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平大典「【対東京《バーサス・トーキョー》】Versus Tokyo」(5)

  Ⅴ

 標高七一〇メートル。東京五角議事堂ギジドー・ペンタゴンの中央塔の内部。
 壁に螺旋状の階段が設置されているだけで、地上までは伽藍洞になっている。こんな深夜では人の影はない。申し訳程度の電燈。落ちれば死が待っている。
 巨大な穴だった。
「よしよし。これからナハト名物の垂直落下式根性試し遊戯スーパーグレート・フライド・チキン・レースだ。どっちかが死ぬか、両方死ぬか、誰も死なないかもだ。愉しめよ」
 天井に付帯する作業用通路に立つ野獣道ケモノ・スタイルは俺の首根っこを掴んだままだ。武器の金属キルバットは持たせてくれているが、両脚はブラブラの状態だ。
 隣では、拾得ジットク蛸頭クトゥルフによって吊るされていた。
 履いていた右足のスニーカーが脱げ落ちると、音もなく闇の中に吸い込まれていった。
 蛸頭クトゥルフが微笑する。「私たちと一緒にこっからジャンプ。地面と激突しちゃう前に、階段の手すりを掴めばいい」
「しっかり邪魔はするけどなっ」
千載一遇ワンチャン、あんたたちも私たちをノメせるかもね」落下中に階段の手すりを掴むなんて芸当ワザ異端者アノマリーでもない常人には無理だ。
 これは実質的に処刑バッタン、たしかにタマ遊びだ。

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