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【対談#01】うなぎの寝床 白水高広さん×アナザー・キュウシュウ

福岡・八女で地域文化商社”うなぎの寝床"を経営する、白水高広さんとアナザー・ジャパン・キュウシュウチームの3人(以下、安見・比嘉・山口と表記させていただきます。)が、「つなぎ手」としての視点からみる地域をテーマに、対談させていただきました。1時間半にわたるお話をぎゅっと濃縮した記事になっているのでぜひ最後まで読んでください✍🏻

▶︎うなぎの寝床 代表取締役 白水高広さんプロフィール

白水 高広
しらみず・たかひろ。1985年佐賀県生まれ。大分大学工学部福祉環境工学科建築コース卒業。福岡県南・筑後地域の商品開発やブランディングを行う「九州ちくご元気計画」の主任推進員を経て、2012年7月にアンテナショップうなぎの寝床を立ち上げる。地域に足りない要素や機能を考え実装する地域文化商社として小売・メーカー・ECサイトを運営。行政や組合のコンサルティングや企画も行う。物の流通を7年間行う中で、物の流通だけでは本当に伝えたい地域の人や環境、文化が伝わらないと考え、地域文化の本質に触れることができる体験やサービス、情報を提供するためにUNAラボラトリーズを立ち上げる。

▶︎白水さんがうなぎの寝床を営み続けるのは「地域のため」ではない!?

ー山口:いたるところで、白水さんは「地域のため」と思ってうなぎの寝床をやっていないということをおっしゃっていますよね。特に地方創生に興味がある学生にとって衝撃的な言葉なんじゃないかと思います。改めて、白水さんは何を大切にして地域と向き合っているのでしょうか。

ー白水さん:地域のために、って思っていたら地域のいいところばかりを見がちだと思うんですよね。だけど、ネガティブな点を埋めていくとか忖度なく見ていくということも大事だと思っていて。あくまでも今ある地域文化を、世の中の人に知ってもらう土壌にのせる(店舗に商品を並べると、みんながお店に来て商品を知ってくれる)こと、が僕の役割だと思っています。知ったうえで選択するかどうかは生活者、つまりみんなの役割です。僕たちは、自然からものになるまでのプロセスを、可視化する=文脈化する=文化化することを大切にしています。

ー安見:設立当初からその想いを胸に貫いてこられたのでしょうか?
ー白水さん:もう全然。僕も最初は好きな人のものばっかり仕入れて、つくり手さんへの思い入れで走っていました。20代後半くらいまで、こうなるべき!!とか強く言い続けてたし。でも全然売れなかった。思いはあっても、仕組みの問題は改善されないことに気づいたんです。つくり手はみんな意志があるので、伝え手としてはその作り手への思い入れとマーケットを見ることとのバランスが大事で、思い入れを持ちすぎると判断しづらくなる。

ー山口:なるほど、私たちも仕入れ交渉でつくり手さんと話せば話すほどつくり手さんに感情移入してしまって地域をフラットに見る難しさを感じています。

ー白水さん:つくり手さんのことは情緒的に語られることが多いんですよね。今作られているものが現代生活にあっているのかちゃんと見極める。その間に社会とか経済があって、それがちゃんと売れれば必ず土地性や文化は継承されていきます。


▶︎そもそも地域って何?地域と関わりしろを丁寧に定義し続けることに意味がある。

ここで白水さんから鋭い質問が飛んできました。

そもそも「地域」って誰主体の話?

ー3人:・・・・
ー白水さん:僕は単純に、「地域」をその都度ちゃんと設定するべきだと思っていて。「地域」って便利な言葉だけど範囲が広すぎるんだよね。例えば、今言っている地域は、この周辺に住んでいる人たちの暮らしが幸せになることなのか、ものづくりの人たちなのか、農業をしている人たちなのか、特定の産業に従事している人たちなのか。
でもこれって関わる中でしか輪郭は見えてこないんだよね。
地域を見るときにはいろんなレイヤーがあると思っていて、福岡の南エリアを見ると僕たちはとても解像度が高い自信があるけど、国の政策を作るレベルになると地域の解像度は低い。例えば、1974年に伝統的工芸品産業の振興に関する法律ができて、それがなければ今ある産地がどうなっているか分からない。これも地域のためになっているし、僕たちがやっている地域のものを都市につなげていくことも地域のためと捉えられていますよね。

僕が伝えたいのは、行政でも、地域文化商社でも、小売でも、どれをやっているからすごいとかではなくて、それぞれ自分が適していると思えるレイヤーで地域を見てほしいということです。地域をいろんなレイヤーで捉える人が複数いてそれが集まることで初めて「地域のため」の意味を成すんじゃないかな。

ー安見:私たちは九州を「宴」と捉えてお店を作ろうとしています。ただ、それが九州の地域性の根源に辿り着けているものであるのか、九州のつくり手さんと直に対話させていただきながら日々模索しています…
ー白水さん:無理に辿り着こうとしなくてもいいんじゃないかな。オープンな地域性的にも「宴」はいいと思うし、自分達なりに解釈したということそのものに価値がある。暫定解を信じてやり続けていくしかないと思う。

▶︎「考える」→「現場にいく」→「考えと現場の間に見えた差分を修正する」の思考サイクルを身につける学生時代を。

ー比嘉:これから社会や地域に出ていく学生に対して、どういう行動をしてほしいなどのメッセージはありますか?
ー白水さん:概念と現場の行き来ができる人・都市と地域の間を行き来できる人が増えると良いなと思っています。
ー比嘉:学生には、自分がどのレイヤーで地域と関わりたいかを考えたり選んだりできる期間があるということですよね。
ー白水さん : そうそう、そのレイヤーを選択できた方がいい。社会人になると役割として概念的な部分を考える人と現場を見る人が分断化されがちだから、学生のうちに、概念の部分ももちろん考える、そして現場に行く、行くと必ず机の上で考えていたこととのギャップが見えてくるからそこの差を修正していく、そのサイクルを大切にしてほしいなと。
ー安見:改めて、私たちセトラーは今様々な視点で地域を見つめる環境のもと挑戦させていただいているので、日々感謝を重ねながら活動に励んでまいります!


白水さんとの対談を終えて、それぞれの解釈で地域を発信していくことへの自信が強まった3人のたくましい表情が印象的な対談でした。
「宴」というテーマで、今まで届かなかったひとに商品を届けることができることに胸を躍らせながら開業までの店舗作りに努めてまいります!
白水さん、貴重な対談、本当にありがとうございました!!!

今回のライター:Yukiho Yamamoto (チュウゴクシコク)

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