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2月14日ロディの日

 白馬に乗った王子様と結婚する。

 それは私の小さな頃の夢で、未だに頭の隅に残った夢でもある。

 なぜ白馬に乗った王子様なのか、それは私が小さなころに遊んでいたおもちゃが要因である。『ロディ』と言う可愛らしいコロン、とした馬の乗り物がそれである。イタリアで作られたバランスボール素材の人形らしく、馬の背中に乗ってポンポン弾む遊び方は確かにバランスボールと考えると合点が行く。私はそのロディが大好きだったらしく、家にいるときにはいつでも乗って跳ねていたという。

 そこにプリンセス好きが相俟って白馬の王子様が理想になったのかも知れない。もう良く覚えていないけれど。


「茜ちゃん、どうぞ」

 目の前に手をさしのべてくれたのは公親さんだった。私は手を引かれるまま彼のご実家におじゃまする。

「お、おじゃまします」

 緊張のせいか少し声が震えているかもしれない。でも、だって仕方ない。初めての結婚報告なのだから。

 1ヶ月前の私の誕生日に彼はプロポーズしてくれた。同じ会社の1つ先輩である近藤公親さん。つきあって2年であり、結婚と言う将来を全く考えていなかったわけではないが、予兆もなにもなかったので私は驚いた。そしてそのとき一瞬、白馬の王子様ではないなと思ってしまったのも事実である。

 そんなこと、言えないけれど。

「茜ちゃん、いらっしゃい。久しぶりねぇ、さあどうぞ」

「お母さん、お久しぶりです。あ、ありがとうございます」

 そう言われ、靴を脱いでお邪魔した。

 あれ?手土産っていつ渡す?今?それとも報告のとき?急に頭の中がぐるぐると混乱し始めて私はその勢いで手みやげを差し出した。

「ふ、ふつつかものですがどうぞ」

 ふつつかものは私である。

「え、あっ。ふふふ、ありがとう。いただくわ」

 お母さんは驚きつつも笑いながらそれを受け取ってくれた。

「茜ちゃん、緊張しすぎ」

 彼も笑い、私の肩をポンポンと叩いた。恥ずかしさに顔が熱くなる。

 そう、私もお姫様ではないのだった。

「昼ご飯、準備出来たら呼ぶから少し公親の昔のお部屋にでも案内してあげたどうだ」

 お父さんがそう言い、私は挨拶しつつ、お言葉に甘えて公親さんの部屋にお邪魔することにした。

「あ、少しお部屋整理中だから色々と昔の物がでているかもしれないけどごめんなさいね」

 背中でお母さんの声を聞き、返事をしつつ部屋に入るとそこにはロディがいたのだ。

「これ」

「ああ、懐かしい。俺さ、これ大好きで小さい頃ずっと乗ってたよ」

 そう言いながら、ロディを手に取りその頭を撫でた。私はもう溜まらなくなって、彼を抱きしめる。

「え、ちょっと急にどうしたの」

 いたじゃないか、私の王子様。白馬じゃなくてて薄くなった青色のロディだけれど、それでいいのだ。

「すごいね、私も全く一緒。ロディが大好きだったの」

 そう言って彼からそっと離れ、その青いロディも抱きしめる。

 これから末永くよろしくお願いします、私の青馬の王子様。

 頭の中では私のピンクのロディと彼のこのロディが新居の一角にいる想像が浮かび、私は急に幸せを感じ始める。

 思わぬところで夢はかなうのだった。

 理想は持つものである。

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【今日の記念日】
2月14日 ロディの日

シンプルで可愛いらしい馬をモチーフにしたデザインのキャラクター「ロディ」の魅力をもっと多くの人に知ってもらうことを目的に、「ロディ」の商品ライセンスを管理を行っている株式会社JAMMY(ジャミー)が制定。乗れる玩具として有名な「ロディ」だが、インテリアとしても人気が高く、また、数多くのキャラクターグッズも作られている。日付は「ロディ」がイタリアのオソッポ村で生まれたのが1984年の2月14日であることから。

記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。

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