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研究者が語る、「あのね」に感じる可能性|前編

「人とのつながり」が良い影響を生む!?

こんにちは。あのね運営チーム後藤です。
今回の記事は、東京都健康長寿医療センター研究所の村山 洋史先生にインタビューを行いました。



■有識者紹介

【プロフィール】村山 洋史
2002年東京大学医学部健康科学・看護学科卒業。2009年東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(博士(保健学))。
東京大学高齢社会総合研究機構、ミシガン大学公衆衛生大学院を経て、2020年東京都健康長寿医療センター研究所・専門副部長。2021年より現職。
専門は、公衆衛生学、老年学。日本公衆衛生学会奨励賞、公益財団法人長寿科学振興財団長寿科学賞、日本疫学会奨励賞など受賞歴多数。

■ 研究テーマは「健康」と「人とのつながり」

​​── まずはじめに、村山先生のご経歴と研究分野を教えていただけますか?

村山:大学は東京大学の医学部健康科学・看護学科というところに入り、そこで大学院の博士まで進みました。大学と大学院では看護の分野で研究をしていました。
看護と言っても色々ありますが、地域看護という、地域に住んでいる人たちをどうサポートしケアしていくか、という学問をやっていました。その後高齢者研究をメインにするようになり、大学勤務や留学を経て、現在は東京都健康長寿医療センター研究所で研究活動を行っています。

村山:一貫して研究しているのは、人や社会とのつながりが健康にどう影響を与えるのかということです。

例えば、特に最近孤立や孤独といった問題が取り上げられてきていますが、元気な人たちのつながりと、そうではない人たちのつながりに、それぞれどのような特徴があるかであったり、個人の単位だけではなく職場や地域全体としてのつながりの強さがどのような影響を及ぼすのか、また、つながりが強い地方に住んだり、つながりが少ない都会に住んだりすることで健康にどのような影響があるのかなど、様々な角度から「つながり」と「健康」に関しての研究を行っています。


■ 地域看護と健康から「人とのつながり」に行き着いた

── どのような経緯で地域看護の分野から高齢者の研究をメインにされるようになったのでしょうか?

村山:「地域づくり」と我々はよく言うのですが、住みやすい、または、住んでいて楽しくなるような地域をどう作っていくのかというのが1つのキーワードになっています。
そのような地域を作ることで一体「健康」にどのような影響があるのか、というところに興味があったのですが、コロナ禍以降、「人とのつながり」が薄れ、孤独に感じる人たちが増えてくるという状況になり、「人とのつながり」が本当はどうあるべきなのかを考え始めたんですよ。

村山:最初は特に高齢者にフォーカスしていたわけではなかったのですが、特徴を調べたら高齢期は「人とのつながり」がどんどん少なくなっていく傾向があるとわかりました。
例えば、加齢とともに筋力が落ちてくると、出かけるのが億劫になり「人とのつながり」が減っていきます。また、周りの方が亡くなったり、病気になったりすることでも徐々に「人とのつながり」が減り、家族の場合もお子さんが独立して家を出ればご夫婦のみ、あるいはお一人暮らしになってしまい、家庭でのつながりが減ってしまいます

「人とのつながり」が顕著に変化しやすい高齢期や、高齢者の研究というのは、社会の課題を解決していくという観点から見ても、研究をする上でやりがいがあると感じています。


■東京都健康長寿医療センターでの研究

── 現在、勤務されている東京都健康長寿医療センターでは具体的にどのような研究プロジェクトをされているのでしょうか?

村山:主に比較的元気な高齢者の「社会参加」の研究をメインに行っています。運動の専門家や栄養学の専門家など、色々な分野の専門家がみんなで力を合わせて研究を推進していて、各分野をどう組み合わせるとより良い結果になるのか等、介護予防、あるいは最近よく言われる「フレイル」を予防するためにどうすればよいのかを研究しています。

村山:他にも例えば、ひと昔前は高齢期も働くという方はあまりおらず、リタイアしたあと悠々自適に暮らすという人が多かったですが、若い人たちがどんどん減ってきて、高齢者が頑張らなければいけないという時代になりました。現在は65歳まで定年が延長された企業が多いです。そんな中で「働く」ということが高齢者にとって負担になるのか、それともいきがいにつながるのか、社会全体にベネフィットがあるのか、ということを研究しています。


■ いかに社会参加の「質」を高められるか

── そういった仕事も含めた社会参加と健康の関連性に関しては、今までどのような研究がされてきているのですか?

村山:社会参加している方が総じて健康に良い効果があると、日本だけではなく、アジアや欧米でも同じような結果が認められています。最近の研究では、社会参加の質が注目されています。

例えば仕事でも、やりたくてやっている仕事、やりたくないけどやらされている仕事、など色々なパターンがあると思います。やはり「やらされている」ではなくて、「やりたい」と思ってやることがより大事ということが、当たり前なのですが研究でも明らかになってきています。

社会参加の質が高齢者の健康に与える影響を調べた研究では、ボランティアなどの社会活動に「参加しない人」「参加したくないが参加している人」と比較して、「すすんで参加している人」ほど生活動作の機能が低下してしまう割合が低いということが分かっています。

楽しさ・やりがいのある活動に参加することで健康リスクが大きく低下


村山
:楽しさ・やりがいが健康に好影響を与えるのは、社会参加の活動だけではなく人との付き合いも一緒です。

「関係満足度」というのですが、嫌々「仕事上の関係で付き合う」のと、「この人とは楽しいから付き合う」というのとでは、「楽しいから」の方が良さそうな気がしますよね。これも最近の研究で明らかになってきました。
これからは社会参加の「量」を増やすだけじゃなくて、いかにその「質」を高めていくか、というところがポイントになってくると思います。

── 社会参加により得られるどのような要素が健康に良い影響をもたらしているのでしょうか?

村山:例えば、対面であれ、SNSであれ、つながりの中でいろんな人からサポートがもらえたり、「すごいですね」という風に自分のことを褒めてもらえたり、認めてもらえる。 いわゆる承認欲求的なものが満たされることが一つ挙げられます。

また、なにかあった時に心配してもらえる、助けてもらえるのではないかという期待ですね。そういったものが高まると、その人が安心して生活できて、精神的な健康に繋がっていくパターンもあります。
それ以外にも、社会参加していると、同じような境遇の人に出会ったり、何かを頑張っている人たちに出会ったりする機会が増えます。例えば、周囲に運動を頑張ろうとする人たちが多ければ、そういった人たちに感化され「自分も頑張ろう」という気持ちになることで、より健康的な行動が促される、などとも言われていています。


■社会参加の影響とは?

── 社会参加は、精神的な面でも身体的な面でも両方に良い影響を与えているというイメージでしょうか?

村山:例えば公民館で催し物があるとか、公園で清掃活動するにしても、家から出かけるので、それだけでも体を動かしますよね。
さらに、そこで人と話してあれこれ感じたり考えたりすれば、脳への刺激にもなります。家でだらだらするよりも、出かけて人と接したり、いろんな物事に触れた方が、脳にも身体にもいい影響があると言われています。
 
高齢期になっていくと、どんどん刺激に対して鈍感になってきます。また、体がしんどくなってきて外出が億劫になってくると、さらに刺激を得る機会がなくなっていく傾向があります。そういう時にできるだけ意識して外に出るようにしたり、誰かとコミュニケーションをとり、なにか考えるとか、新しいことを知るというのはすごく大切だと思います。


研究者が語る、「あのね」に感じる可能性|後編 へ続きます。


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