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女性起業家プログラムが過去のものになる未来を創る 〜投資プログラム「UNLOCK」〜

女性起業家への投資プログラム「UNLOCK」の募集を開始したANRI。これまでもさまざまなポジティブアクションを行ってきたANRIが「UNLOCK」を開始する背景はどのようなものなのでしょうか。また、女性起業家を取り巻く現在の課題とは。ANRI代表パートナーの佐俣アンリ、本プログラムを主導、統括する川口りほ、女性起業家に数多く投資支援をしてきたジェネラルパートナーの河野純一郎に話を聞きます。

※「UNLOCK」における「女性」は、本人の性自認に基づくものとしています

ー  PROFILE(五十音順)ー
佐俣アンリ
ANRI代表パートナー。2012年にANRI設立。4号ファンドより女性起業家への投資を積極化すべく、4号ファンドにおける女性起業家への投資を20%に引き上げる「Positive Action」を行い、達成。

川口りほ
シニアアソシエイト。2023年にANRIに入社。女性起業家へのサポート支援に興味があり、イベント開催やコミュニティに参加。本投資プログラムUNLOCKを主導、統括する。

河野純一郎
ANRIジェネラルパートナー。新卒からジャフコグループ株式会社に入社。その後ANRIに至るまでずっとベンチャーキャピタリストとして多くの実績をもつ。女性起業家への投資支援も数多く行っており、ANRIのキャピタリストを統括する存在として本取り組みの仕組みづくりを担う。

女性起業家を取り巻く様々な課題を突破する投資プログラム「UNLOCK」

ANRI 川口りほ

──本日はよろしくお願いします。
まず、この「UNLOCK」がどのようなプログラムなのかを、主導、統括を行う川口さんに伺いたいと思います。

川口:UNLOCKは、女性起業家を対象とした投資プログラムです。「UNLOCK」という名前には、負の状態からの開放のイメージや、女性起業家への「当てはめられた役割を突破しよう」「最大限の高みを目指そう」という意味を込めました。

このプログラムのポイントは2つあります。まず1つ目は、「投資」であること。現在の日本のスタートアップ界において、女性起業家をとりまく課題はたくさんあります。その中でも大きな問題が女性起業家の資金調達が難しいということ。日本で行われる投資の中で、女性起業家に対するものは2%だとも言われています。

私たちは2020年に4号ファンドにおける女性が代表する企業への投資率を20%以上にすることを宣言し、以降実際に投資した女性起業家のケースを分析し課題を抽出しました。社会では様々な女性起業家への支援が増える中、私たちがたどり着いたのは「やはり投資をしていかなければならない」ということです。そのため「UNLOCK」は、投資プログラムであることが前提であり、大きなポイントになっています。

2つ目は「ムーブメント」であること。投資プログラムにすることで、他のベンチャーキャピタルや女性起業家支援団体を巻き込みやすくしました。ANRIだけで女性起業家を囲い込むのではなく、みんなで投資を行いイグジットしていただくのを目指しています。ジャフコグループ株式会社(以下、ジャフコ)さんにお声かけして参画いただいているのも、このためです。

──ジャフコ出身の河野さんは、この参画をどう見ていらっしゃいますか?

河野:日本のベンチャーキャピタル業界を牽引してきたのは間違いなくジャフコだと思います。ジャフコは、ベンチャーキャピタルという言葉が一般化する前から、それを日本で実現する方法を仕組みから考えてきました。日本のベンチャーキャピタルの歴史そのものであるジャフコがこのムーブメントに参画する意義は、シード期からその後のラウンドも一貫して投資支援が行えるという点でとても大きいと思います。

ANRI 佐俣アンリ

──これまで実際に投資した女性起業家のケースから課題を抽出した、とのことですが、具体的にどのようなものがあったのでしょうか?

佐俣:これまでたくさんの女性起業家に投資させていただいて見えてきた課題は、全て「マイノリティだから起こる現象」と考えてみることができます。現在の起業家の中で、女性はまだ圧倒的に数が少ない。男性が男性同士で情報交換しがちであるという問題も相まって、女性起業家は情報弱者になりやすい。すると、「投資比率がおかしい」「事業に関連の薄いアドバイザーが多くの株を保有している」などの問題に結びついてしまうのです。これらは女性起業家に限らず、かつては地方のスタートアップでも起きていたことです。

一方で、そのような問題が起きていない女性起業家もいました。それをパターニングしていくと、何かしらの理由で身近にスタートアップの世界がある方が多かったのです。僕はそこに課題を感じながらも、また突破口にもなると考えました。要は、必要な情報にアクセスでき、機会提供ができれば結果を出せるのではないかと考えたのです。それを実現するのが、このムーブメントやコミュニティなのではないかと思います。

──ANRIでは、これまでも女性起業家を支援するポジティブアクションを行ってきました。これまでのアプローチと、「UNLOCK」はどのような位置付けになるのでしょう。

佐俣:女性起業家支援は、まず数字を掲げるところから始まりました。2020年に「女性起業家への投資率20%」(※)と数字を掲げ、2022年に20.4%で達成。33社に投資して見えてきたのは、先に挙げた課題に加え、投資する側の大変さやアンコンシャス・バイアスです。
女性起業家の事業は、さまざまな課題によって70%ほどがうまくいかないのが現状です。キャピタリストが頭では「女性に投資しよう」と思っていても、うまくいかなかった投資を「女性起業家だから」と類型化すると、それを避けるようになってしまう。それならば、全社プロジェクトとして切り出し女性起業家への投資を促そうと「UNLOCK」が始まった、という流れです。

川口:キャピタリストは個人で案件を担当しているので、やはり自分のリターンを最大化しようと考えてしまうことがあります。「UNLOCK」は全社プロジェクトであることで女性起業家に積極的に投資を促せるのではないかという仮説に基づいているんです。

※2020年11月末より、ANRI4号ファンドの投資先のうち女性が代表を務める企業の比率について、最低でも20%以上とするPositive actionの取り組み。現在のANRI5号ファンドでも同様に目標を掲げている。

積み重ねてきた知識と起業家コミュニティへのアクセスを

ANRI 河野純一郎

──多くの女性起業家に投資支援をしてきた河野さんは、女性起業家ならではの強みがどのようなところにあると感じられますか?

河野:僕は「女性起業家ならではの強み」という問いには違和感を感じます。これが「女性起業家ならではの弱み」という問いであったら問題でしょう。それと同じことだと思うので、「僕が投資・支援してきた女性の、起業家としての強み」としてお答えすると、性別関係なく起業家それぞれがもともと持っていた強みだと感じます。

例えば、メンバーのみならずユーザーも会社のビジョンに共感させ当事者化させてしまう巻き込み力や、ステイクホルダーの共感と応援を得て大きなムーブメントに変えていく力など。性別に関係なく起業家に必須の条件を兼ね備えた方が多かったです。

一方で、先に佐俣が話した「情報格差」の影響を事業を拡張する時に受けやすいのも確かです。「事業を近接領域に広げる」、「経験者を採用する」などの必要な情報にアクセスできず、なかなか資金調達できないことが多いのです。

「初手としての参入角度は良くても、類似上場企業のバリエーションなどの状況から上場が見込めないとされれば資金調達が難しい」となった時、「事業をどう広げるか」「今何が必要なのか」を先輩起業家や僕らと情報交換することで明らかにできれば、事業の成功確率を上げられるのではないかと思います。

──まさに、ANRIが役に立ちそうな部分ですね。

河野:そうだと思います。まず、僕らの中にある多数の知識やパターン認識のアセット。そして、起業家のコミュニティの中で情報のシャワーを浴びてもらって成長してもらうためのCIRCLE by ANRI※ という場所。これらを持っているのは、僕らならではの強みだと思います。

佐俣:スタートアップの世界が身近な女性起業家の事業がうまくいきやすいのは、物理的な接触時間が長いことで情報をたくさん浴びているからだと思うんです。CIRCLEは自然といろいろな情報が集まる場所で、誰かに会うと「そういえば資金調達中だったよね」「お医者さんの知り合いを探してるって言ってたよね」と情報交換が始まり、自然と自分の仕事にまつわる情報が集まってくる。投資プログラムだけではなく、場所とセットで提供できることに「UNLOCK」の意味があるのではないかと思っています。

河野:僕たちとしてはは「いつでも聞いてよ!」と思っていても、女性起業家にとっては聞きづらいことがあるのだなと感じることもありました。僕らは、自分で思っているほどフレンドリーになれていないのだ、と。僕らの努力が必要なのはもちろん、物理的な距離がそれを解決してくれたらとてもいいなと思います。

佐俣:今日お話ししたのは、女性起業家を取り巻く問題のごく一部かもしれません。しかし、トップダウンの意思決定や社内の規制により、それまで当たり前だった風潮が一気に変わった大企業も出てきています。この業界も変わるはずだと信じて「UNLOCK」に取り組んでいきます。

※CIRCLE by ANRI:ANRIが運営する投資先向けのインキュベーション施設。ワンフロアで起業家も投資家も気軽に話ができる環境を六本木ヒルズにて開設している。

女性起業家支援プログラムが「過去のもの」になる未来を目指して

──「UNLOCK」では、参加する女性起業家の応募を6月27日に開始しました。どのような方に応募いただきたいですか?

川口:「UNLOCK」に賛同いただける方、このムーブメントに巻き込まれたいと思っていただいた女性に応募いただきたいです。「資金調達できるのかな......?」と思っている方にも、ぜひ。こうしたプログラムや支援に複雑な気持ちを抱えている方もいるかもしれませんが、それでも「このプログラムを使い倒してお金をもぎとってやるぞ!」と考えるのもひとつの手なのではないかと。そんなハングリーな方の応募もお待ちしています。

河野:僕の視点で付け加えるなら、「自分なんて起業できない」「興味はあるけれど、遠い話だ」と線引きをしてやる気や欲望を抑えている人こそ、チャレンジしてほしいなと思います。僕らはこのプログラムを、自分たちの評判のためにやるわけではありません。起業家に対してオープンで、フェアで、ホスピタリティをもってサポートしたいと思っているANRIと、CIRCLEに集まる起業家に一気にアクセスするきっかけだと思って、安心して飛び込んでいただきたいなと思います。

──最後に、佐俣さんにお話を伺います。ANRIとして女性起業家を支援し続ける先に、どんな未来が広がっていますか?

佐俣:日本で女性参政権が初めて行使されたのは78年前のことです。当たり前の権利がなかった時代がついこの間だと考えると、愕然としますよね。そしてこれが実現されるまでには、先人たちの不断の努力があったのです。

同じように、50年後くらいに「2024年は女性の起業家が少なく、支援やプログラムが必要だった」ことに驚かれるような世界になっていてほしいなと思います。こういうプログラムが「過去のもの」になる未来を作るのが、僕らの仕事だと思います。

(聞き手・撮影: ANRI  興梠桂子)


【 お知らせ 】

現在、女性起業家に特化した投資プログラム『UNLOCK』の応募を開始しております。下記UNLOCKホームページをご覧いただき、ご興味のある方はぜひご応募ください!

■ 概要

1. 採択時にANRIから出資
プログラム採択企業には、500万円〜5,000万円のレンジでANRIが出資検討致します。出資条件につきましては、選考フローの中でキャピタリストと相談ください。

2.CIRCLE by ANRIへの入居
六本木ヒルズ森タワーに1200平米を超えるインキュベーション施設、CIRCLE by ANRIを開設しました。多くのANRI既存投資先が入居するオフィススペースに無料でご招待いたします。ANRI内のクローズドな数々のイベント・勉強会にご参加いただけます。弊社の250社以上の投資先ネットワークも活用いただけます。

3.キャピタリストによる伴走支援
ANRI及びジャフコのキャピタリストが担当として、資本政策・事業計画立案を早い段階から支援します。また、事業の初期段階で成長戦略・エグジット戦略を描き、次回の調達を見据えたバリューアップを行います。なお、支援の頻度や形式など関わり方は起業家の希望に沿って柔軟に対応します。

■応募方法

下記、 UNLOCK ホームページよりご応募ください。

UNLOCKホームページ:https://www.anri-unlock.com/


📣応募締め切り:2024年8月30日(金)📣


ご応募をお待ちしております!


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