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AIを活用した特許調査・分析の考え方と留意点

本記事は情報機構「特許調査へのAI導入と業務効率化および特許情報の有効活用方法」(2022年9月)に寄稿した論考です。

日本で初めてAIを用いた特許調査ツールである「Lit i View PATENT EXPLORER」(UBIC、現在FRONTEO)1)が登場したのは2015年秋であった。それから7年が経過して、現在は様々なAIを利用した特許調査ツールが各社からリリースされていると同時に、日本特許庁でもAIを活用した先行技術調査や技術動向分析の分類展開への検討を進めている。

2000年ごろに登場した概念検索(セマンティック検索)と同様に、AI利用ツールが登場した当初は、AI特許調査ツールが普及すれば「特許調査・分析業務はなくなるのではないか」という過剰な期待もあったが、現在はAIツールにそこまで求めることが現実的ではないと考えている方が大半を占めているのではなかろうか。

本節では日本でリリースされているAIを利用した特許調査ツールを俯瞰し、タイプ別に整理するとともに、AIを活用とした特許調査・分析の考え方と留意点について述べる。

なお、本節において「AIを利用したツール」とは、ツールベンダー各社がAI利用と謳っているか否かを基準にしている。また、知財業務・特許情報と人工知能に関する基礎的な事項については解説していないため、過去の論考2)-4)を参照されたい。

1.AIを利用した特許調査・分析ツール

2010年代はじめから始まった第3次人工知能ブームの中核技術はディープラーニング・深層学習であり、そのきっかけは2012年カナダ・トロント大学のジェフリー・ヒントン教授の画像認識コンテンテストILSVRC5)における成果であった。

上述の通り、特許情報業務への人工知能の適用という点では、2015年秋の特許情報フェア&コンファレンスにおいて、FRONTEO(当時UBIC)が発表した人工知能を搭載した特許調査・分析ツール「Lit i View PATENT EXPLORER」がブームの火付け役といって良いである。

執筆時点で著者が把握しているAIを利用した主要な国内ベンダーの特許情報調査・分析ツールは以下の表1の通りである。

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