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臨床検査技師としての私歴

自分の仕事はとても好きなんだけど、すごく半端な仕事だなぁ、とも思っている。

医者のような知識も権限もなく、看護師のように親しみやすくもなく、リハビリ系の療法士のように患者さんと密なやり取りをするでもなく、診療放射線技師のように独占して扱える業務もない。

その名を、臨床検査技師という。

◇◇◇

とは言えやれる仕事は多岐に渡るし、血液や尿を扱う検体検査にも、心電図や呼吸機能などの生理検査にも、全然半端じゃないスペシャリスト達はたくさんいる。
なので本当は仕事が半端なんじゃなくて、私自身が「半端である」という思いから抜けられないということなんだろう。

◇◇◇

私の半端歴は最初の就職から始まる。

臨床検査技師の資格を無事に取得し、初めてした仕事は「病院の検査室受付」である。
採血された血液など、検体に触りはするが検査はしないし、資格も要らない。
半端である。

さすがに資格を活かさないのももったいない気がしてきて2年程で転職。

次の仕事は「健康診断のスタッフ」だ。
全国各地の企業や学校に赴き、心電図だったら心電図、採血だったら採血。その日担当する検査をひたすらする。

しかし始めてみて分かったが、基本的に心電図も採血も経験者がやる。
仕事は朝が早い代わりに帰りも早く土日休みなので、子育て中のベテラン技師や看護師が多かった。

そんな中、経験が「受付」のみの私に任されるのは検尿や聴力検査ばかり。技師手当がつかない体重計測や握力測定の担当になることもあった。

それでもこの仕事は4年続けた。
毎日違う現場に行くことや、日雇いのような不安定さが逆に楽しかったのだ。スタッフ同士も仲が良くて、出張も旅行気分だった。

この頃は「正社員」になることが恐ろしかった。
半端であることを好んでいた。
ある意味望み通りではあったが、少し空しくもあった。

そしてこの仕事をしている間に、私は今専門としている超音波検査に出会った。

◇◇◇

超音波検査ができる人というのは、健診において別格扱いとなる。

日当も他の仕事の1.5倍以上つく。
他の検査と違って如実に技師の腕が検査結果を左右するので、本当に勉強し経験を積まないとできない。

もうそろそろ、技師らしい仕事がしたかった。

この時すでに28歳。超音波検査を志すには少々遅いくらいの年齢だ。
しかし脱・半端を目指し、自分なりに就活した結果、私は運良く未経験OKで超音波検査をやらせてもらえる某大学病院に滑り込むことができた。
この事は本当に、運が良かった、としか言えない。

◇◇◇

そして今。

私の専門は一応「神経超音波検査」である。

というか12年間これしかやってないので、これしかできない。

正直、超音波検査としてはマイナーな部位なのでこれをやっている技師は少なく、こなしてる件数としては私は日本一なのではないかと思う。いや、これは本当に。

ここまで来たら、半端感から解放されそうなものなのだけれど、実はそうでもない。

検査をやってる数は多くても、研究発表の数は少ない。今以上に行きたければ論文執筆もすべきなのだが、いまいち興味が湧かない。
この狭く深い世界で、半端な深さで行き止まっているような気がしている。

それに実はマイナー過ぎて、健診の頃に憧れた日当が高く取れるような検査はほとんどできない。(健診で求められるのは腹部と乳腺。希に私の専門の頚動脈もある)
分かりやすく実力を示せる「超音波検査士」の資格も取れない。

やっぱりなんか、半端な気がしてるのである。

◇◇◇

ここまで来ると、半端であることは最早私のアイデンティティなのかもしれない。
この思いを抱えて、次へ次へと進んでいく。

進んでいく、進んでいけるということは、半端だろうと何だろうと、やっぱりこの仕事は好きなのだ。

半端なまま、働く自分を愛そう。
ここにも時々それを書こう。


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