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北野勇作「亀の俳諧」
◆作品紹介
旅先で、めちゃくちゃデカい亀が滑走路に侵入し、そのせいで旅客機が欠航してしまう、という、たったそれだけの話である。もちろんそれは異常事態ではある。しかしながら、そうした異常事態をあたかも「それだけの話」であるかのように語り、「それだけの話」にしてしまうのは、これまで亀にまつわる多くのSFを長年書き続けてきた、北野勇作という大いなるSF作家の感性と技術のたまものだと言えるだろう。私たちは亀に出会うために旅をするのではないが、私たちは旅をするたび亀に出会い、予定を狂わされる。そしてそのことを受け入れ、楽しもうとする。私たちはそうしたできごとから、人は亀の生き方を学ぶべきだとか、亀の時間を生きることで豊かさを得るのだとか、教訓めいたものを得ようとするが、もちろんそんなことは亀のほうでは知ったことではない。亀はただ、そこにいるだけだ。(編・樋口恭介)
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4,899字
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