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深夜3時のオンライン麻雀に救われた記憶

昔の思い出

古い記憶だが今でも覚えてる出来事がある。

あれは今からおよそ17〜18年前のことか。

当時大学生だった私は、家族問題で家に居場所がなかったこと、バイトと大学の両立ができなくて荒んでいたこと、将来に希望を持てていなかったことなど大いに悩みが重なっていた時期だった。

その時の精神の休まる方法といえば家族が寝静まった夜中にひっそりとネットをして時間を潰すことだったが、

その時はたまたまオンラインの麻雀をやっていた。(なお現実の麻雀はほとんどやったことはないけど 笑)

麻雀におけるオンライン対戦は、色んなゲームができるサイトに個人のアカウントを登録しておけばいつでも参加できたので、気が向いた時にやっていた。

麻雀は卓ごとにプレイの条件などを設定できて、参加者が同意したら卓に座りゲーム開始となる。

そしてその日も普段通り、参加者四人が全く顔もどんな人かもわからない状態※で始まった。

※オンラインゲームをやったことのない人には想像がつきにくいかもしれないが、オンラインの対戦は相手の個人情報をそこまで重視しないので詳細は省く。


意外な返答

対局が始まって1時間くらいは、普通にゲームを楽しんでいた。

1回目の対局が終わって夜中の3時くらいになり、もう1ゲームくらいして寝ようかと思っていたその時のこと。

対局者の一人(仮にAさんとする)が、
時間は「もう(夜中で)遅いけど、みんな明日は休み?」と雑談を振ってきた。

私と参加者の一人であるBさんは、大学があるけどサボりだったり、バイトだったりと、それぞれ平日の深夜にオンゲーをしているダメ人間らしい無難な答えをしていた(笑)

だが最後に答えたCさんのチャットは、(当時の自分にとっては)少し意外なものだった。


俺、学校行ってない

もう何年も引きこもってる

・・・

ここで皆が引いてしまったり、あぁそうなんだ〜と無難な受け答えで終わっていれば、その時の記憶はここまで引き継がれることはなかっただろう。

実際自分は「よく隠さず言えたな〜」とちょっと驚いたので。(勇気あるなーと感心してた)

ただAさんはそれに対してこう答えたのだった。

オレ今大学で教育学を学んでて、将来は学校の先生になりたいと思っているんだよね。それで色んな人に話を聞いたり、勉強したりしててさ

だから子どもが悩んだ結果引きこもりになることも知っていて、そういう人の状況や、心で感じていることも聞いておきたいなと思っているんだけど

もしCさんの差し支えない範囲でよかったら、少し話を聞かせてもらえない?

・・・

正直今となっては、AさんもCさんもその時どれほど真実を語っていたかは分からない。

Aさんは元々そういう話を聞くのが目的でネットをしていたのかもしれないが、インターネットの世界は嘘と真実が50:50で入り混じるものと認識しているので、全てが本当のことを語っているとも限らないだろう。

(この話も、あくまでその時の参加者の一人であった私個人の目線で書かれている)

しかし、その後もCさんの打つチャットが止まることはなかった。
多少なりとも、Aさんの言葉を受け入れることにしたのではないかと思う。


引き寄せられるように

・引きこもり始めたのはいつの時か?
・なぜ引きこもりとなったか?
・今はどんな感じで過ごしているか?

そういうことをポツポツと語るCさんと、聞く側の私たち。(麻雀を打ちながらである)

Aさんが時よりCさんの状況や心情について、今勉強していることを中心に解説していく。

そこまで詳細な解説を聞いていたわけではないが、その場では妙な納得感をもたらしていた。

いつの間にか話に引き込まれてしまっていたのだろう。対局の方が先に終わってしまった。

私もBさんも続きを聞きたかったため、(対局自体は続行しつつも)ゲームそっちのけで四人の会話を続けていった。(というか凄い盛り上がってたw)


もう隠さなくてもいいかなと

人生で初めて感じる奇妙な連帯感に居心地の良さを感じながらも、人にはそれぞれ色んな抱えているものがあるのだなと密かにじんわり思い耽っていた。

それまでの人間関係で、ここまで誰かの打ち明け話を真剣に聞く機会はそうそうなかったから新鮮な気持ちだったのだろう。

だから今なら、普段隠している弱さをさらけ出してもいいかなと感じていた。

あの当時、我慢することが人生における唯一の救われる方法だと思っていた自分からすれば中々の変化である。

そして私も家族で悩みを抱えていることを打ち明けることにした。


うちも両親が仲悪くってさ

ホント家に居場所が無くて嫌になるわー」    と

ずっと悩みを抱え辛かったことを誰かに明かしたのは、この時が初めてだったのではないかと思う。(多少明かしたとしても現実はちっとも変わらないことを知っていたので、無駄だと思って言わなくなっていた)

それに対して、他の三人はそういうことあるよねーと同意してくれていた。現実の友人関係では反応を恐れて中々言えなかったことだ。

言い終わったときにホッとしたのを覚えている。


時代の先取り?

あの時の場の空気感について言葉で言い表すのは中々難しい。

だがその“空間“はとても居心地が良いものだった。

Googleがのちにチームやグループにおける心理的安全性の重要さについて語っているが、本心を隠すことなく過ごせることの気軽さとは、こういうものだったのだろう。

※参考

あの時の我々は数年先を行っていたと自負してよかったのではないだろうか?(笑)

なぜなら顔も名前も分からないその場で偶然会った四人が、現実空間ではないオンライン空間でわかり合えていると思える時間を共有していたのだから。

少なくとも自分には「あの時間、四人の心は一つになっていた」と信じられた。(思い出なので多少美化されているかもしれないがねw)

私にとってはそれが真実である。


希望を見出す

この時の感動を消そうとは思わなかったので、昔のBlogに当時の日記を残していた。(漁ったら2005年にそれらしき記事が書いてあったw)

それくらい貴重な経験をしたと感じていたのだろう。
他に60歳で大学に行くために予備校に通い出した人の話とかも書いてあったが、挑戦するのはいつでもできることの大切さなども学んでいたようだ。

人間関係の狭かったあの当時としては、大変得難い経験をできたものだ。

あの夜、麻雀を共にした三人には本当に感謝している。
楽しい時間だったし、溜めていた悩みも話させてもらった。ありがとう!!

・・・

その後の話だが、何よりこのような経験が「(現実より)ネットの世界」でもたらされたことは大いに励みとなった。

インターネットの世界が嘘は嘘と見抜けないものには生きにくいとされる中で、こうも現実の認識を変えてくれたのだから。

メタバースがインターネットの進化系のように叫ばれる昨今、自分にとってはこういう出会いが気軽に起こる未来こそ次の時代に求められるものなのだと感じている。(私の親世代には中々理解し難いコミュニーケーションかもしれないが)

だから、あの時の“奇跡“を再び感じられるような空間を作ることが私の今の目標だ。


※注」個人を特定するような名前などは出ないものの(というかいまだに誰だったか分からない)、多少プライバシーに踏み込んでいると思われる内容のため、何か差し支えがあれば公開内容等変えるのでメールにて連絡ください。(連絡先はプロフィール参照のこと)

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