトラブルを避けたり、対象者の希望を叶えられるケースは増えるでしょう。

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参考資料(お時間のある時にでも読んでみてください)
あんしんサポート葬儀支援センター  
代表ブログ 葬儀支援ブログ「我想う」
家族の死後に後悔しない為の一冊

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