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富永夏海「何もない国 Blissful Era Edition」

◆作品紹介

anon pressより短編集『湖畔のエコー(仮)』が近日発売予定の幻想文学作家・富永夏海の新作短編。どこかの時空のどこかの場所で、一つの国が生まれる。そこには都市がある。天使がいる。音のない場所がある。卵がいて、パンがいて、牛乳がいる。嫌われ者の腸詰めがいる。空っぽのテーブルがある。巨人族がいて、単眼族がいる。暴動が起きた。けれどもそこに音はない。何も聞こえない。四日目に人間が生まれる。人間は天使のなりそこないだった。ゲームは実行されている。死神の札が出る。そうやって話は終わる。最後に何もない国が生まれる。それは確かにどこにもなかった。あなたが触れた幻想の国は、たしかにあなたが触れたのだけれど、やっぱりそこには何もなかった。(編・樋口恭介)

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