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【図解】「ジェンダー平等は時代遅れ」への3つの解釈

「会社の先輩 産休あけて赤ちゃん連れてきてたんだけど もうすっごいかわいくて どっかの政治家が『ジェンダー平等』とかって スローガン的にかかげてる時点で 何それ 時代遅れって感じ」

炎上したCMの「ジェンダー平等は時代遅れ」という文言、複数の解釈ができることが理解不能を加速させていると考え、3つの解釈パターンを図解してみた。

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(政治家が)時代遅れとは、ジェンダー平等に対して 世論の認識 > 政治家の認識 になっている構図だと考えた。

結論としては、①を意図したCMだったが、②と誤解されて炎上 である。

まず、「世論の認識 < 政治家の認識」になる左上半分は、政治家がむしろ時代を先取りしているので、CMの発言とは明らかに合っていない。

③の領域も合致しないと考えていいだろう。CMの発言の「スローガン的にかかげてる」からは、すでにジェンダー平等が達成されているというよりは、これから達成すべきものとしての意味合いを感じる。そもそも、政治家も世論も達成したと認識している目標に対して、その認識のズレをわざわざ時代遅れだと論じる必要性もない。

残るは①か②で、判断ポイントは、世論がジェンダー平等の達成を認識しているかどうか、になる(達成=②、未達成=①)。しかし、CMの語り手は考えを明言していないので、発言から推測するしかない。
「ジェンダー平等は時代遅れ」の前段の「産休明けの先輩(女性。男性に産休はない)が、赤ちゃんを連れて出社」に対するCMの語り手の意見は、「赤ちゃんかわいい」である。例えば「赤ちゃんがかわいそう」なら否定的だろうが、笑いながら「赤ちゃんがかわいい」としか言っていないので、どちらかと言えば肯定的(女性が働きやすくなったという意味?)に捉えている模様。

つまり、ジェンダー平等は達成されていると彼女は前向きに思っており、それをスローガンに掲げて達成を目指そうとしている政治家を、②の意味で時代遅れだと言っていると考えられる。

ご存じのとおり日本はジェンダー平等後進国なので、②の立場を取るこのCMは現状認識ができていない、と批難を浴びて取り下げになった。


なお、WebCM取り下げの声明文からも、①を意図していたのに正しく伝えられていなかったことが取り下げ理由だと考えられる。(それをスケープゴートにして他の批判点にフタをしたようにも見えるが…)

今回のWebCMは、幅広い世代の皆様に番組を身近に感じていただきたいという意図で制作しました。ジェンダーの問題については、世界的に見ても立ち遅れが指摘される中、議論を超えて実践していく時代にあるという考えをお伝えしようとしたものでしたが、その意図をきちんとお伝えすることができませんでした。不快な思いをされた方がいらしたことを重く受け止め、お詫びするとともに、このWebCMは取り下げさせていただきます

「会社の先輩 産休あけて赤ちゃん連れてきてた」というシチュエーションに対しては、コロナ禍なのに赤ちゃんを連れて出社・勤務せざるを得なかったのだ、と私は否定的に感じた。女性の出世が依然難しい・育休が取得できない・経済的余裕がない等の背景があり、ジェンダー平等の達成が遠いことを示唆していると思ったが、CMの語り手(女性)は笑顔。確かに「議論を超えて」いる…


会話文としての自然さを残しつつ、30秒の制約の中で主張を伝えるのはとても難しいことだと改めて感じた。しかもこのCMの場合、意図がわかりにくいだけでなく、女性蔑視・若者蔑視・政治家蔑視など、CMのターゲットになりうる層からことごとく批難されているのが逆にすごい。「他山の石」にせねば。

いつも図書館で本を借りているので、たまには本屋で新刊を買ってインプット・アウトプットします。