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【Museum⑱】お札と切手の博物館@王子
退職に伴う有給消化期間の楽しみとして、
都内の博物館・美術館を巡ってみることにしました。
気になっていた「ぐるっとパス2024」を購入したので、
その対象館が中心となります。
第18回:お札と切手の博物館
国立印刷局が運営する博物館。
ぐるっとパスの対象施設ではないですが、
常時入館無料 です。
12/22まで、特別展示
「お札の誕生祭 新しいお札がやってきた!」
が実施されています。
ただ、常設展示にも新紙幣が展示されているので、
どこからが特別展示なのかはあまり意識しなかったです。
最寄り駅は王子駅。
駅を出ると、渋沢栄一をモデルにした
キャラクターたちがお出迎え。
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王子周辺は渋沢栄一推しが強いです。
2021年の大河ドラマ『青天を衝け』から
新一万円札の顔と、近年注目を集めている人物
であることは間違いないですね。
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駅の東側、厳重警備の国立印刷局入口を通り過ぎると、
博物館の入口です。
夏休み期間ということもあり、
小学生くらいの家族連れで賑わっていました。
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発行までのカウントダウン展示は、
「あと 000日」になっていました。
撤去はしないのね。
お札(常設展示・特別展示)
1Fは、現行紙幣の技術についての展示がメインです。
お札に使われている様々な偽造防止技術を、
ブラックライトやマイクロスコープなどを使って
見ることができます。
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偽造防止技術の代表といえば、
「すかし」ではないでしょうか。
子どものころに、なんか不思議な魅力を感じて、
飽きずに眺めていた記憶があります。
ちゃんと考えたことがなかったんですが、
紙の厚みを変えることで明暗をつけるんですね。
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明治時代中期には、精巧な「すかし」
が用いられたお札が登場しています。
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「すかし」の展示では、
足元のスイッチを押すとライトが点く仕組み。
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他にも、印刷技術や素材の違いを
実際にさわって確かめることができる展示もあります。
見るだけでなく身体を使わせることで、
子どもが楽しみながら学べるように、
といった意図を感じました。
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新紙幣の原図も展示されています。
原図は、デジタルではなく、
筆や色鉛筆で描くんですね。
2F に上がると、お札の歴史と、
現在の世界のお札が展示されています。
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日本最古のお札、山田葉書。
伊勢神宮の鳥居前町・山田で発行されました。
最古のお札は、幕府や藩などの権力組織ではなく、
民間による発行だったんですね。
商店街でのみ使える金券みたいなものか。
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諸藩が発行した藩札も、お札の一種。
商業の発展に伴い、
幕府が発行する貨幣が不足したことも、
藩札流通の背景のひとつでした。
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中央政府ではなく藩が発行するといっても、
そのクオリティは一定以上。
色付きの紙を用いたり、
「すかし」や隠し文字を使ったりして、
偽造対策もしていたそうです。
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明治初期、各所の為替会社(bank)が
お札を発行していました。
東京為替会社と大阪為替会社では、
同じ金額でも紙面が異なるわけです。
なんか、現代の「◯◯ペイ」乱立みたいな状況ですね。
その後、お札の発行元は、
国立銀行を経て日本銀行に集約されていきました。
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5円札の政府紙幣。
貨幣と交換するための証書としての銀行券(兌換紙幣)と、
財政補填のために政府が発行する政府紙幣(不換紙幣)があった、
というのは初耳でした。
ちなみに、肖像は神功皇后ですが、
デザインしたイタリア人画家・キヨッソーネが
西洋風にしちゃったそうです。
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証紙貼付券。
右上に証紙が貼られています。
戦後のハイパーインフレに対する預金封鎖のため、
新紙幣の発行を計画したものの、
製造が間に合わなかったので
現行紙幣に証紙を貼って使っていたそうです。
戦後のドタバタを感じさせるお札です。
間に合わせ感がすごい。
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時代が飛びますが、
日本銀行から贈呈された新紙幣。
3枚セットで贈呈されているのは、
ここと貨幣博物館(日本橋) と金融資料館(小樽) の
3か所だけです。
ちなみに、本館より先に訪れていた新宿区歴史博物館にて、
津田梅子の AA000002AA を見ていました。
(写真は撮っていなかった…)
新紙幣は関係各所に贈呈されていますが、
津田梅子(5枚)は、渋沢(8枚)・北里(10枚)に比べて
なぜか排出が絞られています。
貨幣博物館に行ければ、
コンプリートにかなり近づきます…!
続いて、世界の紙幣。
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アメリカ独立戦争時のお札。
もともとは各植民地それぞれの
お札が使われていましたが、
独立政府が統一された「大陸紙幣」を発行しました。
同じお札を使っていることが、
団結の象徴でもあったのかも。
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世界のおもしろお札コーナー。
プラスチック(ポリマー) を素材にしたお札は
1F にも展示されていましたが、
布で作ってみたり、金箔を貼ってみたり…
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ハイパーインフレで知られる、
ジンバブエの100兆ドル札も展示されていました。
不発行ながら、隣の10垓ベンゴは
もっとクレイジーですね。
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後ろ髪にデビルが見えると指摘され、
修正を喰らったカナダ 2ドル札。
税金の無駄遣いとしか思えないですが…
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皆さんも、新紙幣にデビルが
隠されていないか探してみよう!
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世界中の現行紙幣が
ケースにびっしりと展示されています。
日本やアメリカのお札は
額面ごとに違う人の肖像が使われますが、
中国やイギリスのお札では全額面で同じ人の肖像でした。
王族や指導者などの「絶対的な存在」が
いるかどうかによるんでしょうかね。
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アジア諸国のお札ですが、
額面を表す文字に注目してください。
1とか 5とかが、それぞれの国の数字で書かれています。
我々が普段使っているアラビア数字以外にも、
数字を表す文字はたくさんあることに気づかされます。
それでいうと、日本の漢数字・大字も同様ですね。
漢字文化圏の人ならともかく、
西洋諸国から見ればなんのこっちゃな記号でしょう。
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ちなみに、今回の新紙幣で
アラビア数字での表記が大きくなり、
グローバル化にも対応したとのことです。
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四角に切り取られているせいか、
ちょっと身分証みたいなブルンジのお札。
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複数人を並べた結果、
映画のポスターみたいに見えてしまったレソトのお札。
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東カリブ通貨同盟のお札。
カリブ海の加盟国家で利用できる共通通貨で、
EUにおけるユーロみたいなものですね。
ユーロ以外にもこういった共通通貨は
いくつか存在していることを知りました。
お札や貨幣を発行するだけでも
かなりの管理コストがかかることが想定されるので、
近隣の複数の国で共通通貨を使うのは
理に適っているように感じます。
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スコットランド銀行のお札。
調べてみたところ、イギリスでは、
中央銀行であるイングランド銀行だけでなく、
スコットランドと北アイルランドの銀行にも
お札を発行する権利があるそうです。
さらに、各銀行によって、
発行する額面やデザインが異なっているとのこと。
イギリスが「連合王国」であることを
思い出させてくれますね。
切手(常設展示)
切手の展示スペースは、お札に比べて狭め。
新紙幣が流通し始めたタイミングもありますが、
メインコンテンツはお札、という印象が強かったです。
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世界最初の切手。
切手の形は独特で、切手長方形と呼ばれています。
なぜこの形になったのか気になります。
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既存の切手の上に追加で印刷した、
戦時中の寄付金つき切手。
戦費捻出のため、切手を買うときに
寄付金も払わせる仕組みです。
戦後は、行事に合わせて記念切手を発行し、
切手収集趣味が広まりました。
切手収集趣味を普及させる目的は、
国の財源確保のためだった!?
アイデアの限界に挑戦する切手業界。
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タラの皮を貼ってみたり、
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パンダの毛並みを表現したり、
(大人のパンダはゴワゴワらしいですが)
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マスクを切手にしてみたり、なんでもありです。
実用性よりも、話題性重視でバズらせて、
コレクション欲を煽り立てているように映りました。
収集する系の趣味は、今の自分には不要だなー。
その他写真
JR の線路を越えて西に行くと、
ステキなリバーサイド空間・音無親水公園が表れました。
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真ん中を流れているのが音無川。
もう少し先では、川が分岐する箇所が見えました。
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奥から手前に石神井川が流れており、
右の音無川に分岐しています。
石神井川は 2本のトンネルで飛鳥山・王子駅南側を潜って、
王子駅の東側でまた姿を現します。
音無川は、親水公園から王子駅北側を潜り、
駅の東側で石神井川に合流しています。
親水公園の方がもともとの流路だったんだとか。
江戸の治水は奥が深いのです。
おわりに
お札は芸術品。
偽造防止のために最新の技術が使われており、
見れば見るほど発見があります。
キャッシュレス化が進んで
お札を見る機会が少なくなっている昨今ですが、
たまにはまじまじと見てみるのも楽しいですね。
また、お札を通して
世界の国々への興味が沸いてきました。
アラビア数字以外の数字や、
東カリブ通貨同盟など、
まだまだ知らないことがたくさんあります。
興味の枠を広げてくれる展示が目白押しで、
子どもの自由研究にも
ぴったりな博物館だと思いました。
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