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「やめないを繰り返す」:研究者の知的好奇心が人類の新たな常識をつくる |ANRI基礎科学スカラーシップ対談
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「やめないを繰り返す」:研究者の知的好奇心が人類の新たな常識をつくる |ANRI基礎科学スカラーシップ対談

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こんにちは!ANRI広報の柴沼です。

先日、弊社で2019年から続けている給付型奨学金の取り組みである「ANRI基礎科学スカラーシップ」の第4期生募集を開始いたしました!

数学、天文学、物理学など、実用化に時間がかかる基礎研究。そのため、実用化に近い研究に比べ、研究費が集まりにくいのが実情です。しかしながら、人類の発展にとても重要な研究です。

10年後、20年後、それよりもっと先の未来、自分の研究がきっかけで、人類の課題解決へ導いたり、私たちの生活を豊かにしてくれるかもしれない。そう信じて研究している方たちにとって、ANRIの給付型奨学金はどのように受け取ってもらえているのか。

今回、第1期生の須藤貴弘さんと弊社の担当であるジェネラル・パートナー鮫島昌弘にお話を伺ってみました!

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(左:須藤 貴弘、右:鮫島昌弘)

須藤 貴弘(すどう たかひろ)
東京大学理学系研究科天文学専攻博士課程修了。2021年 6月より日本学術振興会 海外特別研究員として Ohio State University にてポスドクとして研究活動に従事。研究テーマは高エネルギー天文学など。
鮫島 昌弘 (さめしま まさひろ)/ ANRI ジェネラル・パートナー
東京大学大学院理学系研究科天文学専攻修士課程卒業後、総合商社、技術系ベンチャーキャピタルを経てANRIに参画。全国の大学や研究機関発の技術をもとにしたハードテック領域のスタートアップを積極的に支援。
主な投資先はCraif、GITAI、Jij、Jiksak Bioengineering、QunaSys、ソナス、ヒラソルエナジー等。


ー本日は宜しくお願いいたします!まずは、自己紹介をお願いできますでしょうか。

須藤さん(以下敬称略):須藤 貴弘です。東京大学理学系研究科天文学の博士課程を修了し、今年6月から米国の大学にてポスドクとして研究活動をしています。

研究のテーマは、「高エネルギー天文学」です。天文学の理論研究をしていて、観測から得られた様々な情報を組み合わせて、宇宙に関する知見を引き出そうとする仕事です。

特に最近では、『宇宙線』に関わる研究をしています。宇宙線は、宇宙空間を高速で飛び交う、非常に高いエネルギーを持つミクロな粒子です。宇宙線の観測を用いて、天体現象、銀河、暗黒物質などの理解を深めることが、私の研究の目的です。

ー具体的にはどのような研究なのでしょうか?

須藤:宇宙に打ち上がっている『天文衛星』を利用し、ガンマ線やX線、宇宙線などを観測をし、その観測したデータを使って、爆発的な天体現象と基礎物理法則を探る研究をしています。

例えば、宇宙では、『超新星爆発』という、星が爆発する現象があります。

これは、地上では起こり得ないような、すごい高温で、ものすごいスピードで物が飛び交い、凄まじいエネルギーが解放される現象です。この爆発によって「宇宙線」ができるんです。

「宇宙線」は、太陽から放出されるものもあれば、何万年も前の超新星爆発から地球上へ届くものもあり、私は後者のような爆発現象を研究しています。

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(出典:NASA / Crab Nebula: Observatories Combine to Crack Open the Crab Nebula )

写真の“Crab Nebula” は、超新星爆発のイメージの代表格。星が爆発した後に、残骸が広がって、それがこの写真のように見えています。

宇宙ではエネルギーの高い粒子が高速で飛び交っているのですが、超新星爆発の残骸の中で高エネルギーな加速粒子を捉えることができるようになってきました。この加速粒子を調べることで、逆に今度はブラックホールや、中性子星、超新星残骸などの物理、または高エネルギーでの物理を調べることができます。

さらには、超新星爆発によって宇宙線ができるというお話をしましたが、実は、「暗黒物質」も宇宙線を出すかもしれないという仮説が考えらています。

「暗黒物質」というのは、天体観測から見つかった完全に正体不明の物質です。これを調べる術は色々と考えられているのですが、宇宙線の観測データの中に「暗黒物質」の性質を突き止める鍵がないか、世界中の研究者が調べています。今まで未知だった暗黒物質の性質が詳しくわかれば、人類の物理学の理論はかなり革命的に進展すると思います。

このように、僕が研究をしている宇宙線などの宇宙から降ってくる高エネルギーな粒子を天文観測をすることで、自然のより根源的な理解を深めることに繋がります。宇宙線は「自然の法則を運んでくれるメッセンジャー」という側面があり、一番深いところで、自然や世界がどういう風になっているのかという解明するのに大事な情報をもたらしてくれるんです。

人類がほかでは知り得ないような自然の法則を知りたい、というのが研究のモチベーションです。

人類の知識の地平線が広くなると将来の幅が深くなる

ー須藤さんにとって、基礎研究を進めていくことの意義とはどのようなところにあるのでしょうか?

須藤:自然の法則を明らかにするということは、人類は自然と関わりながら、そして、自分自身も自然の一部としてずっと生きていくからなんだと思います。

これから人類は生きていく中で、色々な問題や課題を抱えていくと思います。例えば、次世代のエネルギーをどうするか、もうちょっと先の将来だと、人類の宇宙進出、他の惑星へ住むなど。もっと欲求的なことだと寿命を伸ばしたいなど課題が出てくると思います。

その課題に直面したときに、どういう解決策ができるか、どういう将来を実現できるかなどは、人類がどれだけ深く自然の法則を理解しているかで決まると思っています。

何かをしたいという時に、こういうアプローチが取れるという具体策が出すこと、人類が最終的に究極的にどれくらいまで発展できるかを決めるのが、人類が自然をどれくらい理解しているかにかかっている。

そういう意味で基礎研究を進め、自然の法則を理解することで、今、実用的でないことでも、今後の課題によっては、課題解決に至るきっかけになるかもしれません。

人類の知識の地平線が広くなる。将来の幅が深くなるのだと思います。

追求をやめない、知的好奇心で研究をすることを大切に

須藤さん動き

(写真:須藤 貴弘)

ー基礎研究の魅力、どのようなところでしょうか?

須藤:基礎研究で魅力的なのは、目の前の謎を解くことで自然の核心に迫れるところだと思います。

特に過去の偉大な研究者たちのすごいところは、「ちょっとした違和感」を見逃さず、追求してきたことだと思います。現在、人類は多くのことを解明してきて、わかったつもりになっていることがあります。観測して、ちょっとした違和感があったりする。その時に、そこで終わりにさせることもできるけれど、追求をやめない知的好奇心に満ち溢れた研究者たちがいます。

その「やめない」ことを繰り返すと、突然今までの常識を覆すようなすごいことが明らかになってくる。それを繰り返して、現在の常識というものが作られています。その「やめないことを繰り返す」こと、「好奇心で研究をする」ことが一番大切だと思っています。

自然科学で重要な法則で知られている『相対性理論』や『量子力学』も、ちょっとした違和感を研究者が突き詰めたのちに、この理論が発見されました。

「もういいんじゃない?」というところを突き詰めると、今まで人類がいかにわかっていなかったか、ということがわかってくる。そこが基礎研究の面白いところだと思っています。僕も興味深いと思うことを突き詰めて、宇宙の理解や物理学の進歩に貢献をしたいと思っています。

基礎研究分野での厳しい現状

ー鮫島さんはご自身も基礎研究の分野で研究をされていたと伺っています。基礎研究を続けていく際の課題などどのようなことを感じていらっしゃいますでしょうか。

鮫島:僕も大学時代に天文学を研究していました。天文学の世界って、すぐに人間の世界で役に立つかというとそうではない難しい分野です。例えば、超新星爆発の新しい機構がわかった、銀河の年齢がわかったというのはすぐには役立たないですよね。ただ、そういう学問をやっていく人たちが、基礎的なサイエンスを追求していくということは、人間の本質的な欲求だと思っています。それをしっかり支援していきたいと思っています。

実用化にすぐ結びやすい工学や化学などは企業からの支援も多いと思いますが、数学、基礎物理、天文学などそういうところの奨学金が非常に不足しがちなのが実状です。須藤さんも感じていらっしゃると思いますが、日本で基礎研究を続けていくというのは、環境として大変ですよね。

須藤:そうですね。人類の知的な財産を増やしていくというのは大切。それに加え、人類の生活を豊かにするという意味でも大切だと思っています。

実は、天文の技術も応用され、身近な物に役立っている例もあるんです。
例えば、医療分野では、画像を見て診断やデータを分析するようなもので天文の技術が使われていたりします。また、Wi-Fi通信も星や宇宙現象の観測するため、電波の技術を高めていたら、地球上での通信の技術に使えるようになったり。

知的なフロンティアを広げていくと応用が効くようになる。それが実用化につながるきっかけになるんだと思っています。

もちろん自然科学だけではなくて、人文科学なども含めて、人類が知っていることを増やす行いは本質的に重要だと思います。

次世代のためになることは先陣を切って取り組んでいく

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(写真:ANRI 鮫島昌弘)

ーありがとうございます。ANRIの奨学金を始めたきっかけやANRIがこの奨学金を続けていく意義はどこにあるのでしょう?

鮫島:今の世の中は「選択と集中」、すぐに役立つものにフォーカスされています。しかし、すぐに役立たないものでも、次の種になる可能性がある。そういう可能性は、色々な分野に眠っていると思っています。

そういう可能性がある分野にどんどん種を植えていき、それがいつかは花を咲かせたり、種同士が結合して大きな種になるということがあると思っています。

すぐに実用化に繋がらないものでもいつか何かに結びつけられるものだったら、どんどん種を植えていきたい。そうでないと、焼畑農業じゃないですけれど、次の作物が出て来なくなってしまうなという危機感があり、だからこそ、ANRIで奨学金の取り組みをはじめました。

僕らベンチャーキャピタルのビジネスは新たな産業を創出するであろうベンチャーに投資してリターンを生み出すモデルです。色んな業界で育ってきたものを刈り取るイメージです。だからこそ僕らVCは超長期目線で次のタネを植える必要があると思います。

このような次世代のためになることは、今後も先陣を切って積極的に取り組んでいきたいですし、こういう取り組みは増えていって欲しいとは思いますね。

また、ANRIの奨学金は比較的、自由に使っていただけるようにしています。参考書の購入や海外の学会に行く旅費など、意外と費用がかかります。また、研究の機具など身の回りのものに柔軟に使ってもらえるといいですね。これあるとありがたいな・・・というものに使ってもらいたいです。

「この方向で進んでいいんだ」 気持ちの面での後押し

ーANRIの奨学金に関してどのように感じていらっしゃいますか?

須藤:鮫島さんもおっしゃっていましたが、基礎的な研究に企業が支援しようということがあまりないんですよね。そういう点は純粋にすごいなと思いました。

基礎研究していると、すぐに役に立たないというような評価されることもあるので、そういう中で支援してくれる企業が、世の中にいてくれるというのは嬉しかったです。

また、奨学金をいただいて、実用的に役に立つのに加えて、「この方向で進んでいいんだ」と気持ち的にも後押しをしてもらったと感じています。「頑張るぞ!」というモチベーションが上がりました。

国からは基礎研究に対してお金も含め様々な支援をいただいていますが、、世の中の「実用的なものをどんどんやっていきましょう」という流れの中で、あえて企業の人が基礎研究に目を向けてくれているというのは非常に嬉しかったです。

これから、ANRIの奨学金に応募する方々も、基礎研究の道に進んでいる方々だと思うので、ぜひ一緒にがんばりましょう!

ーありがとうございます。鮫島さんから、最後に一言お願いします。

鮫島:僕らが嬉しいのは、奨学金が役立ったと論文を出すときに報告を受けた時ですね。研究に役立ててもらったんだなと実感します。

そして、この奨学金を受けて、須藤さんのように、自分の次のキャリアとして、アカデミアのポストを見つけることができたという報告も嬉しいです。

この奨学金によって、皆さんの今後やりたい活動を支援できて、少しでもプラスになってくれたら嬉しいですし、この取り組みが意味あるものになると思います。

ぜひご応募お待ちしております!

ラスト

(左上:ANRI 鮫島昌弘、中央下:須藤 貴弘、右上:ANRI 柴沼桂子 / インタビュアー)

ーありがとうございました!

【ANRIからお知らせ】
ANRIでは、給付型奨学金「ANRI基礎科学スカラーシップ」の第4期生の募集を開始いたしました!ご興味ある方はぜひ、ご応募ください!

■応募詳細
ベンチャーキャピタルANRI 給付型奨学金プログラム「ANRI基礎科学スカラーシップ」第4期生の募集を開始!

応募締切:2021年8月31日まで


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