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起業・スタートアップの現在地~メンターや審査員を務める中でみえた現状と課題~

株式会社Another works代表 / 日経COMEMO KOLの大林です。複業したい個人と企業・自治体を繋ぐ総合型複業マッチングプラットフォーム「複業クラウド」を運営しております。

今回のテーマは「起業家・スタートアップ」。東京都NEXs Tokyo大阪産業局で起業家メンターを担当したり、ビジネスコンテストで審査員を務めさせていただく中で感じた課題やこれからについてお話していきます。


■ 日本のスタートアップにおける現状と課題

①海外と比較し開業率が低い
日本の開業率は2020年時点で5%、イギリス(12%)やアメリカ(9%)と比較し低割合となっています。日経電子版によれば起業経験を持つ身近な知人が少なく、ロールモデルを想像しにくいことが一因とされています。(引用/参照:日経電子版

②低い起業関心割合
日本政策金融公庫によれば、起業関心層は全体の11.7%に留まると同時に、起業志望者の中で8割がタイミングが決まっていないと回答。関心層が少ないと同時に、関心を持っている人でも具体的な起業イメージが湧いていないことが分かります。(引用/参照:日本政策金融公庫「2023年度起業と起業意識に関する調査」)

また、東京商工会議所の調査によれば学生時代に創業を考え始めたのは約1割程度だといい、今後起業・創業を増やすうえで、学生時代からのアントレプレナーシップ教育(起業家精神)の強化が欠かせません。(引用/参照:東京商工会議所「創業・スタートアップ実態調査」)

③スタートアップの成長に必要なメンター/アクセラレータの不在
内閣府の報告書では、日本のスタートアップ・エコシステムの課題の1つに、海外と比較してメンター(指導者)やアクセラレータ(支援プログラム)が不足している点を挙げています。他にも不十分な起業家教育を課題に挙げ成長を支える基盤構築の重要性を示しています。(引用/参照:内閣府「イノベーション・エコシステム専門調査会」)


■ 審査員やメンターをする中での気づき

①リアルな情報が落ちていない / 情報格差
近年スタートアップ強化の動きに呼応して、多くの本やネット記事が出ていますが、汎用的なノウハウは得られても最も知りたいリアルは書かれていない、もしくは、文字では完全に理解し、読み解くことができないケースが多くあります。

メンターをする中で多くいただく質問である、事業計画の作り方や10年後のビジョンの描き方、VCとのコミュニケーション方法、あらゆるリスクを想定した30名,50名の組織図の描き方などはどこにも落ちていないノウハウです。

特に地方では周りに先輩起業家・起業を志す同士が少なく、少ない情報がさらに絞られ、情報格差が広がっていきます。リモートワークが当たり前になった現在も都心の起業社数が未だ多い要因は、これらの差による1歩目を踏み出すハードルが高くなってしう傾向にあると痛感しています。

②経営陣が見つからない 
経営において重要な仲間集め。ただでさえ人口の自然減に伴う労働力人口の減少の減少がスタートアップに重くのしかかる中、さらに重要な経営メンバー(共同創業者、CXOメンバー)が見つからない、誰を経営メンバーとして迎えるべきか分からないという相談をいただくことも多くあります。

1つのミスマッチが会社を大きく揺るがす経営メンバーの採用/任命、私は100%の純度でその人を信じることができるか、これに尽きると思います。メンバーが増えるにつれて創業メンバー権限譲渡し、経営者は背中を任せ続ける必要があります。スキルは(圧倒的な努力を前提として)後天的に身につけることができます。誰よりも実践者であり、心から信じたいという人と企業運命を共にすべきです。


③起業へのリスク思考が先行している
起業において現在、登記した後の初期プロダクトのリリースやサービスグロースやイグジット戦略より、起業するか否かという1歩目の段階で躓くケースが想定以上に多いことが分かりました。特に学生の起業へのリスク思考は根深く、学生起業への戸惑いや不安による諦め、起業と就職や進学と天秤にかけて後者を選択するケースが多いと感じています。

実際、日本政策公庫の調査によれば、起業関心層がまだ起業していない理由の3割以上が「失敗したときのリスクが大きい」からだと回答したといいます。(「自己資金が不足している」が最も多く、次いで2番目に多い)リスクの内容は「安定した収入を失うこと」「家族に迷惑をかけること」など複数が示されていますが、VUCAの時代において会社に勤めていても急な倒産や事業不振による整理解雇などのリスクを抱えることになります。「起業はリスクが大きい」は膨らみすぎた幻想であると考えます。(引用/参照:日本政策金融公庫「2023年度起業と起業意識に関する調査」)


■ 注目されている動きや考え方

│ 東京都 10x10x10のイノベーションビジョン

東京都が打ち出すスタートアップと都庁の協働を目指す「未来を切り拓く10x10x10のイノベーションビジョン」

東京発のユニコーン数を5年で10倍にするという「グローバルx10」、起業をしやすい環境を整え、東京の起業数を5年で10倍にするという「裾野拡大x10」、イノベーションを生み出すスタートアップと行政が連携できるよう、東京都の協働実践数を5年で10倍にするという「官民協働x10」をまとめて「10x10x10」と定め、日本のスタートアップを東京から盛り上げようと動き出しています。


│ エフェクチュエーションという起業手法

米国発の「エフェクチュエーション」と呼ばれる起業手法が話題になっています。しっかりと準備~市場を見定め、勝ち筋が見えてから起業するのではなく、すぐに実践できるスキルを活かしつつ、走りながらアップデートしていく方法です。日経電子版にもあるとおり、より早く起業することを促すこの考えは、スタートアップの裾野拡大に効果が見込まれるでしょう。

私も個人的には起業前の武装に時間をかけるより早く土俵に立つことが大切だと考えています。起業して試行と思考を爆速で繰り返しながら必要なものを身に付ける方が実践的です。


■ 未来の起業家輩出への想い

創業当初、私も情報不足に苦しみました。そんなとき助けてくれたのが先輩起業家です。お金も取らず、知見・経験を惜しみなく提供してくださったお陰で今があると思っています。私も、日々の発信はもちろん、これから起業を志す未来の起業家の皆さんへ、惜しみなく情報を提供し続けていきます。

起業には年齢制限はありません。未成年でも親権者の同意があれば起業することができます。起業は、実践しながら学ぶことでしか成長はありません。実際、起業前の座学はそこまで役に立たず、起業準備と並行してインプットをしながら、日々アウトプットしていく、このサイクルを高速で回していくことが重要です。起業のタイミングで迷ったら「次の大安で」登記する、圧倒的なスピード感が大切です。


■ 起業家支援の取り組み まとめ

東京都『NEXs Tokyo』 公式メンター

大阪産業局『スタートアップ・イニシャルプログラムOSAKA』 メンター

大分県ビジネスチャレンジコンテスト「OITAゼロイチ」 審査員

おおいた学生ビジネスプランコンテスト 基調講演・審査員

STATION Ai(PRE-STATION Ai)Perks・個別相談

J-Startup KYUSHU サポーターズ

学校での起業家講演・起業志望学生の1on1支援
岩田学園中学校・高等学校、トキワ松学園中学校・高等学校 他



大林 尚朝 / NAOTOMO OBAYASHI
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