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「地元にも農業にも誇りを持てなかった」私が今この活動をしている理由

こんにちは!
2期チュウブ展を担当しております、長野県出身の松澤です。

少しずつ暑さも本格的になり、蒸し暑い日が多くなってきましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
私は暑さに少々やられていますが、美味しいものをモリモリ食べて夏バテを乗り切っていこうと思います!

6月5日からオープンしたチュウブ展も、早いものであっという間に1か月が経ちました。
自分達が熱量を込めて仕入れた商品の魅力をお客様にお届けする楽しさを実感しつつ、思うように売上が上がらない現実の厳しさに目をくらませながら過ごしております。

まずは自己紹介から。

高校までの18年間を長野県で過ごし、大学進学を機に関東に上京してきました。
両親は葡萄農家をしています。


地元の河川敷の写真。毎年5月には、北信五岳を背景に100匹のこいのぼりがあがります。

アナザー・ジャパンの活動をしていると、「地元が大好きな人」と思っていただくことが多いですが、実は私は高校までの18年間、地元に対して決していいイメージを持っていたわけではありません。

むしろ、
「都会と比べて遊ぶところがあんまりない」
「山と畑しかなくて、泥臭くてちょっとださい」
と、反抗期の多感な時期であったことも相まってマイナスのイメージを持っていました。笑

そんな私が、今や地元のことが大好きになり、アナザー・ジャパンで地域の魅力を伝える活動をするに至ったのは、大学進学を機に上京してきたことがきっかけです。

大学に入学した2021年はちょうどコロナの真っ只中で、サークル活動や交換留学、ボランティア活動、楽しみにしていたことがことごとく休止になったり延期となっていまいました。
新しい知り合いもできず、勝手も分からないままオンライン講義を受けて終えていく毎日。
普段精神的に辛くなることはあまりないですが、この時期は人生の中でもかなり辛い時期だったように思います。

そんな時に私を救ってくれたのが、長野にいる家族と友人達からの「いつでも帰ってきたらいいんだよ」という言葉でした。
この言葉があったお陰で、「迎えてくれる人達の存在」、「すべて受け入れてくれているような、地元の広大な山々や畑などの情景」を思い出し、自然と元気が湧いてきたのを覚えています。
この頃から、月に1回は帰省し、「趣味=帰省」になるほどに地元信州のことが大好きになっていました。

地元への愛を実感した後は、まちづくりの講義やボランティアに参加したり「地元に貢献できそう!」とぴんと感じる活動には自ら飛び込むようになりました。

ただその中で、「持続可能な形ではなく特定の誰かに負担が集中していること」「革新的でなく、現状維持のままであること」に課題意識を感じることもありました。
自治会の会長を「他にやってくれる人がいないから」と言う理由で、高齢になっても引き受け続ける。それでなんとか地域の自治会が成り立っている現実。
免許返納後に買物難に陥る高齢の方に向け、ゼミでコミュニティバス施策を考えるも、自治体の資金不足で計画が途中で頓挫してしまう現実。

こういった現実に直面するたび、「経営を学びたい」と思うようになっていきました。お金を生み出す循環を作り出すとができたら、きっとそこに新たな人も集まってくるだろう。
そしたら、また新しい活動が生まれ、また人を呼び、、といったように、持続的に地域資源を守っていくことができるのでは、と考えるようになったんです。

その折にちょうどアナザー・ジャパンの活動を教えて頂き、応募をし今に至っております。


チュウブ展では、長野・愛知・山梨の3県の仕入れを担当しました!
写真は、山梨県甲府市で甲州印伝を作られている事業者様に出張で伺った際の写真です。

「東北信の農作物で”ハレの食卓”を彩る」開催!

現在、7月15日(月)までの2週間限定で、長野県の東北信の「農業」にスポットライトを当てた特集をしています。

郷土愛×偏愛特集とは・・・

アナザー・ジャパン2期生は個性豊かな18名の学生(「セトラー」=エリア担当経営者)で活動しております。2期生からは、より一人一人の郷土愛にスポットライトを当て、個人が強く届けたい商品を2週間ごとにピックアップする「郷土愛×偏愛特集」が始動。特定のエリアを舞台に、学生が自身の「偏愛」にもとづいてセレクトした商品をラインアップします。

「東北信」とは

面積の大きな長野県は、北信、東信、南信、中信の4つに大きく分かれます。
そして、北信と東信をまとめて「東北信」、中信と南信をまとめて「中南信」ということがあります。

天気予報や県内のニュースもこの括りで報道されていて、
長野県民にとっては馴染み深い表現なんです!

なぜ「農作物」なのか

冒頭に述べた通り、私の両親は葡萄農家をしていますが、葡萄の他にも野菜を栽培しています。
しかし、中学、高校とあがる過程で『将来、農業はできればやりたくない』って思うようになりました。
お洒落な服をさらっと着こなす同世代のモデルさんの雑誌を見て、「泥臭い農業なんてしたくない」「東京に行って自分もキラキラしたい!」って思っていたんです。
そのため、将来のことを考えるようになったこの頃、農業は将来の選択肢からは外していたように思います。

両親は「自分の好きな仕事をしてほしい」と言ってくれているけれど、きっと本心では農業を引き継いでほしいと思っているはず。でも、将来自分が跡を継ぐことを考えると荷が重くて、考える事を忌避していました。

前述のコロナ自粛期間の際、ご飯を作る気力も沸かなくなっていた時に、仕送りで母親からの「ちゃんと食べてね」という手紙と、実家の葡萄や野菜が送られてきて、「人は、美味しい食べ物と、それを作ってくれる人がいないと生きていけない」って、当たり前のことですが実感しました。
人にとって食べ物の価値はとても高く、それを生産している農家は本来もっと特別な存在であるべきだと感じるようになったんです。

でも、日本において農業という仕事はどうしても「土臭い」とか「汚い」とか、「ださい」とか、、否定的なイメージがぬぐえていないと思います。
私自身もそうだったからこそわかります。

だから私はこの特集で、「農業」という生業の難しさとリアルな部分に加え、どんな時にやりがいや幸せを感じられるのかという、普段消費者からはなかなか見えないような部分から地元の農作物の「味」をお伝えしたいと思っています。
無機質な料理より、誰かが思いを込めて作った料理の方が何倍も美味しいように。

この2週間が、「農作物を作り、伝える方たち」の想いが届き、農業を新しい角度から見つめ直すきっかけになれば幸いです。

農業のやりがい・難しさ

「実際に母親はどんな想いで葡萄を作っているのか?」
出張で帰省した際に、母親にインタビューをしてみました。

農家をしていて一番楽しいこと

私:葡萄農家をしていて一番やりがいを感じる事って何?

母親:一番は、「私が作った葡萄を今年も食べたい」って言ってもらえることかなあ。近所の人とかお世話になった人にお裾分けをした後、「〇〇さんが作った葡萄、今年も本当に美味しいよ」って言ってもらえるのがやっぱり嬉しい。

私:私もお世話になったアルバイト先の方とか友人から、「葡萄美味しすぎて感動した」とか「こんなの作れるなんて、えりのご両親すごいね!」みたいに言ってもらえた時すごく誇らしかったし、身近だけど遠い農業だからこそ身近な人に興味を持ってもらえることが嬉しかった。

母親:そうそう、だから私達も、「今年はここが好評だったから、来年はその部分をもっと意識して葡萄を作ろう」とか、日々考えながら作業してる。


葡萄畑。母と一緒に作業をしてました。

葡萄づくりでいちばん難しいこと

私:葡萄栽培でたくさん作業がある中で、いちばん難しいのはどこ?

母親:「適粒(てきりゅう)」作業がいちばん大変かな。
余分な果粒を取り除いて果粒数を調整する作業で、完成した葡萄の「見た目」を左右するのは勿論、「味」も左右する重要な作業なんだよね。
(粒数が多いと1粒あたりの糖度が下がり、また品種によっては着色も悪くなってしまうのです)

簡単そうに見えるかもしれないけど、葡萄の種類ごとに「長さはこう」とか「粒数はこう」とか、頭の中でイメージが出来ていないとなかなか難しくて。初めての方に口で説明するのも伝わりづらくて難しいんだよね。

でも特にこの作業こそ、機械ではなく人間の手でやらないとできない仕事。

他の作業に追われてたりしても、適した時期に、葡萄にとって必要な作業を段階を踏んで行っていかないといけない。葡萄の成長は待ってくれないからね。他の人の手を借りづらい部分もあるし。それがいちばん大変かな。

インタビューを通して

インタビューを通して感じたことは、農業は「自分達が作ったものがそのまま贈り物になり、誰かの笑顔を作れる幸せ」を、いちばん近くで感じられる生業であるということです。

また「自分だからこそ」という誇りを持って作物に向き合うことができるのも、とても幸せなことだと感じます。

私の祖父母や両親は、人とのご縁や感謝の気持ちを大切にしていて、それを私自身も誇りに思ってきました。そのような価値観や生き方も、普段から自己に向き合い自然と共生し、周囲の人たちとのつながりが紡がれていく、「農業」という生業を通して育まれてきたものなのかもしれない、と感じました。

ハレの食卓を彩る商品のご紹介!

ここからは、今回の食卓を彩る商品のご紹介です。
「農作物を作り、伝える」事業者様による、特別な2週間になります。
ぜひお楽しみください!

①有限会社いろは堂

大正14年創業以来、長野市鬼無里(きなさ)でおやきの製造販売をされています。

鬼無里本店の写真。焼きたてのおやきが食べられるのは本店だけなんです!

「おやき」は、旬の野菜をはじめとした様々な食材を包んで焼いた、長野県の郷土食です。
実は一口におやきといってもたくさん種類があって、皮が厚いものや薄いもの、ふっくらしたもの、もっちりしたもの、製造方法も焼き、蒸し、焼き蒸し、油焼き……多岐にわたります!

中でもいろは堂さんのおやきは、油でサッと揚げてから高温のオーブンで焼き上げる「揚げ焼き」が特徴。


もっちりジューシーなおやき。

また、生地自体にもこだわりがあって、小麦粉に蕎麦粉をブレンドした独特の生地を使用し、創業時にはパン屋であったノウハウを活かしていつ食べても「もちもち」の生地を実現されています。

★お取り扱い商品はこちら!
こんがり、ふっくらとした食感にこだわりのたっぷり具材がマッチして最高に美味しいおやき。アナザー・ジャパンでは7種類の具材からお選びいただけます。


今回の特集にあたり、ぶなしめじと切り干し大根を新作入荷しました!

一度食べたら病みつきになること間違いなしのおやきを是非ご賞味あれ。

②glasses farm

全国でも有数の葡萄の産地である長野県東御市で、ご夫婦で葡萄栽培をしながら加工・販売まで手掛けられています。
元々は関東在住のお二人ですが、「今後は二人で共同で仕事をしたい」と思われていたそう。
「どうせやるなら、原材料を育てる部分から販売まで携われたら面白いだろうなあ」と思い、中でも一番やりがいを感じられた「葡萄」の農家になろうと東御市に移住をされました。


お二人の眼鏡から見る東御の景色と美味しさを商品からお届けしたいという願いから
「glasses farm」という名前を付けられたそうです...!

全国でも有数の葡萄の産地である長野県東御市で、ご夫婦で葡萄栽培をしながら加工・販売まで手掛けられています。
元々は関東在住のお二人ですが、「今後は二人で共同で仕事をしたい」と思われていたそう。

商品は全て添加物不使用で、地元の果実本来や素材そのものの風味を最大限引き出した奥深いは味わいになっています。レシピ開発は元パティシエの奥様が、商品パッケージはデザインやモノづくりの仕事に従事されていた旦那様が手掛けています。

★お取り扱い商品はこちら!
葡萄のジャム、りんごのジャム、葡萄シロップ、巨峰マスタード、りんごを60%以上使用したドレッシングなどをお取り扱いしています。
「りんご+生姜」「巨峰+マスタード」など、今までにないような掛け合わせの商品もあり、デザートだけでなくお料理にも合わせやすいのがおすすめポイント!


まさに、ご夫婦二人三脚だからこそ、そしてこの東御という土地だからこそ生まれた極上の商品。
味も逸品なのでぜひ召し上がって頂きたいです。


③信州たかやまワイナリー

長野県上高井郡高山村のワイナリーさまです。
高山村は温泉やスキーが有名で、

  • 傾斜地で水はけがいい

  • 果樹栽培に適している

  • ワイン葡萄を栽培できる土地がある

という特徴を持っています。

「一つの場所がワイン産地になるには、200年もの年月が必要」と言われるなかで、高山村はまさに「ワイン産地としてのポテンシャルが高い」土地だと考えた13人の方の出資により、この地で新たにワイン造りがスタートしました。

今後200年続くワイン産地を目指して立ち上がった13名。

★お取り扱い商品はこちら!
・Naćho2023 白ワイン・ロゼワイン(高山村限定販売品)

Naćho(なっちょ)とは、信州北部の方言で、「どう?どうしてる?」と相手を思いやる言葉。
このワインを気軽に手にとってもらい、誰かと誰かの会話を結ぶようにという願いが込められています。爽やかな酸とフレッシュな果実感が軽快で心地よい味わいが特徴。


家族とカニ鍋をした時の写真。食事にすごく合うワインです。

中でも、ロゼワインは、黒葡萄を白ワインと同じように醸造するワインです。白ワインのような爽快感と黒葡萄からくる苦みの双方が楽しめるのがポイント。
食事の前に冷やしておくことで、始めは白ワインのような楽しみ方ができます。さらに、食事中テーブルの上に置いておくと一緒に温度も上がり渋みが出てくるので赤ワイン的な楽しみ方もできるんです!

・Murayori2022白(2024年4月より新発売)

ワインが村の便りになり、遠くの地にいてもワインを通して高山村の風土を感じてほしい。
「産地から」と「村便り」の意味をかけた「むらより」という名前のワインです。

“Naćho(なっちょ)”の親しみやすさはそのままに、長野県北部・高山村の地勢的な要因や、毎年異なる気候がワインにもたらす特徴が判るよう心がけて造られています。爽快な酸に、レモンや白い花のような香りが合わさり、爽やかで親しみやすい味わいになっています。

④株式会社果実企画

長野県中野市でドライフルーツの製造販売をされています。
「日本において国産葡萄のレーズンがない」ことに違和感を感じ、信州の葡萄を使ったドライフルーツの製造をされています。

中野市に出張したのは2月。葡萄畑にも雪が積もっていました。

中野市に出張したのは2月。葡萄畑にも雪が積もっていました。

ドライフルーツのために栽培したぶどうを使用し、地域や農家の方々と連携し地元で大切に育てられた果物を正当な価格で買い付けてドライフルーツをつくられています。

ドライフルーツはそのまま食べるだけでなく、ヨーグルトやシリアルに加えたり、焼き菓子や料理のアクセントとして使ったりすることができます。
また、新鮮なフルーツは季節によって手に入りにくい場合もありますが、ドライフルーツにすることで一年中楽しめます。そして長い間保存がきくのでどんなシチュエーションでも楽しめます。

砂糖やオイル、添加物を一切使用していないため、
果実本来の甘味と旨みが引き立ち、まるで果実をそのまま食べているような感覚!

★お取り扱い商品はこちら!
ドライフルーツ全5種をお取り扱いしています。
チャックもついているのでパクパク食べれちゃいます。


〈試食会〉開催予定です!

2週間限定で上記商品の試食・試食会を開催しております。
(一部ご用意がない商品もございます。予めご了承ください。)
ぜひ店舗にお立ち寄りください!

最後に

ここまでお読みいただきありがとうございます!
地元愛があふれ、ついたくさん書いてしまいましたが、私は、農業は色んな”幸せ”を与えてくれる、唯一無二の生業だと考えています。

忙しない現代を生きていると、どうしても生産性や効率性ばかりに目が向いてしまいがちですが、農業的な視点で見れば、例えば葡萄の木の皮をはぐ、落ち葉をかき集めて肥料にする、などの手間暇と大変さ=非効率さも楽しめるようになります。
そして、愛娘のように大切に育てた作物で、誰かを笑顔にする事の出来る生業だと思っています。

自然の恵みに感謝しながら実直に作物に向き合い、毎日が特別なハレの日に変わるような「農業」そのものの魅力を、ハレの食卓を通して感じて頂けましたらそれ以上に嬉しいことはありません。

あなたのご来店を心よりお待ちしております。

Writer: Erina Matsuzawa








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