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シンガポール駐在の相続手続き① ~ M&Aアドバイザリー業務並の高難度?

唐突だが、2年ほど前に父が他界した。亡くなる数年前に大病を患い、その後も複数の内臓系疾患により入退院を繰り返していたものの、最後の局面は突然にやってきて、私が帰るまでもたなかった‥。離れて暮らす海外駐在としてはやむを得ない話で、ここではそんなセンチな身の上を話したいわけでは無い。

さて相続手続きだ。相続税の申告は、死亡日から10ヵ月以内が期限となっており、この期限を過ぎると特例や税額控除の適用が不可となることのみならず、延滞税などのペナルティも課せられる(数千万円の影響有)。四十九日法要で一時帰国するとして、プラスあと1回の帰国で申告までの手続きを済ます必要がある。

実家には母親と姉がいるものの、「銀行員って相続にも詳しいんでしょ」というありがちな誤解(法人担当は個人の資産運用はほぼ触らない)から、一任された。とはいえ、企業・産業調査を生業とする金融のプロが分からないというのも悔しい。相続税申告なんぞ片手間で出来るととして、いちから勉強して各種特例や控除の制度を活用することで納税額を圧縮した(勿論、合法的にだ)。生前時から出来ることも含めて共有するので、相続なんて関係ないって人にも是非読んでみてほしい


相続財産と税額算出に関する基本的考え方

先ずはいくら遺したのかだ。親父はケチだった。私の小学生時代、いちど回らない寿司屋に連れていかれたことがある。注文するたびに、「その皿、500円やで」などと常に値段を言われ、玉子以外は注文しづらかった思い出を今でも鮮明に覚えている。

そんな堅実な生活を通じて貯めた株や現金が数千万円。先祖代々が受け継いできた無駄に広い実家(路線価評価:1億円弱)が相続財産だ。相続税率をみると1億円から2億円の間は税率40%。えっ、つまり半分弱が税金で召し上げられると思うが、そこまで酷い制度ではない。一番のポイントは、配偶者特別控除で母(以下オカン)が相続すれば1億6千万円まで無税になること。
ただ、なんだ、じゃーオカンに全部渡せば終わりじゃん、とはならない。
(考えたくないが)オカンが亡くなった時、二次相続として実家と、オカンが使い切れなかった金融資産に税金が課せられ、相続する資産を上手く分割しない場合と比べて1千万円ちかくも相続税が膨れ上がるのだ。

相続手続きの難しさ

つまり相続手続きの難しさとは、控除や特例を使って税金を抑えると同時に、親・兄弟全員が納得する配分(取り分)について心情的な軋轢や利益相反の問題をマネージしながら、たった10ヶ月間でクロージングにまで導くという、M&Aアドバイザリー業務並の高難度なタスクなのだ。

特に、我が家のケースは、分割または現金化が出来ない実家が相続資産の大半を占める、典型的な「争続」に陥るケースだ。(分割協議における紆余曲折は、たぶん次回詳しく書く)

重大な決断:税理士 or 自力

相続に係る手続きに関しては、国家資格を有する士業のみに許された業務が沢山ある。相続税申告は税理士にのみ許された独占業務。他にも実家の鑑定は不動産鑑定士、所有権変更に関する登記は司法書士など、既得権益の香りがプンプンする。。

ただ、この難しいタスクを進める上では、中立的な第三者であるプロ(税理士)に入ってもらい、アドバイスを得ながら進めていくのが一般的(相続税申告の9割弱が税理士経由らしい)なのはよく理解出来る。
相続人のうち誰か詳しいものが手続きを主導すると、他の相続人/親族は自分の取り分が少なくなるのでは、と疑心暗鬼になってしまい、分割に関する合意が取れないといつまで経っても次のプロセスに進めないからだ(M&Aと違い、明確な期限のある申告は確実に終わらせる必要が有る)。

税理士への依頼(マジョリティ85%の選択)

我が家も最初、友人の紹介で働きの良かったという税理士事務所を紹介してもらった。友人は地元の名士で賃貸不動産を複数保有。その税理士事務所は不動産の相続に強く、鑑定士や司法書士と連携しながら、一連のプロセスを一括で委託できるという。海外駐在にとっては、非常に魅力的な提案だ。

但し、そう思っていたのは手数料をみるまで。我が家の資産をベースとした税理士報酬の見積りはなんと120万円!この強気の価格設定が許される背景は、①我々税理士に任せれば、税額は3-4百万圧縮出来るよという「利益」、②過少申告はペナルティとして10%の追徴課税、悪質な場合は重加算税もあるという「脅し」、③そもそも、相続で汗をかかずに大きなお金が入ることから、利用者自身の気持ちが大きくなっている、ということがあるのだろう(良いビジネスだ。団塊の世代の相続で成長市場となるだろう)。

ただ私は騙されない(?)。120万円はデカい。金融マンは、手数料とローンなど、業務を通じて日々数字を追いかけているものの、自分自身が払う側になるのは大嫌いなのだ!(あと父親ゆずりでケチなのだ!)

自力での対応(マイノリティ残り15%の選択)

自分で申告しようと色々と調べる。国税庁HPに掲示された膨大な申告関連書類(PDF)をみて心が折れかける。電子申告(e-tax)のソフトウェアをダウンロードするも、エラー表示で全く進まない。自己申告した猛者のブログを探すも、全く出てこない。。昭和/平成ならいざ知らず、今は令和ですよ。会社の業務はRPA・Chat-GPTによるDX化を進める中、こんな不便なのかって愕然とした。

PDFPDFPDF。電卓・手入力でやれってことか。。

そんな中、ようやく見つけたのが以下Webサービス。定額5万5千円で税理士に相談も出来る。入力画面も私がイメージしていたものに近い。コレよ、コレ。これを見つけて、自分でやる覚悟が出来た。

次回は、遺産分割協議の主要な論点、更には納税額圧縮のための具体的な手法について共有していきたい。

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