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【ヴォイサリオン感想】クリスマスには全てをこめたスープを
『VOICARION17-ヴォイサリオン- スプーンの盾』を観ました。
声優・俳優陣と生演奏の朗読劇。
私にとっては人生初の朗読劇でした。
その舞台があまりにも凄かった。
想像力が掻き立てられて頭痛になったほど笑
自分にとっては衝撃的だったので、感想として残しておきたいと思います。
内容・演出ともにネタバレ含みます。
再演ですがご了承ください。
①朗読劇の面白さは余白
私が今まで朗読劇を見てこなかったのは、馴染みがなく苦手意識があったからです。
朗読劇って動きはあんまりないんじゃないか、聴くだけで想像するのが苦手な私には(完全に視覚派)つまらなくなってしまうんじゃないか、と思っていました。
…結果から言うとそんなこと全くなかったんです。(ほんとに自分をぶん殴りたい)
なぜかというと
朗読劇には余白がたくさんあるから。
余白=想像力で補える場所が演劇よりも遥かに多いということ。
例えば、カレーム役の梶裕貴さん。
衣装、話し方、表情で外枠が決まってきたら、あとは梶さんの表現でカレームはこんな顔してそう!とかこんなふうに動くのかも!とか身長はこのくらいで、年齢はこのくらいかも?とか。
どんどんイメージが広がるんです。
アニメや映画だったら決まった外見があるけれど朗読劇はそうじゃない。
公式サイトの案内にも外見の絵や写真は出ていない。
だから、自分の中に好きな登場人物の姿を創り出せるんです。
それは役者さんたちの表現力あってこそ
衣装や音楽、照明の演出があってこそ
自分の中にヴォイサリオンの世界がボワァッと広がる感じがしてガツーンと雷に打たれたように、
うわ!!朗読劇の良さってこれじゃないか!!!
と衝撃を受けました。
たぶん、同じ回を観ていた全員にきいても、同じ顔は想像しないはず。みんな違う4人を想像すると思います。それってめちゃくちゃ面白い…!!私たちに委ねられている部分が多いのが魅力だと思いました。
②お芝居の化学反応が堪能できる
ヴォイサリオンに限るお話にはなってしまいますが、今回の公演は毎回出演者が違うのです。
しかも、同じ出演者でも演じる役が違うこともある。
私が見た回は高木渉さんがナポレオン役でしたが、タレーラン役の日もある。
天才シェフカレーム役を女性である沢城みゆきさんや緒方恵美さんが演じる日もある。
出演されてたみなさんは、組み合わせによって引き出される役が全然違う!とおっしゃってました。
私は高木渉さんのナポレオン役を観て、ナポレオンの印象が変わるくらい魅力的に感じました。どうしようもなく憎めない男なんですよ(笑)
梶さんのカレームは優しくてまっすぐで、まさに食に愛され純粋に人を食で救ってくれるザ・主人公!という感じでほんと…好き。
日高のり子さんのマリーは優しいんだけど芯がしっかりしていて時には叱ってくれたり男性陣を引っ張ってってくれたり、紅一点でありながらとても頼れる存在。
平田さんのタレーランは、本心がわからないように演じられてて、途中から〇〇のタレーランと言われ、そのためだったのかー!!と思わされるお芝居で。最終的にタレーランも憎めない存在になってしまいます。
どの役も全員が主役なんじゃないかってくらい魅力的でした。
他の回×出演者によっても得られる印象は変わってゆくだろうし、イメージされるキャラクターの造形さえ変わりそうなところも面白い…!
③生演奏の贅沢さ
なんと、昨今の舞台ではなかなか減ってしまった生演奏の音楽隊がいました。
(もう本当生演奏大好き…オーケストラピット大好き…な私にとっては贅沢すぎました)
音楽があることによって、情景や心情を補完してくれるのでここはシリアスなシーン、ポップなシーン、怒りややるせなさのあるシーン…と観客の気持ちをひとつにしてくれます。
タレーラン役の平田さんが挨拶で、音楽がさらにお芝居を引き出してくれる、と言ってました。そんな効果もあるんですね…!
演じる側にとってもどんどんエンジンかかってきているのが観てる側にも伝わってくるので手に汗握ります。
ボウルや泡立て機でパーカッションしてるのも可愛かったですし、音楽隊がキッチンの中に入っているのもまたいいなあって!料理をするように奏でている感じがしました。
料理のシーンは釜から湯気が出ていたり、晩餐会のシーンでは燭台に灯りがついていたり、細かいところも演出が凝っていて最高です。目が足りない!
④クリスマスにぴったりのあたたかい物語
スプーンの盾は、カレーム、ナポレオン、タレーランという実在の人物が登場する物語。
一滴の血も流すことなくスプーンを盾にしてフランスを救った男、アントナン・カレーム。
どうやって?なぜスプーン?美味しい戦争ってなに??
と思って観ていた私は、物語が進むうちにどんどん引き込まれていきました。
今の世界でも戦争という言葉が現実で起きている現状。それが当たり前の時代に、スプーンを盾にして戦うカレームの姿が本当にかっこよくて頼もしくて、
そして不器用なナポレオン、本心がなかなか出てこないタレーラン、いつも見守ってくれて導いてくれるマリーの姿をみていてボロボロと涙が出てくる…!
『ペンは剣よりも強し、というでしょ?僕はスプーンが一番強いと思うんです。争いたくなるのはお腹が空いているからでしょう?』
というカレームのセリフ。
全世界聞いてるか!?
世界中の人の空腹が満たされる世界になればいいのにな、そうなったらどうなるんだろう?と本当に思いました。
お腹を満たしてあげるという素朴な思いで優しいカレーム、彼が今もいてくれたら…なんて思ったりして。
目の前の人を笑顔にしたいという純粋な思いが世界を変えるというストーリーはとても心が温まります。
まさに、クリスマスにぴったりな物語。
私はこのカレームの言葉を忘れないようにしようと心に決めました。
そんな私は食べることが大好きな人間です。
お腹が減ると不機嫌になるし、正常な判断ができないと身をもって学んでいます。笑
そしてこの物語を観ると、とってもとっても、あたたかい食事が食べたくなります。
欲を言えばフレンチ。
だけど、エクレアでもいいし、バゲットもいいな
ピアスモンテも食べてみたい…!
…なんだけど、くたくたに煮込んだコンソメポタージュがなによりも食べたくなる。
というか、食べたような気になれます。
カレームが作ったあたたかいスープ。
それは、観た人それぞれが想像する特別な味です。
『ヴォイサリオン スプーンの盾』は観た人にしか想像できない、あたたかいスープに心も体も満たされることができる朗読劇でした。
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