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青島もうじき「サロゲート」

◆作品紹介

そこに函がある。函とは文字を納める升目であり、宿主を失った貝殻であり、織物をなす糸の空隙であり、空の舟であり、いまだ言葉を発せざる口であり、そして常に贈り物の諱である。AIによる創作と人間による創作が溶け合った世界で、とある小説家を対象にした「フィールドワーク」が開始される。物語は不可思議な交易の習俗を秘めた仮想空間上の16の群島へと広がり、次第に「文字によって何かを語ること」へと波及する。そこでは「物語を語るための文字」と「文字によって語られる物語」が絶えず流転し、無限の物語がたった一つの文字へと宿り直す——それはありうる未来のようにも、創作に臨む者たちが日々経験するささやかな天啓のようにも見える。いずれにせよわたしたちは、文字であれ貝殻であれ、何かに託すこと無しには物語を語り得ない。代理サロゲート、それはまさしく、連綿と続く物語の本質へと至る言葉である。(編・青山新)

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