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シンガポール駐在の相続手続き③ ~ 節税知識は運用知識に勝る

相続手続きに関する第3回。今回は節税に関する知識だ。話は少し脱線するがタイトルについて。なぜ節税知識が運用知識に勝る、と考えるのか。
(相続手続きの基礎、遺産分割の経緯などについては前編を参照ください)


運用よりも節税と考える理由 

2024年、日本は株式運用ブーム真っ盛りだ。かく言う私も、若い頃からFXや株式投資など、色々な投資を経験。今も資産の3割程度は運用に回しており、最近の上げ相場のお陰で毎年数百万円の運用利益を上げている。

しかし運用に関する知識・運用で得る利益は水物だ。先ず運用知識に絶対儲かる話は存在しないことは誰でも知るところで、最近のAI・半導体ブームも1~2年で終わるだろう(特に半導体は元々シクリカルな業種で、地政学リスクを理由にこれだけ工場を新設すれば需給ギャップ悪化/振り戻しは相当深刻なものになるはずだ)。
更に運用利益は、「売却により含み益を実現し、その後、株に二度と手を出さないと決めた時点で」初めて確定するものだ。ありがちなのは、利確した後に割安と思うタイミングでつい再エントリー。しかし二匹目のドジョウはおらず、これまでの利益を吐き出してしまうケースが多く、「たいやきの頭としっぽ」まで食べきるどころか、上手く勝ち逃げ出来る人は殆どいないだろう。

こうしたことから、生涯を通じた年間投資リターンは精々10%弱(米国債金利+リスクプレミアム)に収束。ハイリスクな投資での成功者は生存者バイアスで生じた存在で、陰には沢山の声なき屍が存在するだろう。
このため、私は話題の新NISAでは無く、全額所得控除となる「iDeCo」で、節税効果の恩恵に預かっている。

節税天国シンガポール(究極の親ガチャ)

水物の運用と違い、節税は知っていれば「確実に」本来キャッシュアウトするお金を手元に残すことが出来る。税のなかでも、相続税の最高税率55%(所得税の最高税率45%より更に高い)。日本では相当なお金持ちでも3世代以上に亘ってその富を維持することは難しい。富の再分配として、相続税が社会的に重要であることは理解できるが、父が所得税を払って地道に貯蓄した財産に対する税金なので二重課税のようにも思えてしまう。

一方で、相続税ゼロ(更に資産運用益に対する課税も無し!)・固定金利3~4%付くシンガポールでは、FIRE(運用収益で生活可能)を達成した家庭がその財産を次世代に渡すだけで、何世代にも亘って遊んで暮らせる超イージーモードだ(建国から60年弱であることから未だ第一世代が存命だと思うが…)。世界の金持ちが殺到する理由がよくわかる。同じ資本主義とは思えないほどのルールの違いだ。

ちなみに、日本では2017年にタックスヘイブン対策税制が発効し、日本人がシンガポールの制度に恩恵預かろうとするならば、資産を持っている本人と相続させる相手のすべてが10年以上シンガポールに在住する必要がある。しかし、シンガポールの永住権取得には、シンガポールの企業に10百万SGD(約11億円)以上を投資する必要があり、残念ながら我々庶民には縁遠い世界なのである。

私が活用した相続税対策

前置きが長くなったが、以下に私の相続手続き時に節税策として活用した制度を羅列しよう。キーワードさえ知っていれば、他に詳しく説明したサイトが沢山存在するので入り口の参考情報として活用して欲しい。

①不動産に関する節税策

実家の価値評価は相続手続きにおいて最も重要で、相続税が数百万円規模で変わってくる。売却による資金化を想定していないことから、国税も相続税を減額する様々な特例を設けており、漏れなく活用することが望ましい。

a) 小規模宅地等の特例
 土地の330㎡までは評価額を最大80%減額出来る
b) 配偶者居住権の設定
 実家の価値を所有権と居住権に分離。オカンが居住権を取得することで所有権評価を減額することが出来る
c) 不動産評価の減額要件
 不整形地・地積規模の大きな宅地など、売却時にマイナスとなる要件を満たせば、評価額を引き下げることが出来る

②その他節税策

前編で触れた通り、現金・株に関しては基本オカンに持ってもらうことにした。ただお勧めの相続税対策を2点紹介しよう(初歩的なものだが)。

先ずは死亡保険金の非課税枠500万円の活用。我が家の場合、相続人が3人なので1,500万円まで非課税となるので、事前に契約しておかない手はない。
また生前贈与は、年間110万円の非課税枠があるものの、亡くなる3年前(7年まで延長予定)の贈与が相続税対象になる等、年々改悪する方向にある。我が家が活用したのは教育資金贈与の非課税制度で、私の息子たちの教育資金として非課税で一括贈与出来る(上限1,500万円)。教育は最も投資効率が高い投資と言われており、次世代に夢を託すというのは親にとっても最も納得感のあるお金の渡し方で、皆さんも両親と話してみることをお勧めする。

こうした対策を取るためにも、円満な家族関係が大前提となる。前編含めた私の経験が皆様の「金のある悲劇」を減らすことに繋がれば幸甚である。

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