![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/112614332/rectangle_large_type_2_ceab457ac1905db3e28db732402b7770.jpeg?width=1200)
平大典「【対東京《バーサス・トーキョー》】Versus Tokyo」(5)
Ⅴ
標高七一〇メートル。東京五角議事堂の中央塔の内部。
壁に螺旋状の階段が設置されているだけで、地上までは伽藍洞になっている。こんな深夜では人の影はない。申し訳程度の電燈。落ちれば死が待っている。
巨大な穴だった。
「よしよし。これから宵名物の垂直落下式根性試し遊戯だ。どっちかが死ぬか、両方死ぬか、誰も死なないかもだ。愉しめよ」
天井に付帯する作業用通路に立つ野獣道は俺の首根っこを掴んだままだ。武器の金属バットは持たせてくれているが、両脚はブラブラの状態だ。
隣では、拾得も蛸頭によって吊るされていた。
履いていた右足のスニーカーが脱げ落ちると、音もなく闇の中に吸い込まれていった。
蛸頭が微笑する。「私たちと一緒にこっからジャンプ。地面と激突しちゃう前に、階段の手すりを掴めばいい」
「しっかり邪魔はするけどなっ」
「千載一遇、あんたたちも私たちを殺せるかもね」落下中に階段の手すりを掴むなんて芸当、異端者でもない常人には無理だ。
これは実質的に処刑、たしかに命遊びだ。
ここから先は
10,794字
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/79142273/profile_a6d631bf911b4ed126da42b48ad59c7c.png?fit=bounds&format=jpeg&quality=85&width=330)
〈anon press〉ではビジネスとフィクションを接続することを目指し、SF作家・文筆家・エンジニア・研究者・デザイナー・アーティストといった多様な方々のテキストを配信していきます。マガジンを購読いただくと過去の記事を含むすべてのテキストをお読みいただけます。
anon future magazine
¥500 / 月
未来を複数化するメディア〈anon press〉のマガジン。SFの周縁を拡張するような小説、未来に関するリサーチ、論考、座談会等のテキスト…
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?