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神民の、神民による、神民のための信仰

 ここに記す法身仏教の世界観は、これまでにも繰り返し述べてきている通り、宗派の垣根を超えて日本仏教の根底に潜在的に息づくものです。極力平易な言葉で、またあえて日本語になっているポピュラーな仏教用語を伏せることで、葬式仏教と揶揄される現代人の仏教に対する忌避感を払拭することを目指し記しました。
 こまかな名詞を置き換えれば、全ての伝統仏教宗派(一部の排他的な教団を除く)の教義に矛盾なく置き換えられ、そして神道との両立、神仏習合の復活にも寄与する形になっています。
 是非この教義を固定観念を取り払って吟味いただき、大乗仏教の世界観を基礎にして世界の神、日本古来の神、そして近しい先祖たちの神霊をも組み込んだ壮大な神々の曼荼羅を築き上げ、奉斎を続けてきた「神の民」、日本人ならではの宗教観の明文化の一助となっていけば幸甚です。


1、この世界の成り立ち

 全知全能の最高神、マハーヴァイローチャナは、その体内に、私たちの今住むこの現世界(ジャンブー・ドヴィーパ)、天界(トゥシータ)、そして浄土界(スカーヴァティー)の三つの世界を包み込んでおり、全ての魂はこれら三界をこの順に生まれ変わりながら永遠の修行を続ける。現世界の魂を衆生 サマンタバドラ、天界の魂を精霊 マイトレーヤ、そして浄土界の魂を神霊 アミターユスと呼ぶ。マハーヴァイローチャナは全ての魂をその体内に宿しているのと同時に、全ての魂はその神の一部を構成するものであるから、その魂ひとつひとつが神であり、さらにその魂を構成する毛1本、血1滴も神に他ならないのである。


2、現世界の人類最高の教え

  神が包み込むこの世界の成り立ち、そしてその中でひとつひとつの魂が果たすべき務めが記された現世界のサマンサバドラを導く最高の教えが、「アヴァタンサカ・スートラ」である。この世界の全てを包む最高神の存在を説くペルシアの教えと、魂と魂の支え合いの心の大切さを説くインドの教えとがシルクロードで交わり、タクラマカン砂漠の厳しい自然の中にあって、全ての生命を讃美するこの至高の経典が生み出されたのである。


3、生死を超え全ての魂が永遠に続ける修行

 私たちは神になるために修行するのではない。私たちはすでに神だからこそ、永遠の修行を続けなければならないのだ。マハーヴァイローチャナの体内に生成された新たな魂は、まずこの現世界に肉体を与えられ、サマンタバドラとして「欲念」を活力にして魂と魂の絆の創出に励む。「死」と呼ばれる肉体からの解放を得た魂は、その49日後に天界へと往生し、精霊マイトレーヤとして次に欲念の浄化に励み「大欲」の獲得を目指す。49年の修行を果たした魂は、ついに3つめの世界、浄土界へと往生し、神霊アミターユスとして清浄な「大欲」を活力に三界をまたいで魂と魂の絆の護持に励む。三界を自由に往来できるアミターユスは、三十三の姿に変じるアヴァローキテーシュヴァラとして他界に赴き有縁の魂を護持する。絆の創出、欲念の浄化、そして絆の護持、これら3つの活動のいずれもが、全ての魂、全ての神々が永遠に果たすべき修行なのである。


4、サマンタバドラとアミターユスの絆

 私たちの魂が生み出される前から欲念を浄化する修行を続け、ついに大欲の獲得を果たしているアミターユスたちは、常に現世界の私たちサマンタバドラに救済の手を差し伸べて下さっている。我が国と縁のあるアミターユスたちは、我々日本人の「大御祖神」たる天照大御神と一体となって、浄土界から常に見守って下さっている。天照大御神は太古の昔、私たちにつながる祖先たちの魂をはじめて我が国に降臨させた、生命の創出を司る神である。アミターユスたちはこの現世界を離れて長い年月が経過しているため、現代の言語ではなくその国に伝わる古式の作法を以て交信することが望ましい。我が国におけるこの古式の作法とは「神道」を指す。有縁の神々、アミターユスたちとの交信は、天照大御神を通じ神道の儀礼に則って行う。子の通過儀礼を天照大御神の神前で執り行うことで、神霊たちの絆の護持の働きかけが、今の現世界でも引き続き受け継がれていることを奉告する。


5、サマンタバドラとマイトレーヤの絆

 衆生サマンタバドラが現世界において負うべき修行には、衆生同士の利他に加えて、神霊アミターユスの祭祀、そして精霊マイトレーヤの「供養」も含まれる。マイトレーヤたちは現世界を離れて間がないため、その時代のその国の人間の言語での交信が可能であり、自分なりの言葉で修行を支える。この修行の後押しを「供養」と呼ぶ。
 魂が肉体から解放されても天界での修行中は性根が遺骨に残るので、交信は墓から行うのが最も確実である。性根は位牌にも移すことができるが強さはやはり遺骨が勝るので、自宅からの交信に際しても墓を観想し、位牌は墓に向かって坐する形になるようお祀りする。浄土界へ往生した魂は自由に三界を往来できるため、魂の依り代としての墓や位牌はもはや必要ない。


6、サマンタバドラとマハーヴァイローチャナの絆

 私たちはひとりひとりが神であるが、無数の神によって成り立つこの世界だからこそいかなる神も他の神からの施し、救済を必要とする時が必ずやってくる。現世界のサマンタバドラは無数のアミターユスたちに護られ魂の絆の創出に励むわけであるが、最強の救済の力は、もちろん我々全ての魂の利他の相互作用の集合体である最高神マハーヴァイローチャナからもたらされる。人間同士でもその交信には数多の言語が存在するように、最高神との交信にもそのための特別な方法があり、心(観想)・身体(印契)・そして言葉(真言)を使ったその交信方法を説く教えが「ヴァジュラヤーナ」の教えである。ただこのヴァジュラヤーナの修法の深奥は極めて難解であり、在家信者が単独で理解し使いこなそうとすることは不可能であるどころか危険である。最高神との交信は救世主、ヴァイローチャナヴァジュラより師資相承の特別の修練を重ねている僧侶と共に行うことが求められる。

 同時に自らもその一部に含まれるマハーヴァイローチャナとの交信は、即ち自分自身との交信に他ならず、救済を求めるならば引き換えに最大限の内省を求められることとなる。内省の果てにマハーヴァイローチャナを心の眼に映そうとしたとき、最高神が我々に変化をもたらそうとする活力が神格として独立しアチャラナータという名の神の姿で認識されるのである。密教修法によるアチャラナータとの交信を通じ、内省によって自らの運命を変える力が最大限に増幅されるのだ。


7、神国の救世主、天界の救世主、ヴァイローチャナヴァジュラ

 ヴァイローチャナヴァジュラは、天照大御神をはじめとする強力なアミターユスたちに護られた我が国に生を受け、そして全知全能の神と交信するヴァジュラヤーナの修法を完成させて、一代にしてこの極東の島国に確固たる信仰に支えられた人類史上最高の神の国の礎を築いた。ヴァイローチャナヴァジュラが誕生するまでの我が国の王権は、世俗の垢にまみれ骨肉の争いを繰り返して、幾度も王権交代を繰り返していた。ヴァイローチャナヴァジュラはこれを改め、天皇の万世一系の血脈は、政治的権力によってではなく、独自の神仏習合のヴァジュラヤーナの守護者としての神聖性によってこそ保ちうることを説いた。我が国の神の国としての至高性、その礎を築いたヴァイローチャナヴァジュラの救世主としての至高性、そしてそのヴァイローチャナヴァジュラが確立した宗教の至高性は、この国の元首の血脈が、政治的経済的権力を喪失してもなお、その後千二百年の長きにわたり守り続けられてきたという特異な事実が何より証明しているのである。

 そして現世界での務めを全うしたヴァイローチャナヴァジュラは、次は天界に身をとどめ、今も現世界の我が国から旅立つ魂の浄化の修行を支え続けて下さっている。五六億七千万年後、全ての魂が浄土界への往生を果たした時、マハーヴァイローチャナの中の三つの世界は融合してひとつの浄土となり、ヴァイローチャナヴァジュラは自らが浄土界へと導いた全ての魂との再会を果たすのだ。



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