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複業未来予測2030 ~3つのファクトから考える複業の未来~ 

株式会社Another works代表の大林です。複業したい個人と企業・自治体を繋ぐ総合型複業マッチングプラットフォーム「複業クラウド」を運営しております。

本noteでは、トレンドから文化への転換期を迎えている「複業」について1,000社以上の複業登用・推進を支援するプラットフォーマー目線で紐解いていきます。

▽2023年の複業重要トピックと2024年の予測はこちら

結論

結論から申し上げると、複業は2030年をもって正社員・非正規雇用(パート・アルバイト)などと並ぶ人材採用/キャリア形成の選択肢となると考えています。

具体的には、以下の3点がその状態を定義します。

  • 複業採用が企業倒産・人材難を解決する有効手段となる

  • 9割の企業が複業を解禁し、企業評価は従業員の複業実践率で図られる

  • 20-30代は、複業を前提(選択肢にある状態)にキャリア形成をする

ここからは、なぜ「複業は2030年に選択肢となる」のか、現状と3つのファクトから複業の未来について考えていきましょう。

複業(副業)の現在地


「複業を解禁している企業は多いが、複業実践者が少ない」

複業(副業)の現在をデータから見ていきます。

まず、複業(副業)解禁企業は増えています。経団連の調査によれば、常用雇用者5,000名以上の企業において自社の社員が社外で副業・兼業することを「認めている」「認める予定」と答えた企業が8割を超えた(経団連、2022)といいます。副業元年と呼ばれる2018年以来、モデル就業規則の改定、副業・兼業ガイドラインの制定、国や政府による複業(副業)解禁推奨により着実に複業(副業)解禁は進んでいるといえるでしょう。

複業(副業)解禁が進む一方、課題となっているのは複業(副業)の実践率です。パーソル社の調査によれば、現在副業を実施していると回答した正社員は全体の7.0%(パーソル総合研究所、2023)に留まり、上記で示した複業(副業)解禁率とは大きな乖離が生じています。このデータは、複業(副業)が解禁されたにも関わらず、何らかの理由で複業(副業)が実践されていない、実施することができていないことを如実に示しています。

では、なぜ複業(副業)の実践者が増えないのか。1つの要因を示すデータがあります。経団連の調査によれば、副業・兼業人材の受入を「認めている」「認める予定」と答えた企業統計は30.2%(経団連、2022)であるといいます。副業・兼業人材の受入を「認めている」と答えた企業に絞るとわずか16.4%に留まり、このデータは複業(副業)の受け皿が少ないことを示します。複業を希望したとしても複業ができる場所がない、機会がないことが複業実践率が上がらない1つの要因です。

複業(副業)の今をまとめると

  • 複業が禁止されている企業は実質少なくなってきている

  • 複業が解禁が進んでいるにも関わらず、複業実践者が少ない

  • 複業人材を受け入れる企業が少なく、複業機会は限定的

といえます。

10年以内に”複業が選択肢”になる3つの理由

ここまで複業(副業)の今をデータを基に分析してきました。この現状から私は、10年以内(2034年まで)には確実に”複業が選択肢”になると考えています。3つの根拠をお伝えします。

①深刻な人手不足、正社員だけでは企業存続は厳しい

1つ目の根拠は、留まることの知らない人口減少・労働力人口の減少による深刻な人手不足の蔓延化です。

総務省の人口推計によれば、出生率の低下により、日本の総人口は減り続けており、戦後の総人口は2008年にピークを迎え、2011年以降11年連続で自然減となっている(総務省、2023)といいます。2065年には総人口が9,000万人を下回るという厚生労働省の予測もでており、人口減少は加速の一途を辿るでしょう。

人手不足に陥る要因は、単なる人口減少が要因ではありません。人口減少による少子高齢化・労働力人口の減少が大きく起因します。令和4年版高齢社会白書によれば、2036年に65歳以上の高齢化率が33.3%となり、国民の3人に1人が65歳以上になる(内閣府、2022)といいます。また、2040年には1100万人の労働力が不足するとの予測もでており、これは現在の近畿地方の就業者数に匹敵する規模(リクルートワークス研究所、2023)だというのです。

これらのデータは近い将来企業の人手不足はより深刻化することを明確に示しており、既に影響は出始めています。帝国データバンクの全国企業倒産集計2023年度上半期報によれば、2023年度上半期の「人手不足倒産」は前年同期104.5%の増加であり、年度上半期ベースでは初めて100件を超え、通年では過去最多を大幅に更新する見込み(帝国データバンク、2023)だといいます。既に、企業の人手不足は深刻化しているのです。10年後はもはや企業規模・地域問わず、どの企業も他人ごとではなくなります。正社員だけでは企業存続は叶わず、他の人材確保手段やデジタル活用による省人化に追われていくでしょう

そこで、白羽の矢が立つのが複業です。既に国は動き出しており、内閣府の規制改革推進会議では、人手不足の解消を目的に副業や兼業がしやすいような労働時間の規制改革について議論がスタートしたと日経電子版で報じられました。人手不足の解消のために、個人に複業(副業)をしてほしい、企業はその人材を上手く活用し事業推進をしてほしいというメッセージだと読み取れます。10年後にはもはや、正社員だけでは企業が存続できない状態に陥ります。正社員に加わる新たな人材獲得手段である複業の募集が急速に拡大することは自明でしょう。

②国が複業推進を加速、複業実施率が指標となる

副業元年と呼ばれる2018年以来、モデル就業規則の改訂や副業・兼業ガイドラインの制定、複業(副業)を制限する場合の理由公表の要請など国全体が複業解禁を後押しする動きが活発に見られていました。2023年も複業(副業)受け入れ・送り出しをする企業を対象とした副業・兼業支援補助金の打ち出しや規制改革推進委員会での議論など大きなアップデートがあり、今後も複業推進の動きは加速していくとみられます。

現在、国や政府が見ている指標は複業(副業)解禁率ですが、統計上では複業を解禁していない企業のほうが珍しい状態である今、今後は複業解禁からの実施率が指標となっていくと予測しています。

2023年に厚生労働省が企業に対して、従業員に副業を認める条件などの公表を求める方針を示したように、10年以内に「複業実践率の開示」は企業価値を示す1つの重要経営データとなります。これにより複業解禁において実態と伴っていない企業が表面化していくため、企業としても企業価値を最大化し、優秀な人材獲得のために実施率を上げる企業努力が求められるのです。

もはや、複業を解禁しなければ人材が流出し、新卒・中途問わず厳しい採用市場を勝ち抜くことが難しくなっています。人材流出を恐れ複業を禁止し、閉鎖的な状態を作ることは人材確保の難易度を自ら上げているのです。

③Z世代は既に"複業が選択肢"となっている

3つ目の根拠は、Z世代を中心とする若者への複業文化の浸透です。

学情の20代に向けた調査によれば、副業の実施意向について勤務する会社で認められていたら「副業したい」「どちらかと言えば副業したい」と回答した人が83.6%であった(学情、2023)といい、複業(副業)希望者が8割超えの大多数を占める結果となりました。

複業実施率が上がらない要因の1つは、社内の人間関係です。独立行政法人 労働政策研究・研修機構の調査によれば、副業していることを本業の勤め先に知らせない理由の上位には「個人的なことで言いたくないから」「伝えることで、自身が不利益を被らないか心配だから」(労働政策研究・研修機構、2023)などが挙げられているそうです。これは、1社への所属意識の強い終身雇用が当たり前だった時代の文化が色濃く残っており、上司や同僚、社内の目や人間関係を気にしてしまう、暗黙の了解として複業は禁止状態にあるなどの理由から複業ができない、つまり、現行の企業体制では複業がしにくいことを示しています。

現在、管理職のポジションに多くついているミドルシニア層は終身雇用に慣れてきた世代。Z世代を中心とする若者層との大きな価値観の違いが浮き彫りとなってきていますが、10年後はどうでしょうか。現在の20代(Z世代)が30代となり、企業の中間管理職となっていきます。複業に抵抗のない世代がマネジメント層に入ることにより、徐々に終身雇用の風潮は薄れ、複業実践にあたる阻害要因はなくなっていくでしょう。

10年以内では遅い、Another worksが2030年までに”複業を選択肢にする”

ここまで、複業(副業)の今、3つのファクトから考える複業の未来から、10年以内に”複業が選択肢”になる理由をお話してきました。

しかし、複業が選択肢になる未来を待っていてはいけません。複業はすぐにでも挑戦できる選択肢です。企業はすぐに即戦力人材を仲間にすることで人材・ノウハウ不足を解消し、事業推進につなげることができます。個人は本業を辞めずとも自分が挑戦したいと思ったタイミングで複業で挑戦することができます。

10年後の未来を1年でも早く達成するために、2030年には複業がブームから文化になるように、1人でも多くの挑戦を複業で応援できるよう、Another worksは前に進み続けます。

複業の社会実装を目指す私たちの考えと、2030年までに目指すべき姿を示した「複業みらいポリシー2030」はこちら


大林 尚朝 / NAOTOMO OBAYASHI
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