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大手企業の複業解禁のこれから~ファクトから考える働き方の未来~ 

株式会社Another works代表の大林です。複業したい個人と企業・自治体を繋ぐ総合型複業マッチングプラットフォーム「複業クラウド」を運営しております。

今回は、「大手企業の複業解禁のこれから」をデータや最新動向と共に紐解いていきます。

「ファクトから考える働き方の未来」シリーズ
トレンドから文化への転換期を迎えている「複業・働き方」の未来について、国の調査やリリース、世間の動向を1,500社以上の複業登用・推進を支援するプラットフォーマーならではの視点で紐解いていきます。

大手企業、複業(副業)解禁の現在地

大手企業における複業(副業)解禁の現在をデータから見ていきます。

経団連の調査によれば、常用雇用者5,000名以上の企業において自社の社員が社外で副業・兼業することを「認めている」「認める予定」と答えた企業が8割を超えた(経団連、2022)といいます。また、常用雇用者別にみても、5,000人以上が最も複業(副業)割合が高くなっており、常用労働者数が少ない企業と比較すると常用雇用者数が多い企業ほど複業(副業)が解禁されている傾向にあるといえます。

副業元年と呼ばれる2018年以来、徐々に増加していた大手企業の複業(副業)解禁に関する話題ですが、日経電子版をはじめとするメディアで特に注目されたのは新型コロナウイルスの感染拡大後である2021年~2022年にかけてです。リモートワークが選択肢になったことで個人の可処分時間が増加し、複業ニーズが増加したことはもちろん、AIなど新たなスキルの登場が大きく影響しています。企業は従業員のリスキリング促進の一環として複業(副業)解禁を進めたのです。

HR総研は、企業の人事責任者、担当者に対する「副業・兼業の推奨・容認の目的」についてのアンケート結果として「社員の経験やスキルの向上」が最多で60%であった(HR総研、2021)という調査データを出しています。また、企業規模別で見たとき、「社員の経験やスキルの向上」は大企業で77%となっており、中堅企業(45%)や、中小企業(57%)と比べて高い割合を示しているそうです。このデータからも大手企業の複業(副業)解禁は、従業員のリスキリング促進が狙いだといえるでしょう。

▽2021年、2022年の複業(副業)解禁ニュースはこちら

解禁企業は増えている一方で…

複業(副業)解禁が進む一方、課題となっているのは複業(副業)の実践率です。パーソル社の調査によれば、現在副業を実施していると回答した正社員は全体の7.0%に留まり、複業(副業)解禁率と比較し大きなギャップが生じている(パーソル総合研究所、2023)といいます。

このギャップは、「複業(副業)=お小遣い稼ぎ」という世間の強い印象が要因だと考えています。上司に「複業したい」と申し出ることが「お金を稼ぎたい」と同義に受け取られるリスクは、複業の実践を阻む見えない壁です。

しかし、複業は金銭報酬を得るための働き方に限るものではありません。経験したことのないスキルを得たり、今あるスキルのレベルアップを図ったり、未経験職種に挑戦したりするなど個人のリスキリングや新たなキャリア形成を促進する手段であり、企業もそれを狙って解禁しています。そこで、企業各社は従業員向けに「複業(副業)とは何か」「なぜ複業(副業)を解禁したのか」などを解説する説明会を開催、従業員の複業実践を促しています。

2022年に従業員の副業を解禁した日本郵政グループの取り組みを例に挙げます。日本郵政グループでは、単発ではなく一定期間プロジェクト的に課題解決に取り組む業務を推奨し、お小遣い稼ぎのためではなく、チームメンバーが持っていないスキルを習得したり、今あるスキルを活かして社会貢献するための「戦略的副業」を許可するとしています。

複業(副業)の実践率が大きな課題に
✓複業(副業)の本質的な目的やメリットが理解されていないが故に発生
✓リスキリング、キャリア形成のため、企業は従業員の複業実践をサポート

大手企業は今後「複業実践率」を開示していく

前述したように、現在の課題は複業(副業)の実践率であり、各社が従業員の複業実施をサポートできる体制を整えています。今後は、先進的に取り組む企業ほど複業(副業)実践率を開示し、企業価値向上へ繋げる動きが出てくると考えています。

現在、国や政府が見ている指標は複業(副業)解禁率です。2023年に厚生労働省が企業に対して、従業員に副業を認める条件などの公表を求める方針を示したように、「企業全体の何%が複業を解禁しているか」を重要視しています。

しかし、統計上では複業を解禁していない企業のほうが珍しい状態です。一定、複業(副業)解禁率における目標は達成に近づきつつあると言えるでしょう。そのため、10年以内に「複業実践率の開示」は企業価値を示す1つの重要経営データとなると予測します。複業解禁において実態と伴っていない企業が表面化していくため、企業としても企業価値を最大化し、優秀な人材獲得のために実施率を上げる企業努力が求められていくでしょう

複業未来予測2023」はこちら


大林 尚朝 / NAOTOMO OBAYASHI
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