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4月5日 よごそうデー

 今日は朝から飽きもせずにザーザーざぁざぁと雨が降り続いていた。これはもう帰るころには大きな水たまりがあちらこちらにできていることだろうと予想出来る。そんな帰り道、3歳と5歳のミニモンスターたちが大喜びすること間違いないのであった。

「絶対びっちゃんびっちゃんて歩くんだよ、あの子たち」

 私が大きなため息と共にそう言うと、祐子も我が子を思い浮かべたのか、小さく笑う。そして、私は昨夜を思い出してやっぱりげんなりするのである。

 保育園に通っている3歳の長女と5歳の長男。この2人を連れて帰宅するのが大体18時をすぎる頃である。そこから汚れ物袋の中身を全て出し、泥汚れとそうでないもの、洗濯機では洗わないもの(帽子や食事エプロンなど)などを仕分けていって洗濯機を回しつつ、お風呂場では洋服の泥を払い予洗いをするのだ。

 はっきり言って、この予洗いがもう面倒くさい。このおかげで後の予定がずれ込んでは寝る時間も遅くなるのだ。

「あーぁ。今日の雨とか洗濯最悪だよ。泥汚れなんてなかなか落ちないじゃん。予洗いが大体本気手洗いになるんだよ」

「うーん、最近の洗剤は結構高性能だから割と泥汚れも落ちるんじゃないかな。うちは予洗いしないけど割と大丈夫だよ」

 新品同様の真っ白を期待するのは酷だけれど、どうせ明日も汚すのだと考えれば目立つ泥汚れがとれていれば十分だと彼女は笑った。

「洗濯機の為にも泥とか砂は取っておいた方がいいと思うけど、予洗いまではしなくても良いと思うよ」

 そう聞いて、私はお弁当のふたを閉めた。


 私の中では泥汚れはいつの時代も手荒い予洗いが必須であるイメージなのだった。でもやらなくて済むならば随分と私の負担は軽くなる。

「じゃあ、今日はちょっと好きなようにやらせてみようかな」

 私が小さな決意をしてみせると、祐子は笑った。

「時代は進化しているからね。洗剤を信じて楽したらいいのよ」

 私は妙に気が楽になり、単純だけれど午後の仕事も少し頑張れたので自分でも笑えた。


「あっ」

 しまった!!と、声に出さずとも表情に出していたのは長男だった。わざとよろよろ歩いて見せ、よろけた先に大きな水たまりがあったのだ。声を発した長男に気づいた長女も彼のまねをしてその水たまりに続けて足を踏み込んだ。やっぱり同じように長女も「あっ」と言ったのには思わず笑ってしまった。2人揃って上目遣いに私の様子をうかがっている。

 私は軽く息を吐き、笑って言った。

「いいよ!洗濯は任せなさい!今日はもう『よごそうデー』です!!」

「え!水たまり入ってもいいの」

 私が頷くとやったぁと飛び跳ねて喜び、長男は早速水たまりに吸い込まれていった。追いかけるように長女も飛び込み、きれいな丸い水たまりの上でやっぱりびっちゃんびっちゃんと足踏みをするのだった。

 長靴にレインコートだし、私には近代科学が生んだ(?)洗濯洗剤がついている。

 たまには良いかと2人を見て笑えた。

 ちょっとイケないことを思い切りする経験だってたまにはあっても良いでしょう。

 私もちょっと水たまりにアタックしてみた。

 なかなかどうして、楽しいではないか。

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【今日の記念日】

4月5日 よごそうデー

衣料用洗たく洗剤「アタック」が2017年で誕生から30周年を迎えたことを記念して花王株式会社が制定。子どもから大人まで、よごれを気にせず夢中になって思いっきり楽しんだり、挑戦したりすることで成長してほしいという願いが込められている。日付は4と5で「よ(4)ご(5)そう」と読む語呂合わせから。


記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。



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