【イベントレポート】経営課題を解決するための新たな鍵!地方ならではの複業人材活用術
この記事は、2023年8月24日にAnother worksと富山のインキュベーション施設「HATCH」が共催したイベント「経営課題を解決するための新たな鍵!地方ならではの複業人材活用術」のレポート記事です。
今回のイベントでは、2名の方に登壇いただきました。HATCHアドバイザーの伊藤さんは、実際に採用側で複業人材を活用しているご経験や、自身が地方企業の複業人材として働かれていたご経験があります。両者の目線から、そもそもなぜ今地方企業は複業人材を活用すべきなのか、についてお話しいただきました。
弊社の執行役員 兼 営業部長である逸見からは、職種別の採用成功事例や、複業人材を活用する際の懸念点と解決策をお伝えしました。
■登壇者
■ファシリテーター
なぜ、いま地方企業が複業人材を活用すべきなのか?
徳田:まずは伊藤さんから、なぜ地方企業が複業人材を活用すべきなのかについて、お話しいただきます。よろしくお願いいたします。
地方企業が抱える3つの大きな課題
伊藤:地方企業は今、大きく3つの課題を抱えており、意識的に競争力を上げなければならない状況に置かれています。
①少子高齢化による人口が減少、右肩上がりのマーケットではない
人口増加していた高度経済成長期では、ものを作って販売すれば、マーケットが自然と拡大していき、マーケットの拡大とともに事業も拡大していきました。現在は人口が減少していることから、右肩上がりのマーケットではないという点が前提としてあります。
②大手企業や外資系企業が地方に進出
近年、大手小売企業や外資系スーパーなどが、地方に進出してきています。地方企業は、右肩上がりではないマーケットの中で、地方進出してくる企業に対し、競争力をもって戦わなければならないという現状におかれているのです。
③経営者はかつての成功体験を捨て、競争力の強化をする必要あり
地方企業の経営者は、高度経済成長期の右肩上がりのマーケットで戦っていた際の、成功哲学を持っています。そのため、その時代の勝ちパターンを今も続けていれば勝てると信じている方が多いように感じます。この成功体験を捨てて、新たな手法で②であげたような企業と戦わなければならないのです。
地方企業のジレンマ
伊藤:上記で解説したように、地方企業は競争力を更に強化する必要があります。そのためには優秀な人材を獲得する必要がありますが、採用が上手くいかない企業は多いです。その理由は3つあります。
①東京一極集中のため地方での優秀な人材獲得が困難
大学進学のタイミングで地方を出る人が多く、就職のタイミングで戻ってくる人はかなり少ないです。前提として、人材獲得が困難な状況に置かれています。
②優秀な人材を獲得したいが、既存の賃金制度の枠内でしか採用ができない
首都圏と地方では、給料の水準がかなり違います。物価も異なるので単純な比較はできませんが、給料だけを見ると首都圏の方が高いので、優秀な人材は地方に集まりにくいです。そして地方企業は給料を上げようと試みますが、そのためには過去に採用した方の給料も全て引き上げ、既存の賃金体系を変える必要があるため、かなり難しいのです。
③首都圏の人材からすると窮屈な企業カルチャー
時間外の朝礼、サービス残業、髪型、服装規定など、首都圏の人材からすると窮屈だと感じるカルチャーが地方企業にはあります。
この3つの理由から、地方企業が優秀な正社員を採用することはかなり難しいのです。
複業人材のメリットと付き合い方
伊藤:地方企業がなぜ優秀な正社員を採用することが困難なのか、という点について説明してきましたが、そのような地方企業が活用すべきなのが複業人材です。地方企業は、地方のマーケットや成功例しか知らないことが多いです。日本各地の成功例を知っている複業人材というプロフェッショナルに頼ることは、競争力を高めたい、変革したいという地方企業にとっての近道なのではないでしょうか。
私は主に3つのメリットがあると考えます。
①特定の業務のプロフェッショナル人材と仕事ができる
②業務委託なので既存の賃金制度による制約がない
③「違うな」と思えば、契約を解除できる
しかし、一歩間違えればトラブルになるケースもあるので、付き合い方が重要になってきます。私は複業人材を採用する前に、下記の3つを検討すべきだと考えます。
・業務範囲と業務対価を明確にすること
稼働前にどの業務をお願いしたいのかや、ゴールは明確にすり合わせる必要があります。
・成果に応じたボーナス報酬を検討すること
業務委託の対価を定額で払うか、定額+成果が上がったら何割かをボーナス報酬として支 払うことが大事です。コストカットをするために雇うという感覚では、複業人材を採用し ても上手くいかないでしょう。
・能力を見極めるため、小さめのプロジェクトを1つ行ってみること
お互い人間なので、相性や仕事の進め方が合わないこともあります。そのため、まずは小 さなプロジェクトに参画してもらい、スモールスタートすると良いでしょう。
手を抜きがち!企業カルチャーのすり合わせが大事
正社員を採用した際には必ずカルチャーのすり合わせを行うと思いますが、複業人材も同様です。迎え入れる際には、会社の歴史や経営課題を説明し、役員や管理職とのあいさつや懇親の機会を設けることはかなり有効です。
企業のカルチャーを複業人材側は学ぶ姿勢が必要で、企業側は教える姿勢が必要です。やはり相性や仕事の進め方が合わないと、複業人材の採用は失敗に終わってしまいます。
また、複業人材にプロジェクトを丸投げするケースをよく聞きますが、何もうまくいかないのでやめましょう。必ず定例MTGを開催し、コミュニケーションをとり、二人三脚で進めることが大事です。そうすることで、受け入れている社員のスキルアップにもつながると思います。
前提として、簡単に成果は出ない
地方企業が複業人材を活用しても、前提として簡単に成果は出ません。
なぜかというと、受け入れ体制の整備や、データの受け渡しルール、NDAの締結など、越えなければならない壁が多いからです。
そして、社内の経営課題の把握にも時間がかかります。経営課題は何か、その中でも優先順位は何なのか、複業人材に何をお願いすべきなのか、まで考える必要があるのです。
最後に複業人材の活用を検討している地方企業の皆様にお伝えしたいのは、複業人材は「先生」でも「下請業者」でもない、「チームメンバー」であるということです。
教えを乞うだけの外部の「先生」でもなければ、「部下」や「下請業者」のようなポジションでもありません。「チームメンバー」として迎え入れることで複業人材の能力が発揮されます。
徳田:伊藤さん、ありがとうございました。私もHATCHに複業人材として関わっており、お話の中でも特にチームメンバーとして迎え入れるという点に共感しました。複業人材側からすると、巻き込んでくれた方がコミットできる点もあるので、複業人材を迎え入れる際には大事な要素です。続いては、逸見さんから具体的な活用事例を伺いたいと思います。
地方企業の複業人材活用事例
逸見:複業クラウドを導入している地方企業の事例をお伝えします。複業クラウドでは全職種での採用が可能なので、基本的にお困りごとは何でも解決することができます。今回は「新規事業」「営業」「採用」という3つの領域に絞って事例をご紹介します。
【新規事業】正社員と複業人材のハイブリッド組織で推進
逸見:A社では、専門的な知識とリソースが無いことから、新規事業を前に進めることができていないことが課題でした。
具体的には
・新サービスである研修事業の立ち上げ時に、研修領域に対する深い知識がない
・新規事業へ社内メンバーを大人数移動させることは、リスクとコストが高く不可能
というお悩みを抱えていました。
そこでまずは「プロダクト開発」「新規事業企画」の2つのポジションにおいて5名採用されました。新規事業企画においては、研修事業のスペシャリストを採用し、業界知識の共有はもちろん、事業の壁打ちをお願いしていました。
そして新規事業がグロースしていくにあたり、新たに「マーケター」「コンテンツ制作」「人材開発」の3つのポジションにおいて5名の方を採用しました。
【営業】地方在住の人材を採用し、地方企業開拓を強化
逸見:B社は東京の企業様にはなりますが、他の地域への販路拡大に課題を抱えていました。
具体的には
・業界情報が東京に一極集中し、地元企業の情報・地域格差が発生しており拡販に苦戦
・地方企業の橋渡し役がいない
というお悩みを抱えていました。
そこで宮城県、福岡県、兵庫県に在住する営業の人材を複業で採用しました。全国的に営業を強化する中で、やはり商談の場は対面を好まれる方がまだまだ多くいらっしゃいます。そこで、営業を強化したい地域に住んでいる複業人材を採用し、橋渡し役として採用されました。
アポイント獲得で複業人材を採用される企業の場合、成果報酬型で依頼するケースが多くあります。1社紹介につき1万円~3万円という形です。しかし、これはマネジメント工数がかかってしまう契約になります。成果報酬型の場合、自分が動かなければお金も発生しないので、責任感や当事者意識がかなり薄れてしまうのです。
一番理想なのは、固定で月にいくらか支払うケースです。例えば月に10万円支払う代わりに5件アポイントをとってきてくださいという契約です。そうすることで、複業人材側はお金が発生する前提で、5件繋ぐために戦略を立てて動いてくれるのです。
【人事】社長がやっていた採用業務を複業人材にお任せ
逸見:C社はなかなか優秀な人材が採用できないという課題を抱えていました。
具体的には、
・経営陣候補を採用したいが、優秀な人材を採用するノウハウが無い
・採用は社長が専任しており、経営業務に集中できていない
というお悩みを抱えていました。
そこで複業クラウドを通して、人事のスペシャリストを2名採用しました。人事としての経験年数が10年以上、新卒採用や中途採用、フリーランスや業務委託の採用も幅広く経験を持っている方々です。
そして、2名の複業人材が加わったことで、社長は最終面接だけを見るという、下記の図のような人事体制に変更することができました。
ここでお伝えしたい事は、転職市場にはなかなかいないような優秀な人材でも、複業という働き方であれば関わってくれることが多いということです。即戦力のスペシャリストをすぐに採用できるという点が、複業採用の魅力です。
よくある複業採用の懸念3つと解決策
逸見:ここまでで、複業採用の魅力は伝わったとは思いますが、やはり実際に採用するとなると懸念となる部分は多くあるかとおもいます。今回はよくある3つの懸念と、それをどう解決したらよいのかという点をお伝えします。
懸念①何から依頼すればよいのかわからない
優秀な複業人材を採用できたとしても、何から依頼すればよいのか分からないという声はよくいただきます。そんな時、まずは要件定義を行い、タスクの切り出しを行ってください。オススメなのは、マニュアルをWEB上で複業人材も見ることができる状態にすることです。
マニュアルを作成するときに重要な点は、業務フローだけではなく、タスクごとに分けて記載することです。例えば商談であれば、事前準備をしたらこのページに記録する、商談ではこの資料をもとに企業ごとにカスタマイズする、等です。
このように業務を細分化し、タスクを切り出すことで、依頼がしやすくなります。また、1つ1つのタスクに何分かかるか落とし込むことができるので「このタスクをお願いして1時間もかかっているのおかしいよね」というように複業人材の成果も図りやすくなります。
懸念②リモートだから、きちんと稼働しているのか不安
リモートの壁を感じる企業様はまだまだ多くいらっしゃいます。複業人材は基本的にはリモートの稼働になるため、日報の提出をマストにすることがオススメです。必ず稼働日にコミュニケーションを最低でも1回とる必要がでてくるので、稼働しているのかどうかという不安が解消されます。
懸念③マネジメント方法が分からない
複業人材を採用するまでがゴールではありません。採用後にきちんとワークしてもらうことがゴールです。そのためには、受け入れ体制をきちんと構築する必要があります。オススメしたいのは、定例MTGを設けることです。定例MTGでは、依頼している仕事に対しての評価をきちんと伝えましょう。
複業人材の方は、いまどのような評価を受けているのかが分かりません。その評価が分からないと、複数の業務を請け負う中での優先順位が下がってしまう場合もあります。
そのため、依頼している仕事のアウトプットに満足しているのか、まだまだ頑張ってほしいのか、等を定例ミーティングで伝えることが大切です。
いかがでしたでしょうか?
複業人材の活用を視野に入れているが、何から始めたらよいかわからない企業様のご参考になれば幸いです。まずはご相談からでも可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
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