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11月5日祖父母との交流·いい孫の日

 何を書いているの?と私が聞くと、中学3年生の息子と中学1年生の娘が勢いよく振り向いた。少し恥ずかしがるように息子が笑って答える。

「じいちゃんとばあちゃんに手紙を書いてる 」

 娘も答える。その顔は少し寂しそう。

「敬老の日は9月だったんだけどさ、テストが近くて何も出来なかったから。今はなかなか会いにも行けないしね」


 世の中に新型ウイルスが蔓延し始めて間もなく1年になろうとしている。そのせいで、車で行ける距離にいるのに、彼女たちの祖父母である私や夫の両親には会いに行けていない。こんなに会っていないのは初めてかもしれない。

「うん、おじいちゃんおばあちゃんたちも喜ぶよ」

 さすが中学1年生の女子と言うべきか、可愛らしいレターセットがずらりと並んでいる。

「お母さんも書こうっと」

「誰?ひいおばあちゃん?」

「うん、そう。やっぱり全然会えていないしね」

 私には母方の祖母しかいないが、新幹線の距離であり、当たり前のように今は会いには行けていない。彼女は施設で生活をしているが、そこの感染症対策によって今のところ面会は禁止になってもいる。

 祖母は元気だろうか。ちょうど1年前くらいに会いに行ったときには、笑顔を見せてくれていた。

 祖母は昔からよく笑う人だった。大笑いをすると、すぐに声がかすれて出なくなる。それでも声なく笑うので、苦しいのか楽しいのか分からない笑い方になって、でも結局面白くて笑っているのだと分かって私も笑った。

 私は夏休みや冬休みなどによく遊びに行っていた。新幹線に乗る非日常感、祖父母に会うことへの喜び、彼らからの甘やかしに甘え、それを注意する父母の怖さ、帰りの新幹線のホームで祖父母に見送られる切なさと、家に帰ってきたときの妙な安心感。すべて一体となって、私の特別だった。

 特別を、父と母は何度も与えてくれたのだ。

 よく考えたら、これは両親も大変だったのではないか。

 私は3兄弟の末っ子なのだが、それぞれ2歳差なので、小さいうちはそれはそれは大変だったと聞いている。そのチビたち3人を連れて新幹線に乗り、遠方の祖父母の元へ遊びに行くのだ。
 小学生になるとさすがに掛かる旅費も大きくなるので車で向かうことになったが、片道何時間もかけて父と母で交代しながら運転していた。心身とも疲れていたことだろう。ガソリン代ももちろん掛かるし、食事代もある。手土産だって買う。ついでにいとこが集まればケーキやお菓子と持ち出しは多くなっていたはずで、総じてお金はたくさんかかっていたのだ。

 そうまでして、私たち兄弟に特別を与えてくれていたと思うと感謝しかない。

 幸い私と夫の両親は比較的近くにいるので、1度の帰省で大変になるものはない。遠方と言う特別感とは少し違うけれど、その分たくさん会えることを、私の子供たちには特別に思ってほしい。そしてその特別を出来るだけ与えてあげたい。

 今はなかなか会いに行けないけれど、子は親を、孫は祖父母を大切に思っている。

 私はレターセットをもう一枚もらって両親に宛てて書き始めた。早く会える日を願って。

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【今日の記念日】
11月5日 祖父母との交流·いい孫の日

郵便業務を中心にさまざまな事業を手がける日本郵便株式会社が制定。孫が祖父母に、子が祖父母になった両親に対し、日々の感謝とともに心身の健康を願いその気持ちを伝えてもらうのが目的。同社では孫世代が自身の写真とメッセージを往復はがきの形で届け、それを受け取った祖父母とのはがきによるコミュニケーションが出来る「マゴ写レター」というサービスを行っている。日付は11と05で「いい(11)まご(05)」と読む語呂合わせから。


記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。

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